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2021.03.02

医療現場の常識が変わってきている? 安静・傷・水分補給etc.【国立がん研究センター医師コラム】

時代が移り、医療現場の常識が変わってきています。今回は、そんな常識が変わったものを5つ紹介します。国立がん研究センター研究所でがん幹細胞研究分野分野長をつとめる増富先生の健康コラム。

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉

医療現場の「昔の常識、今の非常識」2021

今の若い人の世代には「常識」でも世代が違えば随分と認識が異なることは多くありますが、医療現場でも、「えええーーっ」と驚くような「常識」の変遷というものが数多くあります。

今日は、「昔の常識、今の非常識:医療編」を小ネタ集的に書いて見ようと思います。

面会謝絶

(c)Shutterstock.com

昔の「刑事ドラマ」で、拳銃で撃たれた患者を手術した後のシーンには必ず、「面会謝絶」という四字熟語が部屋に掲げられていました。意識の全くない患者が、人工呼吸器もつけずに、しかも何故か頭に包帯を巻いて、すやすや眠る、「不思議な光景」ですが常識的なシーンでした。

今は、患者さんが家族といる時間は色々な側面から重要という観点から、「面会謝絶」という概念はほぼ存在しません。どんなに重症でも基本的には「面会」は推奨されています。

絶対安静

(c)Shutterstock.com

「面会謝絶」に並ぶ有名な四字熟語に、「絶対安静」という言葉がありました。

昔は、大手術をした後には必ず、「絶対安静」と言われましたが、いまは、逆に、大手術の後でもできるだけ早く動きなさいという考えに変わってきています。

寝ていることで筋肉がどんどん衰えていくデメリットの方が大きいので、できるだけ早く起き上がってどんどん動くほうがイイですよと言う考え方です。「早期離床」という考え方が今は常識です。そして、筋肉ってやっぱり大切なんですね。

水分補給

昭和の時代は、運動選手はみな「水分補給」に関して、罪悪感を持っていました。

コーチや監督の許可なく「水分補給」すると罰則でグラウンド10周みたいな意味不明の行動が「常識」でした。

現在は、スポーツ医学の観点からも水分補給を促さない指導者は認められない時代になりました。

キズパワーパッド™革命

(c)Shutterstock.com

昔は、転んで膝や肘に擦り傷をすると、お風呂に入るごとの絆創膏の張り替えは、最悪の苦行でした。

絆創膏を外す際の痛み、お風呂につかるときの痛み、お風呂から上がって消毒するときの痛み。毎日のこの苦しみを1週間ほど続けなければ、「キズが膿み大変なことになる」ので「キズはジュクジュクさせずに、カラットさせておく」というのが常識でした。

背景は、酸素を嫌う細菌(多くの場合、破傷風菌)を想定しての対応だったのですが、今は破傷風に対する予防注射もうけていますのであまりこんな事は心配する必要なくなりました。

そして、「傷」に対する治療法も研究が進み、キズパワーパッド™で水分を含み、ジュクジュクさせてそのまま放置しておく方が痛みもなく治りも早いという事が解りました。あの苦行を体験しなくてもいい今の子ども達は幸せ者です。

新型コロナウイルス

(c)Shutterstock.com

この1年で、これまでの常識が随分と変わりました。書く必要はないでしょう。

新型コロナウイルス感染で、この1年で大きく変わった「常識」はさておき、最近、少し変じゃない? と思うことがあります。

◆1. 2021年2月22日各紙報道

「死亡数11年ぶり減少――コロナの影響か?」

◆2. 医療機関の貼り紙

「発熱、鼻水、咳、など体調不良の方は当院には入れません」

「常識」の変遷が正しく行われることは重要ですが、本末転倒につながっていくのは良くないと思いませんか。時代に合った正しい常識で健康を維持したいですね。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

国立がん研究センター研究所 がん幹細胞研究分野分野長 増富健吉

1995年 金沢大学医学部卒業、2000年 医学博士。
2001年-2007年 ハーバード大学医学部Dana-Farber癌研究所。2007年より現職。
専門は、分子腫瘍学、RNA生物学および内科学。がん細胞の増殖と、コロナウイルスを含むRNAウイルスの増殖に共通の仕組みがあることを突き止めており、双方に効く治療薬の開発が可能かもしれないと考えている。
専門分野:分子腫瘍学、RNAウイルス学、RNAの生化学、内科学。
趣味:筋トレ

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