恵方巻きは大阪・船場の地方料理
恵方巻きは、全国のコンビニやデパート、スーパー、寿司屋などで販売されています。そのため、日本の一般的な風習のように思われがちですが、実際のところは大阪・船場(大阪市中央区)が発祥の地方料理です。
船場は古くから栄える問屋街ですが、1970年代頃に船場の海苔問屋が海苔の販促のために恵方巻きを宣伝し、それが全国に広まって、節分といえば恵方巻きという習慣として根付いたといわれています。
なお、恵方巻き自体は海苔問屋が宣伝する前からあったようです。大阪の花街で生まれた風習といわれたり、江戸時代末期に船場の商家で商売繁盛のために行われたとされたりすることがあります。いずれも大阪が発祥ということは同じなので、恵方巻きは大阪、特に船場の地方料理といえそうです。
恵方巻きの食べ方には諸説ありますが、丸かぶりするのが一般的です。陰陽道で定められたその年の恵方(縁起の良い方角)を向き、黙って1本食べることがマナーとされています。海苔巻きを切らずに食べることに「縁を切らない」といった意味が含まれているので、できればマナー通りに切らずに食べましょう。
恵方巻きの具材は七福神と同じ7種類
恵方巻きの具材は、7種類を入れることが基本とされています。地域によって変わることがありますが、色合いなどのバランスからこの7つが一般的です。
・かんぴょう
・えび
・アナゴ、ウナギ
・シイタケ
・キュウリ
・だし巻き卵(厚焼き卵、伊達巻き)
・桜でんぶ
なお、7種類の具材を入れるのは、縁起が良い神様とされる七福神をイメージしているからです。7柱揃うと縁起の良い七福神と同じく、7つの具材を巻き込んで縁起の良い一年にしたいという思いが込められています。それぞれの具材に込められた意味も見ていきましょう。
◆かんぴょう
かんぴょうは細く長い形状から、長寿の意味がある食べ物とされています。縁起を担いでおめでたい食べ物を食べる恵方巻きにぴったりの食材です。
かんぴょうは地域を問わず、出汁やしょうゆ、砂糖で甘辛く煮込んで具材にします。なお、恵方巻きだけでなく普段の海苔巻きにも、独特の歯ごたえのあるかんぴょうの甘煮が使われることが多いです。
◆えび
えびは目が飛び出ているように見えるため「目出度い(めでたい)」の意味がある縁起の良い食べ物とされています。また、ひげが長く腰が曲がっていることから、長寿の象徴ともされています。
二重の意味で縁起の良いえびは、恵方巻きに適した食材です。蒸したり茹でたりしてから細長い形状に整え、ご飯と海苔で巻き込みます。
◆アナゴ、ウナギ
アナゴやウナギも、細長い形状から長寿の意味がある食べ物とされています。甘いたれで煮込んだり焼いたりして、恵方巻きの具材に使うことが多いです。
また、ウナギは「うなぎのぼり(うなぎ上り、鰻登り)」という言葉があります。数値や評価などが勢いよく上昇する様子を示すので、景気上昇や出世につながる縁起の良い言葉です。そのため、ウナギを食材として使うことで、仕事面での縁起の良さや商売繁盛の意味を込めているとも考えられます。
◆シイタケ
シイタケは、古来、神様へのお供え物として用いられてきた食材です。七福神と絡めた恵方巻きの具材として適しているといえるでしょう。
また、シイタケは形が陣笠(戦などのときに被る笠)に似ていることから、体を守ってくれる意味合いもあります。恵方巻きでは干しシイタケをしょうゆや砂糖で甘辛く煮て、細長く切って巻き込むことが一般的です。
◆キュウリ
キュウリは「9(きゅう)つの利(り)」との語呂合わせから、多くの利益をもたらす意味合いのある食材とされています。縁起の良い食べ物を集めた恵方巻きの食材としても適切です。
また、恵方巻きの具材は黄色や茶色のものが多いため、キュウリを入れることで色のバランスが取れるというメリットもあります。サクサクとした歯触りも面白く、甘辛い味に偏りがちな恵方巻きにフレッシュな風味をプラスする役割も果たしています。
