【目次】
・「知行合一」の読み方・意味・由来とは?
・「知行合一」の使い方を例文でチェック
・「知行合一」の類語にはどのようなものがある?
・英語で「知行合一」を表現するには?
・最後に
「知行合一」という言葉をご存知ですか? 日常会話であまり使うことのない言葉ですが、もしかしたら誰かの座右の銘として聞いたことがあるかもしれませんね。本記事では、「知行合一」とはどんな意味の言葉なのか、言葉の由来、使い方や類語を解説していきます。
「知行合一」の読み方・意味・由来とは?
「聞いたことはあるけれど、意味はよく知らない…」という方も、少なくないのではないでしょうか。意味を知らずに使うと「恥をかいてしまう…」なんてこともあるかもしれません。まず、読み方や意味・由来からご説明いたします。
「知行合一」の読み方
「知行合一」は、「ちこうごういつ」と読みます。「ちぎょう」と読むと、「職務を執行すること」など別の意味の言葉になるのでご注意ください。
「知行合一」の意味
「知行」とは「知ることと行うこと」「知識と行為」。「合一」とは「二つ以上のものが合わさって、一つになること」という意味を持ちます。「知行合一」の意味は、「知識」と「行い」は一体であり、本当の「知る」とは、「実行」が伴わなければならないということ。つまり「知識だけがあっても、実践したことがなければ知らないことと同じ。行動が伴ってはじめて、その知識は完成される」という意味の四字熟語です。
例えば、ある花を見て「私の好きな花だ」と思うのは、その花を認識しているからです。花自体を、または、花の種類を知らなければ好きかどうかも分からないですよね。これが、知識と行動は表裏一体であるということです。
「知行合一」の由来
中国が明の時代、儒教の一派である「陽明学」の命題の一つ。当時、朱子学が「知先後行論(知識が先行し、行うことはその後)」という説を唱えていました。そのことによって、実践が伴わない知識が世の学問の中に横行します。「陽明学」をおこした王陽明は、それを批判。そして、「先知後行論」に対して主張したものが「知行合一」です。王陽明の弟子たちが、まとめ書き上げた、「陽明学」の入門書『伝習録』にも掲載されています。
「知行合一」の使い方を例文でチェック
「知行合一」の意味はお分かりいただけたでしょうか? では、次に実際どのようにして使うのか例文でみていきましょう。
1:「社長は、知行合一でいらっしゃいますね」
「知行合一」は、人を形容する言葉にも使われます。この場合は、相手(社長)に対して「知識も行動力も兼ね備えていらっしゃいますね」と褒め称えていますよ。
2:「我が社の行動指針は、知行合一である」
「行動指針」とは、「どのように考え、どのように行動するのか基本となる方針」(小学館『デジタル大辞泉』より)。社員に対して「知識を得たら実行しなさい」ということを伝えています。
3:「それは机上の空論にすぎない。知行合一であるべきです」
「机上の空論」とは「頭の中だけで考えた、使いものにならない計画や案」のこと。「頭でばかり考えていないで、実践していきましょう」ということを言いたいに時に使うフレーズ。企業の理念や行動指針に「知行合一」が使われる際は、「実践・行動力」を促す意味で使われることが多いですね。
「知行合一」の類語にはどのようなものがある?
1:知行一致
「知行一致(ちこういっち)」とは、「知識と行為に食い違いがないこと」「知っていて実行が伴うこと」を表した四字熟語。スピーチや学校理念にも使われる言葉です。
(例)我が校の理念は「知行一致」です。学習したことを実践できる人材の育成に重きをおきます。
2:口八丁手八丁
「口八丁手八丁(くちはっちょうてはっちょう)」とは、「しゃべることも、やることも達者なこと。また、そのさま」(小学館『デジタル大辞泉』より)。しゃべることを「知」、やることを「行」とすると、「知行合一」の類語表現だといえます。「口八丁手八丁」は、悪口や皮肉といったネガティブな言葉に思われがちですが、本来は褒め言葉なのです。
(例)彼女は口八丁手八丁なので、このプロジェクトに適任だろう。
対義語は「先知後行」
「先知行後(せんちこうこう)」とは、儒教の一派、朱子学が説いたもの。「知識」と「行動」での比重は行動の方にあるけれど、順番からすると「知識」の方が先にあり、「行動」はその後にある。「知識」と「行動」は分けて考えることができないと説いた「知行合一」に対して、「先知行後」は「知識」と「行動」を分けた考えになります。
「知行合一」と「言行一致」との違い
「知行合一」と似た言葉で、「言行一致(げんこう いっち)」という四字熟語がありますよね。一見、似ているようにも思えますが、違う意味を持ちます。
「言行一致」とは、「発言したことと、行動が同じであること。または、同じになること」をいう言葉。「知行合一」は「知識」と「行動」、「言行一致」は「発言」と「行動」が同じという意味の違いがあります。
英語で「知行合一」を表現するには?
「知行合一」を海外の方に説明したい時、どのように表現することができるのかをご紹介します。「意識、知ること」を意味する「awareness」、「実践」「実行」という意味の「practice」を使って表現することができますよ。
「Awareness comes only through practice」(知識は実践によってだけもたらされる)
最後に
幕末の志士たちに影響を与えた吉田松陰は、「陽明学」に影響を受けた一人。「知行合一」の言葉は、吉田松陰が主宰していた「松下村塾」の掛け軸に書かれていたことから、世に広く知られるようになりました。
目上の方や取引先の方から、「知行合一」という言葉が出てきたら、「吉田松陰」や「松下村塾」というワードを出されてみてはいかがでしょうか。会話の幅が広がったり、良いコミュニケーションが取れるかもしれませんよ。
幕末の志士から、大手企業の経営者や社長までもが、座右の銘にあげる言葉「知行合一」のご紹介でした。
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