見どころは華やかでスピーディな殺陣(たて)のシーン。テレビからでも伝わる大迫力!
24時間365日、時代劇を放送する「時代劇専門チャンネル」。今回ピックアップするのは歴代の人気俳優が主人公の長谷川平蔵を演じてきた、池波正太郎原作の『鬼平犯科帳』。10代目松本幸四郎さんが新たな鬼平となった新シリーズには、若き日の鬼平・長谷川銕三郎(てつさぶろう)を幸四郎さんの長男である8代目市川染五郎さんが演じ、うれしい父子共演を果たしました。
今回、2024年5月に公開された劇場版『鬼平犯科帳 血闘』がテレビ初登場。作品の見どころや魅力について、市川染五郎さんにインタビューしました。
――『鬼平犯科帳』シリーズの主人公である長谷川平蔵は、曽祖父にあたる8代目松本幸四郎さん(当時)、大叔父にあたる2代目中村吉右衛門さん、そしてご尊父にあたる10代目松本幸四郎さんへ引き継がれています。染五郎さんご自身の、この作品への思い入れをうかがえますか?
曽祖父が鬼平を演じていたことも知っていましたし、池波正太郎先生が曽祖父をモデルに小説を書かれたことも父から聞いていました。自分が生まれた頃は吉右衛門の大叔父が演じていて、おそらくみなさんもそのイメージが強いと思います。
実はこの作品をそれまできちんと観たことがなく、出演させていただくにあたりじっくりと拝見し、こんなに面白い作品なのだと衝撃を受けました。大叔父の鬼平がファイナルを迎えて次作を期待されている中で、父が受け継ぐと決まったときは率直にうれしかったですね。
――染五郎さんは『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』と劇場版『鬼平犯科帳 血闘』で、若き日の長谷川平蔵=長谷川銕三郎を演じるという、ファンにとっては大変うれしいキャスティングです。どんな役作りをされましたか?
銕三郎(てつさぶろう)は、大叔父のシリーズでは大きくフォーカスされていませんでした。大叔父本人が回想シーンでチラッと銕三郎時代も演じたということはありましたが。今回初めて平蔵時代と銕三郎時代を違う役者が演じることのプレッシャーや、一から役を作らなければいけない、という責任を感じていました。
大叔父の回想シーンの銕三郎を参考にしたり原作を読み込んだりして、自分なりの銕三郎を作っていく中でいちばん意識したのは、父の鬼平の若い頃を演じるのだということです。そこから脱線することはないようにということに気を配って演じていました。
――『血闘』のプロローグで、お酒を飲む銕三郎が平蔵に変わっていきますよね。あのシーンでグッと掴まれる感じがしたのですが。
そうなんです。『本所・桜屋敷』も銕三郎から平蔵にボワっと変わっていく始まり方です。実は台本のト書き(演技の指示)にその演出が書いてあったのですが、でき上がるまでどのようになるかわからなかったので、とても楽しみにしていました。実際に完成したものを観て感慨深かったです。
――完成したものはお父様とご覧になられたり…?
一緒には観なかったです(笑)。
――台本のト書きの細かさは、作品によってそれぞれ違うのですか?
自分もまだ映像作品の経験がそこまであるわけではないのでよくわからないですが、脚本家の方によるところもあると思います。今回は、ト書きが細かく書いてある台本だったので全体的にイメージしやすかったです。人物像を捉えるうえでも参考になりました。
――今回『鬼平犯科帳 血闘』が放送されるにあたり、作品の見どころを教えてください。
『血闘』というサブタイトルからも伝わるように、闘いのシーンはものすごい迫力。殺陣(たて)やアクションを見逃すことなく、注目していただきたいです。
自分が演じる銕三郎は、怖いものなしの、まっすぐな人物。若者特有の危なっかしさが魅力のひとつになっています。失敗しながらも成長していく過程を演じられたことが面白かったです。
長谷川平蔵は“鬼”と言われるくらい人間として隙がない人物ですが、銕三郎はそこに到達するまでの“不完全な長谷川平蔵”。ケンカは日常茶飯事という感じで、立ち回りは技術よりもがむしゃらさが先に立つようにしていました。
――「素手でも強い!」と思いながら観ていました。
刀を使わないのも銕三郎らしさが出ていて、「刀なんか使わなくても力で倒せるんだ」という自信の表れなんです。その荒々しさも好きなところで、自分にとって大切な役のひとつになりました。
――未完成な平蔵を演じるために目の表情を研究されたと言われていましたが、具体的にはどのように表現されましたか?
