いらっしゃるは「入らせらる」が語源の尊敬語
いらっしゃるは「入らせらる」が語源の尊敬語です。入らせらるには「お入りになる」という意味があるため「居らっしゃる」という表記は誤りです。いらっしゃるには、行くや来る、居るなどの複数の意味があります。
辞書でも同様に解説されています。
【いらっしゃる】
「行く」「来る」「居る」の尊敬語。おいでになる。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
目上の人だけではなく、不特定多数の相手に対して使われることもあります。意味が複数あるため、使い方によっては間違った意味に伝わることもあります。注意しながら使っていきましょう。
いらっしゃるは身内には使わない
いらっしゃるは、身内に使わないようにしましょう。なぜなら尊敬語で、相手を高めて言う言葉だからです。ビジネスシーンでは、社内の人間に対していらっしゃるを使う方がいますが、これは誤りです。
お客さまから来た電話で、上司が居るか聞かれた場合は「○○は、30分後に戻って参ります」と答えるようにしましょう。
たとえ上司だったとしても、相手から見たら目上の人ではありません。謙譲語の「参ります」を使って、自分たちを相手より下の立場に見せるようにしてください。
意味別で見るいらっしゃるの使い方と例文3つ
いらっしゃるの意味は、3つありそれぞれ使い方が分かれます。
1.「居る」という意味で使うパターン
2.「来る」という意味で使うパターン
3.「行く」という意味で使うパターン
混同して使ってしまうと、自分の意図が相手に伝わらないことも。それぞれどのように使うのか把握して、適切な表現を選択できるようになりましょう。
1.「居る」という意味で使うパターン
「居る」という意味で、いらっしゃるが使えます。社内の人に対して、同じ部署の上司が居ることを伝えるときに使います。外部の人間に身内が居ることを伝える場合は、謙譲語を使うようにしてください。
相手と自分の関係性を図りながら、使っていきましょう。以下で例文を紹介します。
〈例文〉
・○○様はいらっしゃいますでしょうか?
・こちらから○○がご案内に参りますので、どうぞお席にいらっしゃってください。
2.「来る」という意味で使うパターン
「来る」という意味で、いらっしゃるは使えます。よく知っている間柄であれば、誤解を生むことは少ないかもしれません。しかし、初対面や顔見知り程度の間柄の場合は、出発地や到着先などを伝えたほうが親切です。
使う場合は、以下の例文を参考にしましょう。
〈例文〉
・会長がこちらまでいらっしゃるそうです。
・先ほど連絡があり、明日の11時にいらっしゃるとのことです。
3.「行く」という意味で使うパターン
「行く」という意味でも、いらっしゃるは使えます。行くという意味で使うときは、行き先を表す言葉を添えておきましょう。行き先を示す言葉が欠けていると、どの意味で使っているのか相手も理解しにくくなります。
以下の例文を参考に、使ってみましょう。
〈例文〉
・京都へはいつ頃いらっしゃるのですか?
・先月は海外へいらっしゃったようですね。
いらっしゃるの言い換え表現
いらっしゃるには、3つの言い換え表現があります。
・居るという意味で使う場合「おられる」
・来るという意味で使う場合「お越しになる」
・行くという意味で使う場合「行かれる」
それぞれ言い換え表現を把握しておけば、誤解が生まれそうなときに使うだけで、自分の意図を正しく伝えられます。いらっしゃるの使い分けに不安が残る方は、言い換え表現も参考にしてみましょう。
居るという意味で使う場合「おられる」
居るという意味で言い換える場合は「おられる」を使います。一般的な動詞のため、いらっしゃるよりは、丁寧でない言葉なためシーンによって使い分けましょう。また人によっては、おられるは尊敬語ではなく、謙譲語と受け取る方もいます。
相手に対して使うと、失礼に当たることもあるため、むやみに使うのは避けましょう。おられるの例文は、以下のとおりです。
〈例文〉
・課長はまだ会議室におられるのですか?
・○○先生は、4階の部屋におられます。
来るという意味で使う場合「お越しになる」
来るという意味で言い換える場合は「お越しになる」を使いましょう。お越しになるの「越す」は「お」を付けることで、敬語として使えるようになります。
いらっしゃるは、ビジネスシーンで使われているのに対し、お越しになるはお客さま相手のより丁寧なシーンで使われます。
例文を見ながら、使い方を覚えていきましょう。
〈例文〉
・本日は天候が悪い中、お越しくださいましてありがとうございます。
・現在キャンペーンを開催しておりますので、受付までぜひお越しくださいませ。
行くという意味で使う場合「行かれる」
行くという意味で言い換える場合は「行かれる」を使うのがおすすめです。行かれるは、一般動詞の「行く」に尊敬語の「れる」を使った敬語表現です。一般的に目上の方関係なく広く使われる言葉のため、いらっしゃるより丁寧さに欠ける面もあります。
年配の方の場合、おかしくなるといった意味の「いかれる」と勘違いすることもあるため、話すときには注意しましょう。以下の例文を参考にしてみてください。
〈例文〉
・次はどちらのブースに行かれますか?
・社長は明日の会合のため、大阪に行かれるようです。
正しく覚えていらっしゃるを使いこなそう!
いらっしゃるには、居るや来る、行くといった意味があります。身内に使ってしまうと、失礼に当たるため注意しましょう。また意味を混同して使ってしまうと、相手に意図が伝わらないこともあります。
行くの場合は行き先を伝えたり、来るの場合は場所を一緒に伝えたりして、誤解が生まれないように注意してください。もしも正しく伝えられるか不安な場合は、言い換え表現も活用してみましょう。
言い換えることで、認識を統一でき、意味の行き違いによるトラブルを防げます。正しく意味を理解して、使いこなせるようになりましょう。
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