「子宮頸がんワクチン」なぜがんを予防できるの?
ヒトパピローマウイルス(以下HPV)が、子宮頸がんの発症に深く関わっていることが知られるようになり、そのHPV感染を予防するワクチンが「子宮頸がんワクチン」として接種されています。
それでは、「がんをワクチンで予防できる」とは、どのようなことなのでしょうか。
最近では新型コロナワクチンが取り沙汰されているように、本来ワクチンは「ウイルス感染を予防するもの」で、がんを予防するものではありません。
ヒトの遺伝子には「がん抑制遺伝子」という発癌を抑える部分が存在し、細胞や組織が悪性変化することを常に抑えています。HPVが子宮頸がんを引き起こすメカニズムとして、この「がん抑制遺伝子」の働きを抑制することが分かっています。がんを抑えている遺伝子の働きを抑えてしまう、つまり「がんになりやすくする」というのがHPVの子宮頸がんを引き起こす理由なのです。
子宮頸がんワクチンの効果
子宮頸がんワクチンが世の中に発表された時、「がんを予防できる唯一のワクチン」として話題になりました(ウィルス性B型肝炎が原因で肝臓がんを発症することを考えると、B型肝炎ワクチンもがんを予防できるワクチンともいえます)。しかし、その後、ワクチンの副作用が懸念されるようになり、積極的な接種は推奨されない期間が続きました。それでも最近では、若い女性の子宮頸がんやその前癌病変の発症が増える中で、あらためてワクチンの効果が見直されてきています。
子宮頸がんワクチンの推奨年齢は、11~14歳とされています。これには、HPVに感染する可能性がある性交渉を行なう前にワクチンをうっておこうという意図があります。しかし、これは全体を見ての方針であって、個人個人の事情は異なりますので、一概にはいえないところではあります。
ウイルスに罹患後にはワクチンは効果がないということもありますが、HPVには様々な型があり、ワクチンも種類によって複数の型に対して効果があります。15歳以上、20代、30代、それ以上の年代であっても、その時点で高リスクなHPVに感染していなければ、その効果を得ることができます。
ワクチンの副作用を懸念したり、健康な時に薬剤を体に投与することにためらいを感じたりする方もいらっしゃるかと思います。ただ子宮は赤ちゃんを産むためにとても大切な臓器です。妊娠や出産を終える年代までは、病気にかからないようにそれを守る方法のひとつとして、子宮頸がんワクチンを検討し、定期的な子宮がん検診を受けて、将来の妊娠のことも意識に置いておくことが大切なことだと思います。
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麻布モンテアールレディースクリニック・院長 山中智哉
日本産科婦人科学会/日本生殖医学会/日本卵子学会所属
不妊治療のクリニックとして、体外受精や高度な技術が求められる治療にも幅広く対応している。いずれは不妊治療だけではなく、アンチエイジングや健康医療を軸にした分野にも着手し、様々な側面でお悩みを抱える多くの女性のトータルケアを促進できるようなクリニック、夫婦にとって信頼できるクリニックを目指している。