出会う人全員に睨みを利かせているような、ギラギラしている目元にしたいと思いました。そのくらい強い表情を作るようにしつつ、さらにメイクの段階でちょっと強めのアイラインを入れていただいたりして。
違和感があってはいけないので、自然だけれども燃える芯があるようにと試行錯誤しました。ぜひ見ていただきたいポイントです。
今まで大きく取り上げられることのなかった銕三郎は、染五郎さんの演技により新たな魅力を見せています。歌舞伎とはまた違う時代劇での姿と、スカッとするストーリー。長く愛される要素はそのままに新しいエッセンスも存分に感じられる『鬼平犯科帳』。多くの視聴者の心をとらえる作品となっています。
次回のインタビュー(後編)では、染五郎さんの仕事に対する向き合い方やその素顔に迫ります。お楽しみに。
撮影/岡本 俊 ヘア&メイク/AKANE スタイリスト/中西ナオ 文/斉藤裕子
ジャケット¥66,000・シャツ¥39,600・パンツ¥55,000(ヨウジヤマモト プレスルーム〈グランド ワイ〉) ブーツ¥57,200(ワイズ プレスルーム〈ワイズ〉)
[問い合わせ先]
ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500
ワイズ プレスルーム 03-5463-1540
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』を時代劇専門チャンネルで早くも独占初放送!
海外からも注目を浴びた大迫力の殺陣(たて)をテレビでじっくり楽しめる!
【あらすじ】
長谷川平蔵(松本幸四郎)が若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村ゆり)が密偵になりたいと申し出て来る。平蔵はその願いを退けるが、おまさは平蔵が芋酒や「加賀や」の主人と盗賊の二つの顔を持つ鷺原の九平(柄本明)を探していることを知り、独断で探索に乗り出す。その後、九平を探すうちに兇賊・網切の甚五郎(北村有起哉)の企みを知ったおまさは首尾よく網切一味の中へ入り込む。しかし、おまさは絶大絶命の危機に陥る。
【出演】
松本幸四郎
市川染五郎 仙道敦子 中村ゆり 火野正平
本宮泰風 浅利陽介 山田純大 久保田悠来 柄本時生
松元ヒロ 中島多羅
志田未来 松本穂香 北村有起哉
中井貴一 柄本明
【原作】
池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)
【時代劇専門チャンネル放送情報】
2025年1月13日(月・祝)ひる1時/よる7時/深夜1時ほか<独占初放送>
◆時代劇専門チャンネル 松本幸四郎主演『鬼平犯科帳』特設サイト
八代目 市川染五郎(いちかわ そめごろう)
2005年3月27日に10代目松本幸四郎の長男として東京に生まれる。2007年6月歌舞伎座『侠客春雨傘』で初お目見得(歌舞伎デビュー)。2009年6月歌舞伎座『門出祝寿連獅子』童後に孫獅子の精で初舞台。2018年1月・2月歌舞伎座『勧進帳』源義経ほかで8代目市川染五郎を襲名。2025年1月若手歌舞伎俳優の登竜門と言われる「新春浅草歌舞伎」に初出演。映画『レジェンド&バタフライ』、劇場版『鬼平犯科帳 血闘』など映像作品への出演や、劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』で主演声優を務めるなど、ジャンルを超えて活躍中。