「推敲」の意味や由来とは?
オフィスで資料を作成する際に、文章の「推敲」を重ねている方も多いでしょう。ところで、この「推敲」という言葉、正しい意味や使い方は知っていますか? 今回は、「推敲」の意味や由来となった故事、「校正」や「添削」など覚えておくと役立つ類語などを解説します。ビジネスシーンでも度々行われる「推敲」の意味をしっかりと押さえておきましょう。
意味
「推敲」は、「すいこう」と読みます。意味は、「詩や文章を十分に吟味して練り直すこと」です。主に、出版業界や文章を書く職業についている人の間で使われる言葉ですが、ビジネスシーンでも使われることはあります。例えば、企画書やプレゼンの内容など「どう書いたら上司やクライアントの心を掴めるだろう」と何度も文章や言い回しを書き直すことがあるでしょう。そのような修正作業も「推敲」となります。
由来
「推敲」は、中国の古い話が元となって作られた故事成語です。『唐詩紀事(とうしきじ)』という中国・唐の時代の故事を集めた書物の中に、その一節が記されています。
昔、賈島(かとう)という男が、都である長安にたどり着き、ロバに乗りながら詩を作っていました。そこで「僧は推す月下の門」という詩を思いつきますが、「推す」を「敲く」にするべきかどうか悩んでいたところ、有名な詩人韓愈(かんゆ)の行列にぶつかってしまうのです。
韓愈にどうしてぶつかってしまったのか尋ねられたため、理由を話すと、韓愈は「敲くとするのが良い」と助言しました。そして、そのまま二人は詩について論じながら一緒に歩いたとされています。このエピソードが元となり、詩や文章を考え、練り直すことを「推敲」と呼ぶようになりました。
使い方を例文でチェック!
ビジネスシーンにおいて、「推敲」とはどのように使われるのでしょうか? 「推敲する」「推敲を重ねる」など決まった言い回しをマスターしてみましょう。
1:クライアントへ送るメールは推敲する必要がある。
「推敲」は名詞ですが、「(文章を)推敲する」というように動詞として使われるのが一般的です。そのほかにも、現在進行形で「推敲している」、過去形で「推敲した」ということもできます。
2:納得がいくまで推敲を重ねたおかげで、卒業論文が高く評価された。
「推敲」は、「重ねる」という言葉とセットで使われることも。そもそも「推敲」という言葉自体に、「文章を何度も練り直す」という意味が含まれていますが、もっとたくさんの練り直しをした、または大変苦労して作り上げたということを強調したい場合に「推敲を重ねる」といいます。
3:締め切りが迫っているが、この資料にはまだ推敲の余地がある
「余地」とは、「ゆとりや余裕」のこと。今以上に文章のクオリティが上がる可能性がある場合や、もっと文章の内容を練り上げる必要があるという状況で使用されます。
類語や言い換え表現とは?
「推敲」には、似たような意味合いを持つ類語が多いため、使い分けに悩む方も多いのではないでしょうか? ここでは、文章の修正に関わる類語をピックアップし紹介します。「推敲」との意味の違いに着目しましょう。
1:校正
「校正(こうせい)」とは、「文字や文章を比べ合わせ、誤りを正すこと」。印刷物の仮刷りと原稿を照らし合わせて、誤植や体裁の誤りを直すことです。「校正」の目的はあくまでも、「誤字・脱字の修正」なので、「推敲」がもつ「文章表現をより良くしていく」作業は含まれません。また、「推敲」は、詩や小説などを書いた作家本人が行いますが、「校正」は、編集者や校閲の担当者が行う作業という点が異なります。
2:訂正
「訂正(ていせい)」とは、「文章や文字の誤りを正しく直すこと」。「校正」と同じく、「誤りを直す」作業なので、「文章を練り直す」という意味合いは含まれません。また、「校正」は出版業界などで主に使われますが、「訂正」は、「今の発言を訂正する」というようにより幅広い場面で使われる言葉です。
3:添削
「添削(てんさく)」とは、「他人の文章や答案を改め直すこと」。必要な語句を追加したり、削ったりする作業のことを指します。自分自身で文章を修正する「推敲」とは違い、他人が文章を直すことが「添削」の特徴。学校で先生が生徒の答案に赤ペンで修正を加えることなどがいい例です。そのため、自分が書いた文章に対して「添削する」という言葉は使用できません。
英語表現とは?
「文章を推敲する」とは、英語でどのように表現したらいいのでしょうか? 「推敲する」は、「elaborate」。「修正する」は「revise」が適切です。
「苦心して仕上げた」「入念な」などの意味を持つ「elaborate」は、「練り上げる」「推敲する」という意味で使うこともできますよ。「elaborate one’s style(文章を練る)」「She elaborated the plot of a paper(彼女は論文の構想を練った)」。
また、「文章を修正する」ことを強調したい場合には、「revise(修正する)」が適切です。「revise a manuscript(原稿を校訂する)」「revise and publish one’s lectures(講演に加筆して出版する)」。「revise」は、原稿・印刷物を修正する、読み返すという意味の他、「意見を変える(修正する)」という意味でも使えるため、覚えておくと役立ちますよ。「revise one’s opinion(意見を変える)」。
最後に
「推敲」とは、自ら文章を吟味して練り直すこと。もっといい表現がないか試行錯誤しながら書き直していく作業のことをいいます。出版業界で頻繁に使われる言葉ですが、ビジネスシーンにおいても、取引先に送るメールや企画書の内容を何度も練り直すなど、「推敲」する機会は意外と多いもの。上司からプレゼン資料などの出来を尋ねられた時に「もう少し推敲を重ねてみます」といえば、仕事への熱意を伝えられるでしょう。
「校正」や「訂正」などの意味も合わせて覚えて、適切な場面で正しく使い分けてみてくださいね。
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