スキルの壁「夢中になれることがない」
→夢中になれることがなくても、探し続けることに価値がある
4月から新しい仕事を始める人や新入社員を迎える会社員の方も多いと思います。仕事をしていると、さまざまな「壁」にぶつかり、その都度悩んでしまうことがあります。そんな「壁」を一つひとつピックアップして、乗り越え方のコツを提案します。
今回は、「夢中になれることがない」という壁。
仮に、大きな仕事はキャリアに一度あればいいとしても、それ以前に今、夢中になれる仕事に出会えていない、今の仕事に没頭できない。だからまだスタートラインにすら立てていないんだ、なんて自分を卑下したりしていませんか?
もし、あなたが今、目の前の仕事に夢中になれているのであれば、すでに大きな仕事を行うための道を進んでいる状態です。そうであれば大変幸せなことだと思います。できればそうありたい。
ただ、たとえ今夢中になれるものがないとしても、それだけで自分を卑下する必要は一切ありません。夢中になれるものを探し続けることだって、十分に大きな仕事につながる必要条件なのです。
ここで一番しちゃいけないのは、「どうせ自分には大きな仕事はできない」とか「やりたい気持ちはあるんだけど、どうしても踏み出せない」と、ファイティングポーズを下ろしてしまうことです。
かく言う私も、30歳を過ぎる頃まで、自分が没頭できたのはスポーツ(競泳)だけでした。あえていえば17歳から18歳の一時期、受験勉強には自分の意思で没頭しました。つまり、「その程度」です。
社会人になって仕事を始めても、どうしてものめりこめず、常に違和感がある状態が続きました。ため息をつきながら「つまんねぇ」が口癖。堀江貴文さんは著書の中で「没頭すること」は仕事をする上で重要なこと、と言っています。私も大賛成です。ただ、頭ではわかっていても、仕事の中ではどうしても「あの頃」のような没入感が味わえない。
人生30年の中でたった2回しか没頭体験がないのです。たった15年に1回平均ですよ……。没入どころか、短時間の集中すらできない状態。「もう自分は社会人に向いていないのではないか」と思ったこともありました。
このような悩みを抱えている人、多いのではないでしょうか。
でも心配しないでください。何かのきっかけで没入経験は始まります。
私の経験を例に出しますと、32歳を過ぎた頃から少しずつ、そして最終的には毎年のように没入経験がやってくるようになりました。きっかけは長女の誕生です。この子が大きくなっても「つまんねぇ」と言い続ける姿を見せたいか…… 自問自答するなか、ある日突然、自分の仕事が「今の社会」「将来の社会」とつながり、自分の中で意義を持ちはじめたのです。
没入経験が常態化すると、仕事が面白くなり、次々とチャンスが訪れるようになります。この頃から正の連鎖が始まりました。気がつくと、かつて真剣に悩んでいた理由がわからなくなるような状態。没入できなさそうな仕事を見極め、それを回避することもできるようにまでなります。
すなわち、「大きな仕事」への道を進み始めた、ということなのです。
自身のライフステージの変化や人との出会いなど、一見仕事のキャリアとは無関係とも思えることが機会になります。この「機会」を確実に捉える方法は、地味ですが「探し続ける」ことだと思うのです。
没入経験を探し続けること、それは未来の大きな仕事への必要条件です。
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著者 河野英太郎
1973年岐阜県生まれ。株式会社アイデミー取締役執行役員COO
株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。
東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。
電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までの間、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員COOを務める。
著書に『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていないたった1%のリーダーのコツ』『99%の人がしていないたった1%のメンタルのコツ』(以上、ディスカヴァー)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『VUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)、『現代語訳 学問のすすめ』(SBクリエイティブ)などがある。