最新アルバム『HAPPY』ができるまで
1月22日(水)、9枚目のオリジナルアルバム『HAPPY』をリリースした高橋優さん。NHK夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』主題歌の“spotlight”、TBS『news23』エンディングテーマの“キセキ”など、多数のタイアップ曲を含む12曲を収録。高橋さん自身が「最高傑作」と太鼓判を押すアルバムが完成するまでの道のりを聞きました。そして高橋さんの仕事観や、Oggi世代におすすめの習慣とは…? その頭のなかに迫ります!
──アルバムのタイトル『HAPPY』に込められた思いを教えてください。
街中を歩いていると、スマホに釘付けの人たちがたくさんいるじゃないですか。事情があってのことかもしれませんが、すれ違う人とぶつかったりして危ないですよね。
でもその反面、それを見て僕は、「この人って今、きっとすごく幸せなんだろうな」とも思うんです。それだけ夢中になれるものがあるということだから。
スマホに夢中な人も、何かに向かってまっすぐ歩いている人も、そうでない人も…「今、あなたにとっての幸せはなんですか?」と投げかけたい気持ちもあって、『HAPPY』というタイトルをつけました。
──2年3か月ぶりのアルバムができあがって、いかがですか?
今回のアルバムは、改めて「高橋優のファーストアルバムができあがった」と言ってもいいほど、素晴らしいものが完成しました。聴いてくださるみなさんに、何かひとつでも好きになってもらえる部分があったらいいなと思います。
「聴きどころ」は…やっぱり歌詞かな。言葉に耳を澄ませて、聴いてもらえたらとてもうれしいですね。
──今作も、リスナーの喜怒哀楽を肯定するような、高橋さんらしい言葉が詰まっていますよね。歌詞や楽曲を制作する際は、どのようにインスピレーションを得ているのでしょう?
「え、今!?」という時が多いです。トイレにいる時、ジョギング中、シャワーを浴びている時など…。僕は基本、ノートに鉛筆で曲を書くのですが、どちらも手に持てないようなタイミングで思い浮かぶんです。だからスマホにメモしておいたり、あとあと書きだせるように覚えておいたり。忘れてしまうことも、いっぱいあります(笑)。その時は諦めて、次にマインドシフトするようにしています。
──机に向かって一生懸命考える、というよりは、ふと浮かんだアイデアを書き留めていくことが多いですか。
それはまちまちで、鉛筆を持って「うーん」と考えることもあります。今回のアルバムの場合は“青春の向こう側”と“BRAVE TRAIN”かな。一度立ち止まって、ぐっと悩みながら書いた曲です。
「うーん」となった時は気分転換に散歩をしたり、カフェでソイラテを飲んでみたりします。僕、夏頃に引っ越したんです。12年間住んでいた場所を離れて、雰囲気の違う街へと移ったので、制作に行き詰まったら、新しい街を歩き回っていました。あとは…おしゃれな本屋で何だかよくわからない写真集を買ってみたりすることもありました。
──どんな本だったんでしょう?
『風とロック』(※)に似ているな、と思って手にとったのですが、読んでみたら想像と違ってなかなか卑猥な本でした(笑)。でもその意外性も楽しくて。もし10代の頃だったら、ドキドキしてしまって曲どころじゃなくなっていたかも…。
※2005年〜2013年までタワーレコードで配布されていた音楽系フリーペーパー。編集長はクリエイティブディレクターの箭内道彦さん
──10代の高橋さんだったら、また違う曲が生まれていたかもしれませんね。
その可能性も大いにありますね(笑)。でも40代の今だからできる見え方もある。それに紙をめくる感じや手の感触も、どこかで歌詞や曲になっていく感覚があるんです。だから「なんとなく本を買ってみる」のもリフレッシュになりますよね。そんな風に刺激をもらいながら、歌詞を書いていきました。
──2月からは全国ツアー『ARE YOU HAPPY?』が開催されますが、意気込みはいかがですか?
ツアー名通り、アルバム『HAPPY』を携えてのツアーになります。先ほどもお話しましたが本当に「高橋優の最高傑作」ができたと思っているんです。ただ、アルバムはCDがリリースされたら完成ではなく、お客さんの前で直接演奏したときに、ようやくすべてが出来上がるものだと考えています。だからこそ、みなさんと一緒に「HAPPY」を満喫できるライブにしたいです。
──「最高傑作」のアルバムに、“リアルタイムシンガーソングライター”という楽曲が収録されるのも、なんだかグッときます。高橋さんのキャッチコピーであり、ファーストアルバムのタイトルにもなっていますよね。
僕の中では自然な流れでした。あきたこまち40周年記念CMソングとして書き下ろした楽曲ですが、あきたこまちは僕が40年間食べ続けてきたお米。そんな僕が書けば、自ずとあきたこまちの曲になるんじゃないかと考えて、自分らしい曲を作りました。高橋優=リアルタイムシンガーソングライターですからね。全部イコールで結ばれたんじゃないかな。
“リアルタイム”を見つめて歌っていくことが「任務」なんだなと、思い続けてきた
──2025年はデビュー15周年を迎える年になりますが、振り返ってみていかがでしょうか。
今年の7月にメジャーデビュー15周年を迎えます。ずっと歌わせてもらえてありがいですし、応援してくださるスタッフ、リスナーのみなさんに支えられて歩んでこれたと思います。
その一方で、デビューしてすぐに東日本大震災が起き、その後も大きな災害やコロナや戦争が続いて。「リアルタイムシンガーソングライター」と銘打ってデビューした自分にとっては、その「リアルタイム」に直面して、心が痛む時間も多かったような気がしています。
でも、それも巡り合わせというか、宿命というか。僕はそういうことを見つめて歌っていくことが「任務」なんだなと思い続けてきた日々でもありました。今も、そう思いながら歌っています。
──現在40代の高橋さんですが、Oggi世代の20代、30代のうちにやっておいてよかったことはありますか?
