【EXIT 兼近大樹×俳優・山田裕貴】オレたち、こじれてますか?
お笑い芸人・EXITの兼近大樹さんが毎号「オレの普通の日常」を綴るOggiの人気連載「オレって、こじれてますか?」。Oggi創刊33周年記念号Specialということで、俳優・山田裕貴さんとの対談をお届けします!

対談のお相手

山田裕貴
やまだ・ゆうき/1990年生まれ、愛知県出身。近年の出演映画は『BLUE GIANT』、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『燃えよ剣』、『夜、鳥たちが啼く』、『キングダム』シリーズほか。公開中の映画『木の上の軍隊』に続き、『ベートーヴェン捏造』(9/12公開)、『爆弾』(10/31公開)でも主演を務める。
こじれにこじれて「まっすぐ」すぎる男たち
兼近:初めて食事に行ったときのこと、覚えてる?
山田:もちろん。集合場所の焼肉店に入ったら、だれよりも早くかねちーが着いていて、両膝そろえて小説を読んでた。チャラ男漫才でテンション高いイメージだったから、ギャップが面白くて。
兼近:確か6年前、テレビでEXITを見てくれた裕貴くんから、「好き」って言ってくれたんだよね。そんなふうに言われたことなかったから、「まっすぐな人」だなーって思った。当時は俳優さんとの交流がなかったから、〝俳優さん=スカしてる〟と思い込んでいて、そうじゃない人もいるんだって、新鮮だった。その後、裕貴くんの家に遊びに行ったりして…。
山田:いろんな話したね。

兼近:あのとき、ビックリしたのよ。覚えなきゃいけない台本が山積みになってて、こんなに追い詰められたら、壊れてしまうんじゃないか心配になっちゃった。
山田:あのころは壊れかけてたかも(笑)。何作品も同時に進行してたからね。かねちーだって、普通はやらないことーー小説を書くとか、ABEMAの番組で政治家と話すとかーーをたくさんやって、さらに家族を大事にしたい、恵まれない子供を援助したいなんて、壊れてないとおかしいと思うほど、たくさんのものを背負ってる。
兼近:そう、壊れこじれ。確かに5~6年前は、詰め込みすぎて壊れそうになってた。仕事が楽しいと思えなくなって…。
山田:テレビを見てて心配になったよ。かねちー、バラエティ番組で元気なさそうなとき、あったでしょう。
兼近:裕貴くんが「元気ないけど大丈夫?」って連絡くれて。でもそれ、面白いこと言えなくてテレビで使われてなかっただけ。それからは、いいコメントを残そうと気合いを入れるようになりました。
山田:だから、面白いコメントしてるとうれしくなって、また連絡して。最近また、面白いなと思ってるよ。
兼近:心配させないように、頑張らなくちゃ。そういう裕貴くんは、まっすぐすぎて、深く考え込みすぎちゃうでしょ。芸人さんたちとごはん食べてたときも、みんながふざけて他人のことを面白おかしく言うのを聞いてるうちに、裕貴くんが落ち込み始めて。みんな、ボケで楽しく言ってただけなのに。
山田:あれ、ボケだったんだ。自分が言われたらイヤだな、と思いながら真剣に聞いちゃったよ。オレは人のことを悪く言いたくないな、と思ったんだよね。
兼近:そこが裕貴くんのいいところ。恋愛の話もずいぶんしたね。
山田:したした! あのころはオレ、仕事でこじれてたからなー。こじれすぎてて、自分は結婚できないと思ってたくらいだから。しかも、かねちーのモテ方のレベルが想像以上だった(笑)。
兼近:あはは、確かに変なモテ方してた。
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山田:最近(恋愛)は、どうなの?
兼近:全然。なのに、相方が家庭を持ったり、裕貴くんを見ていたりすると、結婚いいな~って思うようになって。

山田:え、え、えー!
兼近:今、周りで独身なのは、初恋たろうさんくらいだよ。とはいっても、安らげる相手って、どう出会うんだろう。どんな人がいいんだろう…?
山田:えー、ムズいな! たぶん、常識だけで考えるような相手だと、かねちーの状況についていくのは大変だと思う。仕事に将来に、独自の思考… ものすごく深い理解がある人でないと。
兼近:オレはね、裕貴くんみたいに、ひとつひとつ考え込みすぎちゃう人が好きなの。自分もその要素を持ってるから。パートナーとは、なんでテンションが上がってるのか、なんで落ち込んでるのか、一緒に考えて一緒に楽しみたい。
山田:それ、すごいわかる。悩んでるのに、あっさり「なんとかなるっしょ」と言われたら、自分の中身を無視されてるような気になっちゃう。
兼近:いろんな考えをたどった末の「なんとかなるっしょ」ならいいんだけどね。その結論に至るまでの過程が大事。
山田:理解しようとするレベルが違うと、やっぱりつきあいは続かないんだよね。その意味ではオレ、今の状態はベスト。単なる返事の「わかった」じゃなくて、背景や気持ちを考えたうえで「わかった」と言ってくれるパートナーがいるから。今も考えすぎちゃうし、こじれてるけど、それでいいんだって思える。
兼近:それ、いいな。
山田:(パートナーは)オレのことを、ぶっ壊れた積み木をどうにか積み直して人間にして、それでも頑張って立ってる人に見えるんだって。
兼近:めっちゃわかる。
山田:それがいいんだって。
兼近:オレという積み木が崩れないようにくっつけてくれる接着剤のような人を、オレも求む! 世間のイメージや表面的なことに左右されないで。
山田:世の中のイメージと現実は違うかもしれない、というのが映画『ベートーヴェン捏造』なんだけどね。聖人と言われてきたベートーヴェンだけど、本当は違ったかもしれないというお話。現代に置き換えれば、同じようなことはたくさんある。
兼近:そういうもんだよね。一度間違って広まったら、それが真実として伝わってしまう。
山田:この映画は、そんな世の中へのアンチテーゼでもあるんです。
映画『ベートーヴェン捏造』

