弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART21
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第21回目は、狩野麻由美さん29歳。アパレル関連。(年収350万円)
前回記事▶︎酒癖が悪い夫… 子どもも欲しいけど、どうしたらいい?
彼の束縛が激しく、うんざりしています… どうしたらいい?
マッチングアプリで知り合って交際一年になる2つ年上の彼についての相談です。教育関係の事務をしている彼とは、毎週必ず土日のどちらか丸一日デートをしないといけない決まりになっています。デートを一週飛ばしたい時は、木曜日までに理由を詳しく言って申し出ないといけません。デートの当日に「体調が悪いから今日はやめたい」と言うと、とても怒ります。
まるで仕事の休みを申請するみたいで嫌ですし、こんなに義務のようにデートをするとかえって楽しくないと思いますが、彼はわかってくれません。新型コロナの前は、私が仕事で飲み会に行くととても面白くなさそうな顔をしていましたし、女友達や家族とお茶や食事に行くのすら嫌がっていました。
例えば「同窓会だから今週のデートは休みたい」と言うと、「同窓会なんて楽しくないから行かなくていい」と言われたこともあります。最近また友達と一対一でお茶に行こうとすると、「このご時世なんだから行かない方がいい」とまた嫌そうにします。彼も職場の飲み会があるのですが、「俺は飲み会は嫌いだ」と言って行こうとしません。
彼の職場の同僚に、私の知人がいて、その人がアップした職場飲み会の写真に彼も写っていたことが。でも私の彼は隅の方でスマホをいじっていたり、みんなが笑っている集合写真で、ひとりだけ目をつぶっていたり…それを見て、この人は職場で誰とも仲良くなくて存在感がないのかもと感じてしまいました。
そういえば、友達と会っている様子もないし、学生時代の話もほとんど聞いたことがありません。地元も近いのに帰っていないようだし、誰かにメールやLINEをしている様子もあまり見たことがありません。まるで私以外には見えていない透明人間のように思えるほどですが、彼には私以外に仲のいい相手が一人もいないのかもと思うと、優しくしてあげなくては… とも思います。
束縛する以外は優しくて趣味が合う人で、収入は安定していてデート代も気前よく払ってくれます。結婚を考えてもいいと思うのですが、この調子だと家族や友達に紹介するのが心配ですし、彼に私を紹介できる相手がいなくて惨めな思いをさせるかもしれないとも思います。こういう彼とは結婚しても大丈夫でしょうか?
◆堀井先生のアンサー
麻由美さんの推測の通り、彼には全くと言っていいほど他に人間関係がないのでしょう。飲み会の端でスマホをいじっている、集合写真で一人だけ目をつぶっているというのはとても象徴的です。話す相手が誰もいない上に、目をつぶっている写真をアップしたら彼が気分を害するかもしれないとすら思われていないということです。
また、もし彼が職場で嫌われ者なら、その同僚は目をつぶっている写真をアップするようなことはないでしょう。怒ってきたり仕返しをしてきたりするかもしれないからです。つまり彼は好かれていない上に嫌われてすらいない、まさに透明人間のような人と考えられます。麻由美さんが彼と仲良くなれたのは、マッチングアプリで知り合ったことで、彼の透明人間ぶりがわからず、どういう人かという先入観を持っていなかったからだと思います。
結婚相手を決める時、同性の友達がいない人というのは実は危険信号です。誰からも需要がない人は、今後の人生でも全く知り合いができず、結婚相手をいつまでも束縛してくる可能性があるからです。そういったタイプの人よりは、むしろ嫌われ者の方が相性の合う人にとっては付き合いやすかったりもしますし、変わり者であれば変わり者同士でわりと人付き合いがあるものです。
人間関係のある人は、彼女や妻が誰かに会いに行くとなると、その日は自分も自由に予定を入れられると考えます。が、麻由美さんの彼は、他に会う人が全くいないので、友人、恋人、家族、同僚、同級生といった、仕事とプライベート、過去と現在と未来、全ての人間関係における役割を麻由美さんに求めようとして、それが束縛につながっているのではないでしょうか。
彼は、麻由美さんには麻由美さんの世界があり、彼だけでなくその世界も大切であることが理解できなくて、デートを休むことにも相応の理由を要求するのだと思います。こういった束縛はもちろん結婚後も続くはずです。子どもができてもパパ友やママ友を作ることができず、麻由美さんにママ友ができたらその付き合いにも嫌な顔をするかもしれません。
相談には彼の家族のことが出てきませんが、麻由美さんが家族と会うのも嫌がるようなので、子どもを麻由美さんの実家に預けるのを嫌がってトラブルになる可能性もあります。実際に私が相談を受けたケースで、麻由美さんの彼のように人付き合いが全くない夫の事例を見たことあります。
その夫は、子どもが生まれると、妻だけでなく子どもも束縛するようになり、友達付き合いや遊びを厳しく制限しました。そして子どもの自我が発達して自立しようとする年齢になると、行動を制限しきれなくなったことに怒りを覚えたのか、子どもに手を上げるようになりました。
もちろん、人間関係がない男性が全員このような行動をするとは限りませんが、他に人付き合いがないと、自分以外の家族がそれぞれの世界を持つことを許さない夫になってしまう可能性はあります。このタイプの男性にメリットがあるとするなら、誰とも仲良くなれないので浮気をする可能性が低いということです。
もし浮気の心配が低いことをメリットと考えられるなら、彼の束縛を我慢してみるのも一つの選択肢かもしれません。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら