世代・時代を超えて愛される国民的アーティスト

◆Guest Artist:いきものがかり
2006年『SAKURA』でデビュー。『ありがとう』など、世代・時代を超えて愛される数々のヒット曲を生み、国民的アーティストに。2021年に山下穂尊がグループを卒業し、現在は吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)のふたりで活動中。
◆Navigator:サッシャ
1976年、ドイツ・フランクフルト生まれ。日本語・ドイツ語・英語のトライリンガル。J-WAVE『STEP ONE』ナビゲーター。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にレギュラー出演するほか、モータースポーツをはじめとするスポーツ実況など多方面で活躍中。
いきものがかりの軌跡
1999年 水野良樹・山下穂尊の同級生ふたり組に吉岡聖恵が加わり、グループ結成
2006年 シングル『SAKURA』でメジャーデビュー
『YELL』(2009年)、『ありがとう』(2010年)など数々のヒット曲をリリース
2017年 〝放牧宣言〟を行い、一時活動休止。翌年の〝集牧宣言〟で活動を再開
2021年 山下穂尊がグループを卒業。現在のふたり体制に
2024年 自身初の武道館弾き語り公演を開催。グループ結成25周年を迎える
2025年 11枚目となるオリジナルアルバム『あそび』をリリース
背中を任せられる唯一無二の存在へ。いきものがかりインタビュー
出会ってから26年目。現実へとつながっていく現実逃避のための〝夢物語〟
サッシャさん(以下、サ):昨年11月で結成25周年ですか、すごいですね!
吉岡さん(以下、吉):初めて会ったときは… リーダー(水野)が高2で、私が高1だったっけ?
サ:吉岡さんのお兄さんと水野さんが同級生だったんですよね?
水野さん(以下、水):そうなんです。高校でバンドブームが起きてたんですけど、地元で路上ライブをしていたのは男性ふたり組ばかりで。男女混合にしたらウケるんじゃないか、と。いきものがかりとして一緒に活動していた山下と、隣の高校で「歌がうまい」と評判だった吉岡に声をかけたんです。

吉:私はずっと路上ライブで歌ってみたかったから「いいんですか? 今度歌わせてください!」って。
水:いろんな駅で路上ライブするのが楽しかったよね。地元の人やほかの学校の子とも仲良くなって…部活みたいな感覚でした。で、大学受験とともに部活が終わるみたいに活動をやめて。
サ:どうしてまた3人で活動を?
水:僕も山下も浪人生活を送ってたんですけど、受験勉強で気持ちがふさぎ込んでしまって…「路上ライブ楽しかったね。大学入ったら、また聖恵と3人でやろうよ」って。「いつかオールナイトニッポンとかやりたいよね」なんて、受験がきついばかりにふたりで夢物語を語り合って… (笑)。
吉:そんなふうに盛り上がってるなんて、私は全然知らなかったですけどね(笑)。
サ:語り合っていた夢物語がどんどん現実になっていったんですね。
放牧宣言、メンバーの卒業… 成熟の30代に起きた変化
サ:大学卒業と同時にメジャーデビュー。音楽が仕事になるってどんな感覚でした?
水:音楽は遊びの延長みたいなものだったので「これからは遊びが仕事になるんだ!」って、当時は無邪気に喜んでいました(苦笑)。
吉:だけど、どんな曲でデビューするか全然決まらなくて、曲づくりも歌唱も千本ノックを受けるように何度もトライ&エラーを繰り返して。

水:ずっと曲をつくってて、訳がわからなくなって。まわりの大人たちも、最後には「もう好きなようにつくりなさい」と。それでできたのがデビュー曲『SAKURA』だったんです。
サ:そこからヒット曲をバンバン出して…〝放牧宣言〟で活動休止したのは、デビュー10周年の翌年でしたね。
水:たくさんCDを出して、ありがたいことにすごく注目もしてもらって…だからこそ「頑張らなきゃ」が先立って、疲れてしまって。
吉:キリもいいから、ひとまず休むことだけ決めたんだよね。
サ:〝放牧〟から〝集牧〟までの期間は決めていたんですか?
吉:何も決めていませんでした。でも、そうして一度まっさらにすることで、リフレッシュできたんだと思います。ずっと歌い続ける生活を送っていたので、「めちゃくちゃ歌いたい!」って気持ちが湧き上がってくるまで、私は歌うことから離れてみよう、と。リーダーはすごい数の楽曲提供をしてましたけど(笑)。

サ:そのままソロでやっていこうと思うことはなかったですか?
水:グループを続けようという気持ちは、もともと3人とも持ってたもんね。自然に、無邪気な感覚で戻っていけたのはすごくよかったな。
吉:「今までやったことないけど、3人で曲つくろうよ」なんて、高校生のときみたいな雰囲気があったよね。
サ:そこから今に至るまでには、山下さんのグループ卒業もありました。体制が3人からふたりになって、関係って変わったりしました?
吉:ひとつの物事を決めるための一票の重みが変わったのかな。意見交換は必然的に増えた気がしますね。
水:でも、一票の重さは常に平等じゃなくていい。曲に関しては僕の意見、歌やパフォーマンスに関しては吉岡の意見が強くて… それぞれの持ち場がよりはっきりしてきたよね。
吉:リーダーは絶対にいい曲をつくってくれる。それを最後まで歌いとげて、みんなに届けるのが私の役割。長く一緒にいるからこそお互いに信じられるものがあるんだと感じます。
サ:放牧宣言や体制の変化が起きたのは30代のとき。おふたりにとって、30代ってどんな時期でした?
水:グループについて考えることがすごく多くて、個人的にはつらい時期でしたね。でも、50歳くらいになったら「あの30代があったから、40代は楽しかったね」なんて言ってるかも… とはなんとなく思います。
サ:つらい経験はムダじゃない、と。
水:責任が増えたり、若さが剝がれてきたり… でもそれは「成熟」だと思うんです。つらいこともあるけど、頑張ってやってみようとする。その経験が、今後ポジティブに生きてくるんだろうなって。