ジョギング! 健康第一、元気が一番です! 僕は毎日30分、5〜6km走っています。
落ち込んでいるときも、運動するだけで気持ちが晴れやかになる。やせるし、血行もよくなるし、ご飯もおいしくなるし、もう良いことだらけなんですよ。だいたい人は人間関係で悩むものですが、相手をコントロールしようと思えば思うほど、ドツボにハマってしまいます。嫌な人のことを考えている時間は無駄ですから、自分の「いい時間」を長くしたほうがいい。趣味がある人はそれに打ち込んでもいいし、趣味がないなら運動が断然おすすめです。走るのが苦手なら、お散歩でも。
──毎日続けるのはなかなか大変そうですが…コツを教えてください!
かわいいジョギングシューズ、ジョギングウェアを一式揃えましょう。セットで部屋の見える場所に置いておき、「これを着て走る」というシステムを生活のなかに組み込むんです。
「どれを着よう?」と迷ったらそこでやめてしまうので、迷う瞬間を作らないのが大切ですね。僕は飽きないように4セットくらい用意しています。暇つぶしにSNSを見るくらいなら、絶対外へ出たほうがいい。メンタルが爆上がりしますよ!
この話を聞いて「じゃあ走ろう」という人は1000人にひとりもいないかもしれませんが、僕はそのひとりのためだけにも「運動はいいよ」と言い続けたいですね(笑)。
──仕事をするうえで大切にしていることはなんですか。
僕のやらせていただいている仕事を「音楽」だとするならば、いちばん最後に誰が喜んでくれるかを、絶対に意識します。要は、リスナーのみなさんのことですよね。
たとえば僕の場合ですが、レコーディング中にギクシャクする時ってけっこうあるんですよ。ミュージシャンそれぞれ、プライドをもってやっていますからね。そこできちんと話し合いをしてお互いが納得することは大事です。でも重要なのは、これは「ミュージシャン同士の戦い」ではなく、お客さんにいちばんいいものを届ける話し合いなんだということ。
作品を受け取ってくださる方々がハッピーになることが、何よりも優先事項です。僕の生命を懸けてでも。
──お仕事で悩む時はどんな時ですか?
うーん、曲ができない時ですね、やっぱり。0から1を生み出すためにはすごく悩まなきゃいけないことが多いし、しんどい期間です。そんな時はジョギングするか、映画を観にいくか。最近は禁酒中なのですが、友達とお酒を飲んで他愛ない話をすることで気が紛れることもあります。
だいたい行き詰まっているときは意固地になっていることが多い。それを「自分でどうにかしなきゃ」と思っていると、だいたいよくない結果になりがちです。「今ちょっと、曲作りに行き詰まっているんだよね」と言える相手がいるだけでだいぶ気持ちが軽くなりますよね。
──では最後に、2025年の目標はありますか?
2025年7月21日にデビュー15周年を迎えます。それまでは「ARE YOU HAPPY?」ツアーで、しっかり楽曲を届けることが目下の目標です。7月21日以降は、15周年だからこそできる特別ななにかを実現させていきたいですね。まだちょっと内緒なのですが、きっとみなさんに楽しんでいただけるはずなので、期待していだきたいです!
撮影/misumi ヘアメイク/眞弓秀明 スタイリスト/上井大輔 取材・文/徳永留依子
[衣装協力]
ayame 03-6455-1103
remer store 03-6276-7644
高橋優 9thアルバム『HAPPY』
2025年1月22日(水)発売
・通常盤(CD Only)WPCL-13617 ¥3,520(税込)
・初回限定盤A(CD+2Blu-ray)WPZL-32172/74 ¥9,900(税込)
・初回限定盤C(CD+DVD)WPZL-32177/78 ¥5,280(税込)
・初回限定盤C(CD+DVD)WPZL-32177/78 ¥5,280(税込)
Profile
高橋優
1983年12月26日生まれ、秋田県横手市出身。札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。2010年に1stシングル『素晴らしき日常』でメジャーデビュー、2011年に1stアルバム『リアルタイム・シンガーソングライター』をリリース。その後2025年発売の『HAPPY』まで9枚のオリジアルアルバムをリリース。地元・秋田での「秋田CARAVAN MUSIC FES」の主催など、ライブ活動も精力的に行っている。