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WORK

2024.08.02

医師志望から金融業界を経て美容業界へ。クラランスの社長が考える「経営において大切なもの」とは?

目まぐるしく変化し、ライフスタイルも多様になった社会で、個人が「どう生きるか」が問われる今。お手本にしたいのは、一見不可能にも思えることを実現してきたリーダーたち。どんな時代や場所でも、道を切り拓いていく。その知恵と原動力に触れてみませんか? クラランス・代表取締役社長 小山順子さんにお話をうかがいました。

生物多様性とダイバーシティ経営を推進! クラランス 代表取締役社長 小山順子さん

未来は、思うほど単純じゃない。でも、頑張れば予想以上の未来が待っています

クラランスは植物由来のスキンケアブランドで、創業時から植物を保護し環境問題にも取り組んできました。「生物多様性」を尊重しながら製品づくりをしてきて、今年で70周年。この「多様性(ダイバーシティ)」こそ、私の経営の信念であり役割です。多様な視点や意見があってこそ、多様な人に向けた新しいアイディアが生まれ、よりよい議論、よりよい成果を残すことができる。経営は覚悟のいる大変な仕事ですが、この達成感は何にも代えられない特別なものです。

最初にこの達成感を味わったのは、フランスの経営大学院で学んでいたときでした。国籍も背景もさまざまな仲間とのグループワークでは、主張がかみ合わず、課題解決の糸口も見出せずに空中分解寸前。困り果てた私は、教授のアドバイスを得て、一緒に食事に行くなどまずはお互いをよく知り、関係を深めることから始めてみたら…。たちまちチームの結束は強まり、まとめたレポートも高い評価を得ることができたのです。

その後、イギリスやスイスの企業で働きながら、30代前半を過ごしました。日本に戻ってからいくつかの会社で社長を任されましたが、初めから社長を目指していたわけではありません。幼いころになりたかったのは医師でしたし、キャリアのスタートは金融業界でした。国際的な仕事につきたいと考えての進路転換でしたが、いくつもの国、業種や企業で働き、経験を積むうちについた今のポジション。私のキャリアが、ダイバーシティそのものなのです。

その過程でいちばん学んだことは、「他者へのリスペクト」でした。クラランスにはさまざまなプロが集まっていて、多くのスキルで成り立っています。たとえば、私が店頭に立っても売れたのはマスカラ1本だけだったりと、販売のプロにはとうてい頭が上がりません。みんなの力があって、サポートしてもらって、その上で自分の仕事があるのだと強く感じます。また、日本のクラランスの経営陣は男女半々ですし、社員の国籍も背景もさまざまです。そこでの私の役割は、大学院のときと同様、ひとつずつの考えに耳を傾け、尊重することです。ほかの国の経営陣との会議でも、アグレッシブに討論するばかりがいいとは限りません。日本人らしい「和をもって貴しとなす」精神も、ときには組織にいい影響を与えるのです。

クラランス 代表取締役社長 小山順子氏

よりよく、より楽しんで地球のための活動を

経営でもうひとつ大切にしているのが、関わる全員が同じ目標をもつことです。「地球を汚さない」というブランドの使命は今、より強く従業員全体に浸透しているのを感じます。  

歴史上一度も汚染されたことのない土壌の自社農園では、持続可能な農法で、スキンケアの成分となる植物を栽培しています。将来的には、全製品の3〜4割の成分を自社農園で生産したものにするのが目標です。それは、長く難しい道のりですが、フランスの家族経営を基盤としているクラランスだからこそ、利益だけでない長期的な視点で運営することができるのです。地球のために考え、行動する。とても大きな目標ではありますが、これこそが従業員みんなが「クラランスのファン」であるゆえんであり、強い結びつきをつくるものなのです。

昨年から今年にかけては、植林プログラムへのサポート、リウマチ性疾患分野の研究への資金提供、教育と子供の成長への支援など、多くの活動を行ってきました。また、ビューティ業界では初のトラスト制度(QRコードで原料の栽培から製造までの工程をトレースできる仕組み)を始めました。

身近なことでいえば、出張でもできるだけ飛行機を使わず、鉄道を使います。こうしたさまざまな活動を、ときには社内のイベントにしながら、「楽しんで」行うのが私たちのやり方です。Together, do more, do better and enjoy doing so! 共に、より多く、よりよく、そして楽しんで。そうでなければ、継続できませんからね。

クラランスの製品を手にした代表取締役社長 小山順子

苦労して、大きな根を張ってワインも人間も同じです

私自身がダイバーシティだとお話ししましたが、振り返ってみれば、目の前のタスクをひとつずつ夢中で乗り越えてきた結果です。「自分はこうあるべき」「絶対にこうなりたい」という考えは、ずっとありませんでした。

VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と称される先の見えない現代、思い描いたとおりにならないことのほうが多いのではないでしょうか。目指していた仕事が、未来にはない可能性だってあります。大きなビジョンは持ちつつも、目の前に集中して努力を続ければ、だれかが必ず見ているもの。その先に、次の機会が開けてくるのだと思います。

とはいえ、うまくいかなかった日は、未来さえネガティブに考えてしまいがちですよね。他人のSNSと自分を比べて、落ち込むこともあるかもしれません。でも、ネガティブになっていては、せっかく訪れた機会も気づかず通り過ぎてしまいます。未来は、自分で思うほど単純じゃない。でも、頑張って進み続ければ、予想以上の未来が待っている。私はそう信じています。

と同時に、私自身は精神的に強い人間でありたいと願います。私の趣味のワインでいえば、土地に深く根を張り強くたくましく育ったぶどうほど、味わい深いワインを生み出します。人もワインも同じなんですよね。

ゆるぎない強さを持ちながら、さらにこれからは、重ねた経験を人のために使いたい。多くの人に支えてもらったぶん、恩返しと利他の精神で、知識も経験も惜しみなく伝えていきたいのです。その先にどんな未来が待っているのか、それもまた楽しみです。

PROFILE
津田塾大学英文学科卒業。INSEAD(欧州経営大学院)MBA取得。外資系銀行S.G. Warburg & Co.のコーポレートファイナンス部門でキャリアをスタート。ロンドンオフィスに移り、国境を超えたM&Aおよび民営化のアドバイザリーとして従事。その後、P&G スイス ジュネーブ本社で輸出マーケットのマネジメントを経験。帰国後、カルティエ ジャパンにてマーケティング&コミュニケーション ディレクターに就任。2000年よりLVMHグループ ヴーヴ・クリコ ジャパンの代表取締役社長。2011〜2019年、エスティ ローダージャパン取締役 クリニーク部門 ジェネラル マネージャー。その後フェラガモジャパンの代表取締役を経て、2022年よりクラランス代表取締役社長に。趣味はワインテイスティング、水彩画、美術鑑賞。

Oggi2024年8月号「いま会いたい、話したいグローバルな4人の先輩」より
撮影/高木亜麗 メイク/佐藤洋樹(クラランス) ヘア/コン・イルミ(ROI) 構成/南 ゆかり
再構成/Oggi.jp編集部

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