いきものがかりとして今、新たに迎える成長期
サ:吉岡さんはいかがでした?
吉:私は歌のことばかりなんですけど…(笑)、20代でがむしゃらに目指していた〝強く明るく届けること〟が、30代でできるようになってきて。軸ができたのか、変化していけるようにもなりました。夢中で走っていた20代、自分のことがちょっとわかってきた30代、そして今はまた新たな発見ができる時期なのかなって思います。
サ:水野さんから見て、吉岡さんの歌はどう変化していますか? 曲づくりにも関わってくる部分ですよね。
水:若いころのように100%パワー全開で歌うことは、だんだんできなくなっていく。だけどその分、力を抜くことやメリハリのある聴かせ方を覚えて、パフォーマンスの手段が増えてきたように感じます。「できなくなる」と言うとネガティブですけど、これも「成熟」。抑えて歌うことで言葉がより際立って聴こえる瞬間もあって、そうするとメロディーで多くを語らなくてもよくなるんですよ。
サ:吉岡さんの表現力が高まって、曲づくりの選択肢も増えてきたんですね。
水:創作のキャッチボールが、お互いの成長につながっていく…みたいなことを、今やってるよね。
吉:… ありがたーーーーーい!(叫)

水:何に向かって叫んでるの(笑)。最新アルバムの中にも、今の彼女だから生まれた曲がたくさんあります。
サ:そんな11枚目のアルバムタイトルは『あそび』。デビュー時は「遊びが仕事になるんだ!」と思っていた… ともおっしゃっていましたよね。
水:その前のアルバムがすごくストイックだったんです。その感覚が残っていたこともあって、真面目に考えすぎて、みんなで行き詰まってしまい…。
吉:会議室で全員黙り込んで…(笑)。
水:「もう遊ぶ感じでやったらどうですかね」と発言したら「その〝遊ぶ〟っていいね」と一気に空気が変わって。「初めてのコラボやってみる?」とか「詞をだれかに預けてみる?」ってアイディアがたくさん出てきたんです。
吉:今までなら「それはちょっと…」となりそうな話も、自然と「アリだね!」っていう空気で進んでいったよね。
水:結成から25年経って、アルバムも10枚つくってきた今だからこそ、一周まわって遊ぶのもいいよねって。
吉:リーダーの曲だけど、詞は違う。そういった新しい曲を歌うことに試行錯誤はしたけれど、すごく楽しくやれて。出来上がった曲が、どれも清々しい佇まいをしているんです。
サ:確かに! 聴いていて気持ちのいい曲たちだなという印象を受けました。

水:このアルバムを機に吉岡が変化のフェーズに入ったと感じるんです。僕は異分野の人と会う機会も多くて、それが少し前倒しで始まっていたんですけど、ふたりが変化の段階に入った今、グループももう一度成長期に入りたい。次の作品、その次の作品でも、高い完成度で成長を実現していきたいですね。
吉:「できるかな?」と思っても、今までやったことがなくても、飛び込んでみる。そのときは必死でも、気づけば面白いものができている。実は次の曲をもう録り終えているんですけど、それもまた新しく感じられていて。いろんな曲を歌いたいし、歌えるぞ! と感じている、今はそんな状態です。
サ:再び成長期を迎えたいきものがかりが楽しみ。素敵なタイミングでお話が聞けてうれしかったです!
<Vol.2へ続きます>
【Information】NEWアルバム『あそび』大好評発売中!

いきものがかりのポップな世界はそのままに、多数のゲストアーティストとのコラボから新たな表現が感じられる一枚に。同作を携えたアリーナツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2025 〜ASOBI〜」も現在開催中。[通常盤] ¥3,520(ソニー・ミュージックレーベルズ)
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《衣装》
[吉岡さん分]シャツ¥49,500(RUMCHE) スカート¥25,300(IMMEZ) 靴¥176,000(J.M. WESTON 青山店〈J.M. WESTON〉) 〝シースキー〟のイヤリング¥2,090・〝アプロ〟のリング[左手]¥2,640(ロードス) リング[右手]¥70,000(トムウッド 青山店〈トムウッド〉)
[水野さん分]ジャケット・シャツ・パンツ/参考商品(ヨウジヤマモト プレスルーム〈Yohji Yamamoto〉)
[サッシャさん分]ジャケット¥297,000(イザイア ナポリ 東京ミッドタウン〈イザイア〉) シャツ¥2,420・胸ポケットにさしたバンダナ¥1,100(原宿シカゴ 神宮前店〈原宿シカゴ〉) その他/スタイリスト私物
2025年Ogg8月号「働く私にMusik」より
撮影/中村和孝 スタイリスト/作山直紀(いきものがかり分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/内藤 歩(いきものがかり分)、新地琢磨(Sui/サッシャさん分) 撮影協力/BACKGROUNDS FACTORY 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部
Oggi編集部
「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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