企業が考える社員ひとりひとりの「キャリアフィット」って?
日本を代表する通信企業のひとつ、KDDIで10年間役員を務めている先輩女性に、部下や後輩たちが〝適職〟を見つけるヒントをうかがいました!
お話ししてくれたのは…
【KDDI 取締役執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長 最勝寺奈苗さん】
さいしょうじ・ななえ/1964年生まれ。大学卒業後、経済誌編集者を経て’88年第二電電(現KDDI)に入社。IR室長、財務・経理部長などを経て、49歳で女性初の役員に。
“自分の幸せは自分にしかわからない。でも、周囲からの評価も信じてみたら違う景色が見えるかも”
求めに応えて〝しなやかに〟働いてきた、その先に…
一般職から総合職に転換し、社内で初めて育児休業取得。役員にまでなった最勝寺さん自身は、〝適職〟に就いてきたのでしょうか?
「実は私は『これがやりたい』『自分に向いている』といったことを、あまり考えてこなかったんです。出世を目指すわけでもなく淡々と、ただ『お金をもらっているからには、期待される以上の働きをしよう』と。
〝女性役員〟という言葉からイメージされる、パワフルなタイプじゃないんですよ(笑)。でもありがたいことに、上司や仲間が『このポストならあなたの能力が発揮できる』と考えてくれた結果、現在に至ります」
管理職を歴任し、人事も管轄している現在、社員の〝キャリアフィット〟については…?
「たとえば〝数字に弱い〟人が、データ管理業務に就くことがあります。組織としては、業務手順やチェック体制を見直して、個人のスキルに頼らない仕組みをつくるのが大前提。
でも、それで数字が苦手な社員個人の評価が上がるかといったら、やはりそこまでではありません。機会を見て異動などで場所を変えるのが、本人とチーム双方にとって幸せでしょう。もちろん、自分の強みが生かせる場所がほかにあると思えば、社内公募制度を利用するなどして行動するのは大賛成です。
一方で『自分に何が向いているのかわからない』という人は、やみくもに場所を変えるより、目の前の仕事に一度本気で取り組んでみたり、上司と腹を割って話してみたりしてほしい。
企業も社員に能力を発揮してもらいたいと、本気で考えています。出世は…本人のスキルとやる気だけではどうにもならない〝運〟も必要で、みんなが『目指すべき』とは思いません。
ただ、声がかかったら、それは〝向いている〟と判断された証拠。家庭の事情などで『今じゃない』という時期はあるかもしれませんが、与えられたチャンスをつかまないのはもったいないのでは? ポジションとともに見える風景も変わり、人生にもいい影響を与えてくれると思います」
ちなみに、最勝寺さんの〝人生の師匠〟は、アニメ化もされた児童文学『小公女』の主人公。
「裕福な家に生まれた少女・セーラが父の死で一転、貧しく過酷な生活に。でもけなげに、前向きに暮らしていると、最後には報われるという物語です。幸せの形はだれひとりとして同じではないから、自分で考えるしかない。
でもどんな状況でも、ポジティブ思考でいたほうが人生を豊かに過ごせるし、周囲からの評価もついてくると、長い会社員生活で実感してきました。〝自分にとって〟幸せなキャリアを切り拓いてください」
最勝寺さんからの“アドバイス”
適職を見つけるためには…?
〝Good & New〟は24時間以内に起きた〝いいこと〟〝新しいこと〟を、チームメンバーの前などで1分程度で発表する手法。今まで気づかなかった〝いいこと〟をキャッチする、ポジティブ思考が鍛えられる。個人的に取り組んでみても効果あり!
●掲載している情報は2024年9月12日現在のものです。
2024年Oggi11月号「『キャリアフィット』という考え方」より
イラスト/大内郁美 構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部