◆だし巻き卵(厚焼き卵、伊達巻き)
金色に輝く卵の黄身には、豊かな財力や金運の意味を込めることがあります。だし巻き卵や厚焼き卵、伊達巻きなど、いずれも卵の黄身を活かした縁起の良い食べ物です。
地域や店舗によっても異なりますが、恵方巻きには伊達巻きが使われることが多いようです。卵とはんぺんで作るので、水っぽくならず恵方巻き全体の味を損ないません。
なお、伊達巻きの「伊達」には「豪華に見せる」や「華やか」という意味合いもあります。そのような意味のある伊達巻きは、福を呼び込む食べ物でもある恵方巻きにふさわしい食べ物ともいえそうです。
◆桜でんぶ
桜でんぶとは、白身の魚の身の部分を煎って、色紅などで色付けした食べ物です。タイを使うことが多いので「おめでたい」との語呂合わせから縁起の良い食べ物とされています。
ピンク色の食べ物が具材として入ることで、恵方巻きが華やかになる意味合いもあります。また、桜でんぶは恵方巻きだけでなく、巻きずしやちらし寿司にも用いることがあり、お寿司の定番具材のひとつともいえるでしょう。
恵方巻きの具材アレンジ例をご紹介
恵方巻きは紹介した定番の7つの具材を巻き込むことが一般的ですが、本来は特に決まりがないため、好きなようにアレンジしても問題ありません。
恵方巻きを家庭で作るときは、家族の好みに合わせてアレンジしてみてはいかがでしょうか。肉系・海鮮系・スイーツ系の3つのアレンジ例をご紹介します。ぜひ参考にして、オリジナルレシピを開発してみてください。
◆肉系アレンジ
まずは、肉をメインとしたアレンジをチェック。牛、鶏、豚それぞれのアレンジをご紹介します。
【牛肉巻き】
基本の7つの具材から、桜でんぶと伊達巻きを抜き、代わりに牛細切れを甘辛く煮込んだものを巻きます。色合いは地味ですが、ご飯との相性は抜群です。
【照り焼きチキン巻き】
照り焼きチキンを細長く切り、少し太目に切ったキュウリと伊達巻きと一緒に巻き込みます。照り焼きのたれがご飯に絡み、巻き寿司が苦手な方も美味しく食べられます。
【味噌カツ巻き】
豚ロースでとんかつを作り、甘辛い八丁味噌のたれを合わせて味噌カツに仕上げます。細長く切ってレタスと一緒に巻き込みましょう。味が濃すぎるときはスライスしたチーズも一緒に巻き込むとまろやかになります。
◆海鮮系アレンジ
恵方巻きといえば海鮮系をイメージする人も多いのではないでしょうか。定番からがっつり系まで、海鮮巻きのアレンジをチェック。
【お刺身巻き】
お刺身用のマグロやサーモンと太目に切ったキュウリを巻き込みます。しょうゆをつけながら食べると◎。
【エビマヨ巻き】
大葉の上に茹でたプリプリのエビを敷き詰め、マヨネーズをかけます。マヨ好きにはたまらない一品。
【エビフライ巻き】
エビフライとカニ蒲鉾、キュウリを巻き込みます。生魚が苦手な方や、がっつり食べたい方におすすめです。
◆スイーツ系アレンジ
最近はスイーツ専門店やコンビニなどで、変わり種のスイーツ巻きを見かけることも。おうちでも楽しめるアレンジをご紹介します。
【フルーツサンド巻き】
食パンに好みのフルーツと生クリームを巻き込みます。生クリームでしっかりとフルーツを包むと、水っぽくなりにくいです。
【ロールケーキ巻き】
ホットケーキミックスをミルクで溶いて、玉子焼き器で焼きます。生クリームと缶詰の桃やミカンを巻き込んだら完成です。
今年の恵方巻きは具材から手作りしてみよう!
恵方巻きの具材の意味を知ると、節分のイベントがより意義のあるものになりそうですね。縁起の良い食べ物をたくさん巻き込んで、オリジナルの恵方巻きを作ってみてはいかがでしょうか。
TOP画像/(c)Shutterstock.com