俳優・蒔田彩珠さんインタビュー
柔軟さをまとい、プライドを捨てる。期待を背負う22歳の「かっこいい」働き方

蒔田彩珠(まきた・あじゅ)
2002年生まれ、神奈川県出身。2012年、10歳のときに出演したドラマ『ゴーイング マイ ホーム』で是枝裕和監督から評価され、以降映画『海よりもまだ深く』『三度目の殺人』『万引き家族』、Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』といった是枝作品に出演。2020年映画『朝が来る』では多くの賞を受賞。そのほかの出演作にドラマ『妻、小学生になる。』『御上先生』、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』など多数。今年秋公開の映画『消滅世界』では主演を務める。
もっと、はっちゃけなきゃ、頑張らなきゃ
「今注目の俳優」として真っ先に名前が挙がる、蒔田彩珠さん。4歳で芸能の仕事を始め、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』で映画初主演。ほかの道を考えることはなく、まっすぐに18年。近年は、心の内に何かを抱えた高校生役の印象が強く残るが、ここにきて演じる役の幅がぐんと広がっている。

「小さいときから、ドラマや映画を観ることが大好き。物心ついたときからこの仕事をしてきたので、向いているかどうかさえ、考えたことがなかったけれど、それくらいこの世界が好き。だから全力を尽くすし、手を抜くことは一切ありません。もちろん、これからも。でも、ドラマでも映画でも、あとで完成したものを観るたびに、思うんです。あのときは精一杯だったけど、今ならもっと違うお芝居ができるのに。撮影から完成までに時間があく映画では、なおさらです。
だからこそ、悔しい気持ち、成長したい思いを、次のモチベーションにしてまた前に進む。そして、忙しいときこそしっかり休みます。バイクに乗ってひとりで海まで行ったり、猫と一緒に映画を観ながら編み物をしたり。バイクも編み物も、何も考えない自分だけの時間。それがいいんです」

少しずつステップアップし、今年は7月期ドラマ『DOCTOR PRICE』のヒロイン、そして秋以降は主演映画の公開が続く。
「これまでは主演の方に頼ることが多かったけれど、自分がヒロインや主演となるとそうもいきません。任された責任をしっかり感じ、人に〝頼られる〟存在になる。それが、私が目指すべきことなのだと思っています。
それに、これまでは悩みを抱えたシリアスな役が多かったけれど、最近は明るい役が増えて、また違う難しさがあります。自分ではすごく明るく演じているつもりが、客観的に観るとまだまだ足りなかったりもして。もっと〝はっちゃけ〟なきゃ、頑張らなきゃ、と感じているところです」

どんなに前の晩が遅くても、起きられます!
蒔田さんなりの「はっちゃけた」女の子役を楽しめるのが、現在放送中のドラマ『DOCTOR PRICE』。演じているのは、医師専門の転職エージェント会社を営む主人公・鳴木金成(岩田剛典)のバディ・夜長亜季。毒舌だけどとにかく仕事がデキる! 特に、計算・資料作成といった事務能力は秀逸で、それが鳴木の仕事の大きな助けになっていく。

「夜長は、お金が大好きな女の子。鳴木と一緒に働きながらも、彼がいい人なのか悪い人なのか疑問を持ち始めてきた序盤。ここからさらに、それぞれが抱えている過去が炙り出されてくるので、楽しみにしていてください。私自身でいえば… 毒舌でもないし事務仕事もできないので(笑)、夜長とは似てないかな。私の得意なこと… うーん、なんだろう。朝が強いこと! 猫が起こしに来てくれるので、どんなに前の晩が遅くても、起きられます!」

ほんの少し背伸びをしながら演じる夜長は、蒔田さんが本来持つチャーミングさと、ずっと憧れてきたかっこよさを兼ね備えた女性でもある。

「私がかっこいいと思う大人は、強さを持ちつつも、いつも笑顔を絶やさない人。子供のころから、お仕事をしていて憧れた先輩方を思い浮かべても、やっぱり〝笑顔〟なんですよね。そのうえで、自分の意思をしっかり持てる人でありたい。自分の考えに芯があって、説得できるだけの材料があって、そのうえで異なる意見の人とも話し合える。主張するときはして、折れるときは納得のうえで折れることもできる。という私も、かつては思ったことを口にできずに後悔することもありました。でも、責任が増すにつれて、このままではいけないと思って、頑張っているところです。
そのときに忘れたくないのは、柔軟さと、人の声を素直に聞くこと。自分の至らなさを人から指摘されて、プライドが傷つくこともあるけれど、余計なプライドは意味がありません。それを感じたのは、日曜劇場『御上先生』で共演した仲間たちでした。みんな自分の考えを持ち、振る舞いもしっかりしていて。学ぶことはどこにでもあるのだなと感じました」

ドラマでは、鳴木と夜長のプライドがどうぶつかるかにも注目。そして仕事となれば、ふたりともお金が大好きで、儲かるかどうかで仕事を選ぶ点では意気投合。では蒔田さんの「仕事選び」の基準は…?
「自分じゃない他人がこの仕事をやったら、悔しいと思うかどうか。悔しいと思ったら、迷わずやります!」

22歳にして、すでに「かっこいい」働き方を体現している蒔田さん。今後の活躍に期待が集まる理由が、ここにある。
蒔田彩珠出演ドラマ『DOCTOR PRICE』

鳴木金成(岩田剛典)は、医師を辞め、夜長亜季(蒔田彩珠)とともに、医師専門の転職エージェント会社「Dr.コネクション」を立ち上げる。医療業界の情報や巧みな話術を使って、医師を病院に売りさばき、大金を稼ぐ。「お金」目当てのふたりの仕事だが、その背景には過去のある事件が…。真相に迫る今後の展開にも注目! 日曜夜10:30~読売テレビ・日本テレビ系で放送中
***
ジャケット¥93,500・シャツ¥30,800・パンツ¥50,600(エムエイティティ〈ソウシオオツキ〉) デニムシャツ¥44,000(エドストローム オフィス 〈トゥ エ モン トレゾア〉) その他/スタイリスト私物
エムエイティティ
エドストローム オフィス TEL:03-6427-5901
2025年Oggi9月号「この人に今、これが聞きたい!」より
撮影/山根悠太郎(TRON) スタイリスト/小蔵昌子 ヘア&メイク/上野知香 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
Oggi.jp