【目次】
・「思い出補正」の意味とは?
・「思い出補正」の注意点は?
・どうして「思い出補正」をするの?
・「思い出補正」をしやすい人の特徴は?
・「思い出補正」の類語・言い換え表現
・最後に
旧友と話しているときや、部屋の整理でアルバムを見つけたときなど、「あの頃は楽しかったな…」なんて思ったりすることがありますよね。
過去の出来事に思いを馳せることは誰にでもあることです。しかし、「その思い出は過大評価で、実は大したことない思い出だった」、なんてことも…。
こういった現象のことを、ネットでは「思い出補正」と表現します。「思い出補正」はどうして起こるのか、そして、時に危険な場合もある「思い出補正」とは一体どういうものなのか、チェックしてみましょう。
「思い出補正」の意味とは?
初めに、「思い出補正」の意味や使い方について確認です。
「思い出補正」の意味
「思い出補正」は先述の通り、ネット上で使われる「ネットスラング」のひとつ。ネット掲示板の『2ちゃんねる』で生まれた言葉です。
本来は、子供のころに見た映画やアニメ・ゲームなどの内容を、「楽しかった」という当時の印象込みで思い出すことで、実際より面白く感じることを指しています。これが、作品以外にも恋愛や旅行など、個人の出来事に対して使われるようになりました。
「思い出補正」の使い方
「思い出補正」は、特に理由などを語らず、「昔は良かった」のような発言をしている人に対し、突っ込みをいれるときなどに使います。他にも、自分が「思い出補正」をしていると自覚しながら、昔の作品・出来事を語るときにも使うことができますよ。
下記の例を参考に、ぜひ、使ってみてくださいね。
「今の彼氏は優しいんだけど、ちょっと優柔不断なんだよね。昔付き合っていた人はそんな不満なかったのにな」「それは思い出補正だと思うよ。昔の彼氏のときにも同じこと言ってたし」
「思い出補正」は海外では伝わらない?
「思い出補正」は、先述の通りネットで生まれた言葉です。そのため海外には、「思い出補正」のような言葉は存在しません。「思い出補正」に近い表現であれば、「Memory Glorification」や「Nostalgia Glasses」という言い回しが挙げられます。
「思い出補正」の注意点は?
「昔の出来事を、良い思い出として覚えている」と聞けば、「思い出補正」は良い現象のように思えるかもしれません。しかし「思い出補正」は、時に自分の障害になることもあり得ます。一体、「思い出補正」のどのような点に注意をする必要があるのでしょうか?
1:過去に縛られてしまう
特に「思い出補正」が強い人というのは、その分、過去の自分に縛られやすいという傾向にあります。「以前はこれだけできていたんだから、今はそれ以上にできなければならない」と、常に過去以上の結果を求める完璧主義にもなりがちです。
2:自分の価値観を相手に押し付けてしまう
特に年を取ってから注意したいのが、この価値観の押し付け。嫌な上司のひとつでよく挙げられる、過去の経験を自慢げに語ってくる人は、まさにこの「思い出補正」がかかっている可能性が高いです。
悪い場合は「昔の方が良い」と、最近の作品だけでなく、相手の人間性自体を否定してくる場合もあります。このような人間にならないためにも、「思い出補正」した話は、相手に押し付けないように注意しましょう。
3:「思い出補正」がかかった人に騙されやすい
特に恋愛に関して、「思い出補正」がかかっている場合に起こりやすいです。「思い出補正」がかかった相手と再会したとき、もし相手が良からぬ考えを持っていたとしても、そういった悪意を見抜けなくなってしまいます。
過去の思い出を美化するのは良いことですが、もし「おかしいな」と感じた場合は、友人など客観的な視点で考えてくれる相手に相談するのも大切です。
どうして「思い出補正」をするの?
しているつもりはなくても、無意識にしている「思い出補正」。どうして「思い出補正」は起こってしまうのでしょうか?
1:人間の本能で、悪い印象は記憶に残りにくい
元々、人の脳は自分に都合よくできており、嫌な気持ちや辛かった思い出は、極力思い出さないようになっています。そのため、ひとつの出来事に対して良い印象と悪い印象の両方を抱いていたとしても、良い印象の方ばかりを思い出すため、「思い出補正」が起こりますよ。
2:過去の自分を肯定するため
誰だって、自分の生き様を否定したいとは思いませんよね。これが、「思い出補正」の原因のひとつになります。
「今の時代の作品や出来事を褒めてしまうと、まるで過去の作品や出来事・自分は良くなかったのでは」という感情が働くため、思い出を美化することで過去の自分を肯定しているのです。
3:現実逃避をしたいから
現状に不満を抱いている人も、「思い出補正」をしやすい傾向にあります。元々、「思い出補正」が強い人の中には完璧主義な人もいて、自分のプライドを大事にしている人も多いです。
そのため、「現状は良くないが、過去にこんな素晴らしい功績を残している」と、「思い出補正」することで自分のプライドを守っています。「思い出補正」は一種の現実逃避ではあるものの、結果的に自分を肯定するために必要な場合もありますよ。
「思い出補正」をしやすい人の特徴は?
「思い出補正」をしやすい人は、理由はどうあれ「過去を引きずっている」という共通点がありますよ。恋愛であれば、「自分が愛した人が、悪い人だったはずがない」という心理。「過去にこんなことができたんだから、自分はダメな人間じゃない」といった現実逃避から「思い出補正」をします。
このように昔にすがることで、「自分の良さ」や「自分そのもの」を取り戻したがるという特徴がありますよ。
「思い出補正」の類語・言い換え表現
最後に、「思い出補正」の類語や言い換え表現には何があるのかチェックしておきましょう。
1:懐古厨(かいこちゅう)
こちらは「思い出補正」と同様に、ネットから生まれた言葉です。この「懐古厨」は、「昔は良かった」といった発言を繰り返し、最近の作品や出来事を否定したがる人のことを指します。
2:ノスタルジア
「ノスタルジア」は、遠く離れた物事や過去の出来事に対して抱く、「懐かしい」「あこがれる」といった気持ちのことです。「ノスタルジー」と表現することもありますよ。
この「ノスタルジア」は、「良い印象を持つ思い出」に対して使われるため、「思い出補正」に近い言葉と言えます。
3:記憶の変容
「記憶の変容」は、心理学用語のひとつです。聞きなれない言葉や見慣れない光景を見慣れたものに置き換える「標準化」、特定部分を強調してしまう「強調化」、本来関係のない記憶を無意識にひとまとめにしてしまう「水準化」の3つのことを指します。
最後に
「思い出補正」は、誰もが経験したことがある現象です。時には過去に思いを馳せることも良いですが、「思い出補正」をしすぎると現実がおろそかになってしまうこともあります。都合の良い過去を思い出したときは、「思い出補正をしているかもしれない」と考えるようにするといいかもしれませんね。
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