自分にとって本質の問題を掘り起こす勇気。それを実現するにはソロタイムが重要に!
入社してから6年、唯一の同期が会社を辞めることに。オーストラリアに語学留学をするのだそう。ずっと海外で暮らすことが夢で、前から準備を進めていたということだけれど、自分にとっては青天の霹靂!
いつも仕事で大変なときは励まし合って、いろいろ話していたつもりだったけれど、彼女が海外留学を本気で考えていたなんて… 知らなかった。
応援したい気持ちがある一方、「私に残りの仕事を押し付けて… 自由でいいよね」と半分皮肉めいた気持ちも湧き上がり、なんだかモヤモヤしています。こんな私は性格が悪いのでしょうか?
名越さんが回答!
同期の方を応援したいと思う反面、「うらやましい」とか「義理人情を欠いている」と思うのは、ごく正直な気持ちなのだと思います。
最近は、すぐにいいか悪いかを区別したがる風潮にありますが、僕は「現実を見ることから始めましょうよ」という立場です。
あなたが相手に対して感じた、応援したい気持ちと非難したい気持ちの両方があるということを、事実として正直に認めることで初めて「じゃあ、自分はどうする」と冷静に前へ進めるのです。
同期のキッパリとした決断と行動を見てモヤモヤする心の奥には、「自分はこのまま今の仕事を続けていいのかしら…」「自分の本当にやりたいことってなんだろう」といった、自分の人生を決めかねているという本音があるのかもしれません。
相手の態度がどこか気に食わないと感じるのは、実は自分自身が「自分本来の問題」を見る勇気がまだもてなくて、それに蓋をしてしまっているからなのです。
また、仮にそれがわかったとしても、「自分にはどうせ何もできない」と、反射的に自分を軽視してしまう人も多いのです。でも大丈夫、それは昨日までのあなたです。今日からは自分の人生を生きる練習を始めましょう。
自分の将来を考える力を育むために、ひとりでじっくり映画を観たり、小説を読んだりする時間を週に一度は必ずとるようにして、その中に未来の自分を発見してゆくのです。
「そのうち考えよう」「きっかけがあれば実行しよう」といった、淡い期待だけで不安げに生きる必要はありません。周りを遮断して没頭する、ひとりの時間を積極的につくるだけでいいのです。
それでもやっぱり、自分を偽って漫然と日々を過ごしてしまうのが人間。自分が納得のいく生き方を始めたい人には、最強の投資家ウォーレン・バフェットの教えを紹介します。
まず自分のやりたいことを25個書き出すこと。これからが肝心です。そのうち上位5個を除いた残り20個は決してやらないこと、というのです。
つまり肝心なことこそ後回しにしがちだけれど、そこで時間を潰している暇はないということでしょう。一度やってみてください。
美味しいものは後回しにしても、人生で達成したいことは後回しにしない、というのは素敵な指摘だと思います。
2019年Oggi12月号「名越康文の奥の『ソロ』道」より
イラスト/浅妻健司 構成/宮田典子(HATSU)
再構成/Oggi.jp編集部
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名越康文(なこし・やすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など幅広く活躍中。著書に『SOLO TIME「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)ほか多数。