口腔ケアで病気予防!「口活」のススメ
少し前に脳と腸が繋がっているという「脳腸連関」のお話を書きました。人間の体は、私達の意識していない所で意外な繋がりがあるんです。
今日は、「歯」の話の第二回で「歯と全身の健康」の繋がり、そして、歯と歯ぐきのケアは、新型コロナ感染予防にも効果的という話を、日坂会の伊勢海先生に聞きました。
歯周病が引き起こす、さまざまな全身疾患
増富:歯周病の話の続きになりますが、歯周病は多くの全身疾患との関連があるといわれてますね?
伊勢海先生:はい、糖尿病・心臓病・誤嚥性肺炎など、歯周病が影響する病気があります。特に糖尿病との関連性は非常に強く、しっかり歯周病を治すことが重要です。
増富:口腔内の清潔は高齢者の肺炎予防にも非常に大切だといわれています。
伊勢海先生:はい、非常に大切です。そもそも肺炎は、日本人の死亡原因第3位です。また70歳以上の肺炎だけで考えると、約80%が誤嚥(ごえん)性肺炎なのです。
誤嚥とは聞き慣れない言葉だと思いますが、簡単に言えば飲み込むときに誤って気管に入ってしまうことを言います。口の中には様々な細菌がいて、綺麗に保たれていないと肺炎の原因となる細菌がより多く増殖している状態になってしまうのです。
その細菌が、気管に入ることで肺の中で細菌が繁殖して炎症を起こしてしまうのです。だからこそ、高齢の方のお口の中を綺麗に保つことは非常に重要です。
ウイルス感染の予防にも歯磨きが大切!
増富:調べてみると、インフルエンザの予防にも歯周病の予防は効果的なようですね?
伊勢海先生:そうなんです。実は研究データでも効果が立証されています。
1つめは、インフルエンザでの学級閉鎖が約半分になった実例です。東京都杉並区の2つの小学校に、洗面台を増設して歯磨きの促進活動をしました。するとこの2つの小学校はインフルエンザによる学級閉鎖率が他の小学校よりも約半分程度だったのです。
2つめは、高齢者でもインフルエンザ発症率が下がったケースもあります。ある介護施設の高齢者の口のケアを週1回行ったグループと、ケアしなかったグループに分けました。週1のお口のケアの違いだけです。でも半年後の調査で口のケアをしているグループの方がインフルエンザの発症者が約1/10になったのです。
増富:へえ、インフルエンザ予防に口のケアはそれほど効果があるんですね。歯のケアでよくプラークという言葉もききますが、プラークとはどういうものですか?
伊勢海先生:プラークは、すごく簡単に言えば細菌が繁殖した塊です。プラークは虫歯や歯周病の原因となるため、ブラッシングで取り除くことが口腔ケアの基本となる。プラーク1mgに1億個ものの細菌がいます。またプラークは細菌が出すネバネバした物質で守られています。イメージとしては、キッチンの排水口のヌメリと同じ様な感じです。
増富:細菌の塊であるプラークがあると、ウイルス感染が成立しやすくなるんですか?
伊勢海先生:そこはとても重要な部分ですね。口の中の細菌(プラークに含まれる)が酵素(プロテアーゼ)を出すのです。この酵素が粘膜のタンパク質を破壊してしまうのです。当然、破壊された部分からはウイルスが簡単に侵入しやすくなるのです。
お口の中が綺麗に保たれていないと言うことは、細菌が繁殖している状況です。そうすると喉の粘膜などが知らずに破壊されて、ウイルスにも感染しやすくなるのです。
増富:なるほど。そういう理由で、毎日の歯のケアが、ウイルス感染の予防にも意味があると言うことなんですね。
歯のケアは免疫力のアップにもつながる!
増富:では、口腔内の清潔と全身の免疫状態なんかに関係はありますか?
伊勢海先生:感染に対して非常に関連があります。まず唾液の中には、体をウイルスや細菌などから守ってくれる物質(IgA)があります。ただお口の中が綺麗に保たれていないと、そもそも体に住み着いてる悪さをする細菌が増えてしまいます。
そうすると、せっかくのIgAがお口の中の悪い細菌をやっつけることで手一杯になってしまうのです。その隙に、外部から体内に侵入した各種ウイルスに感染する確率が高くなってしまう。つまりIgAの効果を高めるためには、お口のクリーニングが重要なのです。
歯科医と医師がオススメの「口活」
増富:腸内細菌を整える腸活は最近注目されていますが、口腔内の清潔を整える「口活」というアイデアなんてどうなんですか?
伊勢海先生:口活いいですね! 免疫力を高めるために、腸と口は非常に重要ですし。細菌って目で見えないですが、人間に良くも悪くも大きな影響を及ぼしているので、多くの人に知ってもらったら、より健康的な人生を過ごせますね。
増富:口腔内のケアは、丈夫な歯でしっかり食べる事の大前提ですし、食べる事は免疫の基本でもあります。そして口腔内のケアや歯周病の予防が、免疫にも直接影響を及ぼすとすれば、新型コロナウイルス対策としても意味があるかもしれませんね。
伊勢海先生:新型コロナウイルスで感染に対する意識が急速に高まりましたね。手洗いやうがいなども非常に重要ですが、体の免疫力を高めたりするのも非常に重要だと思います。つまり多少のウイルスが体内に侵入しても負けにくい体のケアですね。そのためにも、口のケアも大変に重要です。
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日常の歯ブラシによる口腔内のケアが大切ですが、歯周病の有無をまず診てもらって、弱点を見つけ出し、歯ブラシの習慣をつける事は、新型コロナウイルス対策にもなるかもしれません。新型コロナだからといって、歯科通院控えせず、定期的に歯のチェックアップをする事がそろそろ必要な時期かもしれませんね。
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話を伺ったのは… 医療法人社団日坂会 副理事長 伊勢海 信宏
2002年 日本大学歯学部卒業。歯科医師。
一般社団法人歯の寿命をのばす会を主宰し、多くの開業歯科医から日本人の歯の寿命をのばす内容を啓蒙している。また、「歯科医開業成功バイブル」の情報サイトから歯科開業医コンサルティングを行っており、講演は予約が取れないほどの人気になっている。
専門分野:歯科、歯科コンサルティング
趣味:トレッキング、犬
日坂会…
歯科法人で、東京は汐留、秋葉原、浜松町、新日本橋、神奈川県は横浜、辻堂駅前テラスモール、平塚に歯科医院があります。
医療法人社団日坂会 理事長 日坂充宏
1999年 日本大学歯学部卒業、2003年 口腔外科歯学博士。
2006年 抗加齢医学会評議員。
インプラント治療が専門、20年で合計1万本を超える症例を行っている。日坂会のクリニックではインプラントの相談やセカンドオピニオンも多く行っている。
専門分野:インプラント、顎骨の再生治療、歯科口腔外科
趣味:絵画鑑賞、映画鑑賞