迎えた採卵当日。病院で知った驚きやリスクについて【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、採卵前最後にブレセリンを点鼻した時の話をお届けしました。今回は、採卵当日の話。
一睡もできないままやってきた朝
緊張と不安のあまりまったく眠れなかった私と、家事に仕事に全力を尽くして爆睡だった夫。ついに体外受精の採卵当日を迎えました。
私の通っていた総合病院での採卵は、健康診断のように、前日の夜21時以降の食事がNG、当日は7時以降の飲み物NG。
夫「おはよう。ほらほら、お水飲んどきなよ。しばらく飲めないんだからさ」
夫はわざわざ7時にアラームをセットしていて、ペットボトルのお水を持ってきてくれました。
私「え? ありがとう。すごい気が利くね」
夫「僕が(精索静脈瘤の)手術したとき、朝、水を飲みそびれちゃって、結局、術後まで何も飲めなかったのが、けっこう辛かったからさ…」
私「あぁ、そういえばあの日ずっと『喉乾いた』って言ってたね」
健康診断と一緒のコンディションと思っていましたが、確かに術後まで何も飲めないとなるとけっこうキツイですよね。先に不妊治療の手術を経験した夫ならではの優しさ。
夜じゅうモヤモヤ寝ずに考え事ばかりしてしまったけれど、この時、改めて二人でがんばるんだ! と勇気が湧いてきました。
体外受精の採卵日の朝。病院で一番びっくりしたコト
病院には8時30分に来るよう指定されていて、私たちは10分前に到着。診察券を受付に出すと、なんとすぐに「奥様はエコーするので、検査室へ。ご主人は採精室へお願いします」と案内されました。
コロナの影響で患者が減ったとはいえ、この病院に転院してきてから、待ち時間ゼロで案内されたのは初めてのこと。待合室には「治療の内容で呼ばれる順番が前後します」と書かれていたのですが、採卵の人が優先度一番高かったのか! と、この時、初めて知りました。
へぇ~! と思いながら、私はひとりで検査室へ向かっていると、奥から不妊カウンセリングのときにお世話になった看護師のKさんが小走り気味にやってきました。
看護師「あ~クロサワさん、今日採卵だよね。よかった~、今日ね、私が担当なの」
私「あ、ホントですか~! こちらこそよろしくお願いします」
顔見知りの看護師のKさんが担当で、すぐに声をかけてくださって、私は少し泣きそうなくらいホッとしました。私の方が「よかった!」と思いました。それだけいろいろ気持ちが張り詰めていたのだと思います。
そのまま一緒に検査室まで歩いているときKさんが「排卵してなさそう?」と聞いてきました。
私はといえば「時期的に明日くらいじゃないですかね。それよりも卵子がたくさん育っていればいいなって、もうそればかり考えちゃって、ぜんぜん眠れなくって…」そんな話をしながら、神に祈るような気持ちでいっぱいでした。
看護師「じゃあ、私、検査室のドアの横にいるから。排卵していないといいね。終わったらすぐお部屋に案内できるので」
私「わかりました。ではのちほど」
いつもは診察室の内診台でするエコーですが、この日は先に検査室でエコーすることになっていました。カーテンで仕切られていて、モニターだけが少し見える薄暗い検査室。私の卵子はいかに…。
「じゃあ機械が入りますね~」と医師の声がすると、そこに映ったのは一昨日の検査の時よりもさらに大きく育った卵胞たちでした。
医師が右に大が3個、中が2個、小が3個… という感じでサイズを測りながら記録を付けている音が聞こえました。
大きいものはもう25mm近いものもあって、やるだけのことはもうやりきったし、あとはこの卵ちゃんたちが全部針に吸い付いてくれればいいなと思いながら、モニターを見つめていました。
ここでは検査だけだったので、詳しいことは何も聞かされないまま、エコーが終わったらすぐに検査室を出ました。廊下にはすでに精子の提出を終えた夫と看護師のKさんが待っていて、Kさんが私にかけよってきました。
看護師「クロサワさん、排卵はしてなかった?」
私「へ?! あ、えっと、卵子はちゃんと育っていたっぽいですよ。何も説明されなかったんでよくわからないんですけれど…」
看護師「あ~それならよかった」
私「もし排卵していたら、どうなるんですか?」
看護師「採卵中止」
私「えぇぇ!!」
そんなことってあるんかーい!! の瞬間です。ここで私はようやくKさんが朝から「排卵してないといいな」とブツブツ呟いていた意味を理解しました。あんなに自己注射して、鼻からも謎の薬をいれて、緊張MAXの当日に採卵キャンセルとか言い渡されたら最悪。
ただ、排卵ばかりは自分でがんばってコントロールできるようなものではないし、しょうがないんですけれどねぇ。患者側としてはそんな事態になったら衝撃が大きすぎません?!
この時、不妊治療って患者がものすごいリスクを背負っていることを、身をもって実感しました。
コロナ禍で体外受精をするというリスク
これはあとから知ったことなのですが、新型コロナが蔓延しはじめた2020年当時、採卵当日に医師が新型コロナに感染したり、濃厚接触者になってしまい、いきなり不妊治療のスケジュールがくるってしまったというケースが実際に発生していたようです。
不妊専用クリニックで医師がひとりしかいなかったり、バックアップ体制が十分でなかったりする場合、患者側の治療予定が崩れてしまうのは、すごいリスクだと思いました。
負担の大きい注射や薬の治療をするときには、このあたりの医療機関の事情も先に調べておく方が賢明ですね。
というわけで、土壇場で急に更なる重圧が肩にのしかかったような心境で、採卵する人用のお部屋に案内されました。夫が入院したときよりも少し狭くてベッドも簡易的なものですが、お天気も良かったせいかポカポカと陽があたって、とても心地いい感じがしました。
次回は採卵施術前の夫と話したことをお届けします。
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クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。