夫の強いまなざしを見て、私も覚悟が決まった【30代からの不妊治療】
妊活を始めて3年。現在34歳の私の体験から、妊娠を考えているカップルにとって少しでも役に立つような情報をレポート形式でお届けします。
前回は、手術の準備を終えた夫を手術室まで見送った時のお話をお届けしました。今回は、夫を手術室へ送った後起きた私の心境の変化のお話。
夫を手術へ見送った後、私の視界は…
2018年の冬、夫が男性不妊の原因のひとつと言われている精索静脈瘤の手術を受けた当日のお話です。
夫を手術室まで見送り終えた直後のことでした。私の目の前の景色がいきなりモノクロになりました。こんな風に書くと、素敵な映画のワンシーンのようですが、これはそんなにカッコイイ比喩じゃなくって、マジで。
私「…!(あれ、おかしい)」
声がでないまま、目の前の白黒の景色は、テレビの砂嵐に変わってザーっと消えていきました。そのとき耳元で、あの看護師さんの声が…。
看護師「奥様! 奥様!」
なんと、私はこのタイミングで貧血を起こしてしまったのです。
理想と現実のギャップ。どこまでも情けない私…
その場に倒れたのか、うずくまったのか、よくわかりませんでしたが、グッと目に力を入れてパチパチまばたきをして、視界が戻ったときには、私は手術室の前の床に両手をつく格好で座り込んでいました。気持ち悪い。おでこから、冷や汗がポタっと床に落ちました。
私「すみません…。すみません…」
これはただの貧血だとヨロめきながら看護師さんに伝えたのですが、看護師さんからは、あの軽やかな雰囲気がすっかり消えていました。そして険しい表情で
看護師「ご主人の手術が終わるまで、お部屋のベッドで休みましょう」
私「いや、そういうわけには…」
この期に及んで何を強がっているのかという感じですが、病室で夫の戻りを凛々しく待つつもりだった私は、謎の抵抗…! まったく情けなかったです。しかし、同時に襲ってきたひどい頭痛でなかなか立ち上がることすらままなりません。気分は最悪。
看護師「ご主人が手術からお戻りになる前に、一度シーツやカバーなど全部取り換えるので、ベッド使っていただいて問題ありませんから。お部屋へ戻って、横になりましょう。奥様、顔色も悪いですし。ね。そうしましょう」
このようなわけで、私は看護師さんに肩を支えられながら病室へ戻り、夫よりも先にベッドで眠りにつくことになったのでした…。
手術の前は「夫のご両親にもきてもらったほうがよかったかなぁ」と思ったりもしていましたが、この失態を見られずに済んでよかったかも…と、病院の天井を見つめながらひとり静かに瞼を閉じました。
病室で目が覚めたら、急に寂しくなった
目が覚めると、時刻は15時を回っていました。夫の手術は3~4時間。13時開始だから、まだあと1時間以上かかるのか…。
静かすぎるひとりぼっちの病室。私はこれまでの人生、幸いなことに入院経験はないものの、病院のベッドの上って、こんなに寂しいんだなぁと思いがけない経験にしんみりしてしまいました。
ゆっくり起き上がり、冷蔵庫にいれておいたお茶を飲んでみると、少し頭がスッキリしました。気分の悪さはだいぶ回復したものの、食欲はわかず。暇つぶしにと持ってきたノートパソコンも開く気にもなれず。
窓の外の、小春日和の空をぼんやり眺めました。とにかく、無事に手術が終わればいい。早く、時間が過ぎないかな。
子どもを授かるために! 私も覚悟が決まった
外の景色を見ながら思い出すのは、手術室へ向かう直前の夫の様子。強いまなざしで手術室へ入っていったときの横顔が目に焼き付いていました。
「痛いのはイヤだ!」とか「薬が怖い!」とか、私が今まで連発してきた言葉を、アナタが発することは最後までなかったね。純粋に「子どもがほしい」という意識が、私よりずっとずっと強かったのかも…。
漠然とした恐怖心を抱えて、不妊治療に対しどこか二の足を踏んでいたままだった私は、この時ようやく夫との妊活の温度感に、大きな差があったことに気がつきました。
私も検査を進めよう。できることは全部やろう。アナタとの子どもがほしいから。夫が手術から戻ってきたら、この決意を一番に伝えるんだ!
次回は、医師から受けた手術結果の説明や麻酔から覚めるまでの夫の様子などをお話したいと思います。
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クロサワキコ
34歳・主婦ライター。妊活歴3年目。男性不妊の治療や人工授精に体外受精、ステップアップを重ねていくなかで感じた不妊治療のリアルな本音を発信しています。