時代の変化の壁「取り残されないよう、デジタルスキルを身につけるべき?」
→大げさに捉えすぎず、まずは気軽に触れてみる。
〝イノベーション〟という言葉は巷にあふれています。新聞や雑誌の記事や、企業の広告やWebページなどでも頻繁に目にする機会はありますよね。
みなさんは、〝イノベーション〟という言葉をどのように捉えていますか?
多くの人は「技術革新」「大変革」といった、とかく大きな変化であると捉える傾向があるように思います。そうなると、つい記事の見出しや会社のスローガンを、どこか遠くにある自分とは関係ないことのように解釈してしまいがちです。
私もそう思っていました。〝イノベーション〟というのは遠い話で、それゆえ企業スローガンというのは、お題目を唱えるだけのものだと。
当時所属したIBMにも全従業員に求める会社のバリュー(価値観)として、〝イノベーション〟という言葉が先頭に来ていました当時の私はかなり真剣にこの〝イノベーション〟という言葉について考えつづけました。全従業員が大変革を起こせる、なんて本当に思っているのだろうか? と。
そしてある時、アメリカ人で権威ある大学の日本語研究者の知人に尋ねたところ、イノベーションという英語には、「工夫」という日本語がしっくりくる、というコメントをもらったことがあります。
そのとき、私は非常に腹落ちしたのを覚えています。イノベーションという言葉を、より広く定義すれば自分ごととして捉えることもできるわけです。
この〝イノベーション〟という言葉の捉え方と同じように、AIとかDX、クラウドだの5Gだのという、新しい技術やキーワードに対してあまり大げさに捉えすぎないことを私はおすすめします。大げさに捉えすぎないことで、むしろ気軽に近づき、概要を知ることに務めるのです。
そうすることで、「ああ、自分は流行りの技術についていけていない」「将来、生き残れないのではないか」と考えて悩んだり焦ったりしなくて済むようになります。
そしてまずは、概要を把握し、自分の言葉で要約できるようになるのです。
例えば、「すなわちこういうことである」「背景はこうである」「自分たちのビジネスへの影響はこんな感じである」という程度に自分なりにまとめればいいのです。もしその結果、もっと知りたい、もっとのめり込みたいと感じたのであれば、そのまま学び続けて、その道のエキスパートに近づいていけばいいわけです。
もちろん、その領域で第一人者になろうとか、技術者としてそのものをビジネスや研究のテーマにしようと考えているのであれば、初めから深く学ぶことを前提に関わっていくべきでしょう。
しかし、別の領域の専門家であるならば、そちらで勝負すればよく、あえてバズワードに敏感になりすぎる必要はまったくないわけです。
私は現在、「先端技術を、経済実装する。」を会社のミッションとするアイデミーにいます。当社では、AI・DXにかかわるeLearningを提供していますが、そこで学ばれているコンテンツは、技術を極めるためのものもさることながら、意外や意外、初学者向けの「入門」「概論」といった内容のものが最も重宝されています。
これも、先述の考え方の確からしさを表す、ひとつの証左なのではないでしょうか。
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著者 河野英太郎
1973年岐阜県生まれ。株式会社アイデミー取締役執行役員COO
株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。
東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。
電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までの間、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員COOを務める。
著書に『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』『99%の人がしていないたった1%のメンタルのコツ』(以上、ディスカヴァー)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『VUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)、『現代語訳 学問のすすめ』(SBクリエイティブ)などがある。