聖なる天才音楽家ベートーヴェン(古田新太)は、実は下品で小汚いおじさんだった!? そんな彼を天才音楽家として捏造し世に広めた秘書・シンドラー(山田裕貴)。さて、どう真実を塗り替えたのか? 音楽史上最大の噓はバレるのか? 登場するのはこじらせ男子だらけ。バカリズム脚本による軽快な会話劇を楽しもう! 9/12より公開。
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兼近:仕事でいえば、30代に入ってから「ありがたい」と思えるようになったのは、大きな変化かな。楽しいだけの仕事じゃないけど、でも楽しくない姿は見せられない。それでも、自分を必要としてくれる仕事があることは、ただただありがたい。そう思える自分のことも、好きになっていくし。ただ、20代で体を鍛えてみたかったという思いはあるけど(笑)。そういう時期もありましたって、ボケで言えるでしょ。
山田:何それ、キャラ多すぎでしょ。オレも、主演をいただけるありがたさ、運のよさ、本当にしみじみ感じるようになった。この気持ちで20代を過ごしていたら、あんなにひん曲がってなかっただろうな。
兼近:それはオレも思う! テレビに出るようになったのは早かったけど、ありがたいと思う前に、面白い先輩を見てめっちゃくやしがってたもん。
山田:オレなんて、同世代の俳優さんがドラマに出てたら、チャンネル変えてた。あっちは活躍してるのに、なんでオレは家でテレビ見てるんだって。それに、かつては今ほど配信番組もなくて、チャンスも限られていたから、だれかが主役をやったら、オレはいつもその二番手、三番手だった。悔しかったし、人と比べて、周りばかり気にして。あんな20代には、二度と戻りたくない。
兼近:それがあるから、今があるんだね。
裕貴くんは主役をたくさんやっているけど、主役を支える側もやってきたことが、強みになっていると思う。周囲がどうしてほしいかがわかるし、主役を支えて活かすこともできる。このまま突き進んで40代、無双状態になったところで、オレをドラマに呼んでください(笑)。
山田:そうなりたいね。子供のころ「かけっこで一番になりたい」と思ったのと同じように、「お芝居うまくなりたい」と今も思ってる。それはずっと変わらなくて。
兼近:まっすぐさも変わっていないよ。

山田:責任が重たくなるほど恐怖も増すし、賞賛があれば批判もある。そしてネガティブなことを耳にすれば、やっぱりダメージ食らうし。でもそこで、自分をアップデートし続けて、勝負をしている感覚かな。それも、かねちーみたいにこじれながらも頑張ってる人がいると、オレも頑張れる。あとは、家族との時間を大切にして、生活を楽しめたらそれでいいかな。
兼近:いいね。
山田:かねちーだって、ずっと止まらずにやってきたじゃない。だから、このままやりたいこと、頭の中にあることを全部叶えてほしい。なんなら、この国を変えてほしい。人類を救済してほしい。オレ、自分はナルトだと思ってたけど、ナルトはかねちーで、自分はサスケだったんだ(笑)。(注:アニメ『NARUTOーナルトー』のお話)
兼近:自分はシカマルだと思ってた。
山田:くやしい思いをしたり、こじれた経験って、いいことだったんだよね。それに、こじれてても、受け入れてくれる人は絶対いる。こじれてて結構! 一緒にこじれてこうぜ! って読者のみなさんにも言いたいです。
兼近:こじれた経験があるから、まっすぐ見せることもできるしね。俳優さんをするには、有利だよね。オレ自身は、壊れたら修復して、こじれたらまっすぐに直して、それを繰り返して強くなっていった、という感じがする。
山田:逆もいけるよ。うまくいかないとき、「今日はこじれてるんで、すいません」って言うこともできる。
兼近:確かに。それ、 オレも使わせてもらおう!
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[衣装・山田さん分]/シャツ¥85,800(サルト) タンクトップ¥16,500(ラッド ミュージシャン 原宿〈ラッド ミュージシャン〉) パンツ¥41,800(ブランデット東京〈キフ〉) 靴¥114,400(バウ インク〈アデュー〉) ネックレス¥46,200 (ブランイリス トーキョー〈ブランイリス〉)
サルト
ラッド ミュージシャン 原宿 TEL:03-3470-6760
ブランデット東京
2025年Oggi10月号「EXIT・兼近大樹 オレたち、こじれてますか?」より
撮影/高木亜麗 スタイリスト/森田晃嘉 ヘア&メイク/小林純子(山田さん分) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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