地方&郊外で暮らしながら働く女性にインタビュー
働き盛りである20~30代での移住しは「一大決心だったのでは?」と想像しがちですが、リアルな体験談は予想外に軽やか! ひと昔前の「緑豊かな山奥への移住」とは違う、今どきな地方暮らしが見えてきました。
リモートワークで移住を決意! 働く女性の移住ヒストリー
今回は、「リモートワークができるようになったから」という理由で移住&地方暮らしを決心した3人の女性にインタビュー。それぞれの暮らしぶりや移住後のキャリアなどをお聞きしました。
千葉県松戸市→静岡県富士市
▲金澤有沙さん(29歳・システム会社)
移住ヒストリー
気軽にアウトドアを楽しみたくて…
勤務先がコロナ禍でフルリモートになって1年ほど経ったとき、お昼休みに見ていたテレビで、富士市の「テレワーク移住アシスト」という制度を知ったんです。
一都三県からテレワークを機に富士市に引っ越すと最大50万円補助されるというもの(詳細規定あり)。
私はアウトドア好きなんですが、そこそこ本格的な登山をするには、首都圏からだとすごく早起きしなきゃいけないんです(苦笑)。「東京の近くに住む意味ある?」と考えていたときだったので、「こんな制度があるなら」と背中を押されました。
▲週末はアウトドア一色に
もともと私は静岡県の出身。県内には仲のよい友達もいて、「道も家も広くてごはんもおいしくて静岡最高!」と思っていました。
◆自治体の補助金制度を使って1Kとほぼ同じ家賃で2LDKに引っ越し!
自治体の制度は予算の都合で年度途中でも終了することがあると聞き、市役所に問い合わせながらタイミングを見て移住。引っ越しにまつわる費用は全額、補助金でカバーできました。
▲アウトドア大好き! キャンプ用に中古で車も購入
富士市の家は仕事場も広々確保できて、ベランダで家庭菜園もでき、キャンプ道具も置ける物置付き。終業後すぐにプライベートに切り替えられて快適です。
◆リモートワークを条件に転職も
ただ、今年に入ってから勤務先の出社頻度が増える気配が出てきて…。その仕事を続けることへの迷いもあったので、転職しました。
転職エージェントの方には「フルリモート限定だと選択肢が狭まる」と言われましたが、結果的には、東京の給与水準をキープしながら富士市に住み続けられる職場に出合えました。
出社時の交通費は、前職は特急代が支給されず、今の職場は既定の交通費の上限オーバー。いずれにしても多少は自腹を切ることになりますが、割安な家賃を考えたらチャラですね。
パートナーとの結婚も決まり、静岡に腰を据えて住みたいと思っています。
移住してから変わったことは?
▲そのときどきに安い食材で週末につくり置き
「健康診断の数値がよくなった! 以前はストレスのせいか、好物のチーズを爆食いして悪玉コレステロールが… (苦笑)。富士市は野菜も魚も肉もおいしい! 体重は変わりませんが、健診で何も引っかからなくなりました。遊びに来る友達には、近くの漁港のしらす丼が人気」(金澤さん)
東京都→千葉県印西市
▲鶴岡沙弥さん(33歳・飲料メーカー)
移住ヒストリー
趣味のゴルフを充実させるため、ギリギリ通勤可能な郊外へ
移住のきっかけは、勤務先がフルリモートになり、同じくらいの家賃でもっと広い家に引っ越したかったから。どうせなら「趣味のゴルフができる場所に!」と、夫婦でよく訪れていた千葉県の物件を探し始めました。
最終的に選んだのは自宅から職場へ90分で行ける印西市。今では仕事後は近所のゴルフ教室へ、休日はラウンドへ行くのが定番に。
▲広々とした空間は郊外ならでは
ただ、覚悟していたとはいえ〝都心へ90分〟の距離は大きいと実感。つい腰が重くなり、都内の友達とはちょっと疎遠気味に。
そして最近、出社の頻度が増えつつあって、通勤が週3日以上になったら都内に戻ろうかな… とも。一方で、実は最近出産したばかりで、子育てをするにはのどかでいい街なんですよね。
気持ちがグラグラ揺れ動いていますが(笑)、会社の方針を見守りつつ、しばらくはこの街で暮らしていくつもりです。
移住して変わったことは?
◆念願のゴルフ三昧が実現!
「ゴルフ場は車で15分の範囲に3、4つほど。都内からだと1日がかりだったため気軽に行けるようになってうれしい!」(鶴岡さん)
◆近所の直売所で旬の食材を調達! 自炊にもハマりました
「食生活は、近所にあまり飲みに行ける店がないので、自然と自炊の頻度がUP。旬の食材も安く手に入ります」(鶴岡さん)
東京都→愛媛県上島町
▲雫石まどかさん(35歳・上島町島おこし協力隊/IT関連)
移住ヒストリー
住む場所を変えてみたら、キャリアのビジョンが広がった
前職のIT企業はもともと複業OKの会社。コロナ禍でフルリモートに移行後、ちょうど仕事のプレッシャーなどでしんどかったこともあり、心機一転「住む環境を変えてみたい」と思ったんです。
東京の仕事だけリモートで続ける選択肢もありますが、住むからには地域に関わりたかった。
◆東京の仕事を複業で続けながら、離島の公営塾の講師に
そこで前職を業務委託に切り替え、民間の塾がない上島町の高校生に学習機会を与える仕事に応募しました。今は前職からも独立し、フリーランスとして午前は東京の仕事、昼からは塾の仕事をしています。
▲勉強だけではなく生徒の自立支援も
島での仕事は来年任期が終わりますが、教育の仕事の面白さがわかってきたので、もう少し島にいようかなと考え中。
起業するか、島外に通勤するのかはまだわかりませんが、今はひとりで好きなことを好きなように決断できる時期だと思うので、私の新しい挑戦を生徒たちにも見てもらいたいです。
▲近所の海で釣った魚をさばくことも
移住して変わったことは?
時間ができて、自分自身に〝余白〟ができた。
▲島の伝統的な味噌づくりに挑戦
「東京も大好きな街だし、こちらでも忙しく仕事をしていることに変わりはないんですが、不思議と時間の余裕がある気がします。ここから先の人生やキャリアをどうするか、自分がどうありたいか。自分を見つめ直す時間ができました」(雫石さん)
2023年Oggi12月号「30代で始める『地方暮らし』って悪くない!」
構成/佐々木 恵・酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部