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2020.09.07

生きるか、死ぬか。アメリカ移住のはじまり<元テレビ朝日プロデューサー転職実録#7>

仕事と自分の人生を見つめ直す社会人10年目。とうとう来た渡米の日、生きるか死ぬかの不安に苛まれる…。元バラエティ番組の女性プロデューサー 古瀬麻衣子が考える「理想の人生」への近づき方。

古瀬麻衣子

#7 アメリカ挑戦のはじまり、生きるか死ぬか、不安との戦い

<これまでの連載はこちら>

(c)Shutterstock.com

これまで生きてきて、感じたことのない種類の不安。それは12年勤めたテレビ局の最終出勤日に現れた。

20代から30代前半の全てを捧げて、毎日何かに追われているような感覚で生きた12年。毎週1秒も遅れずにやって来る放送時間までに、血眼になって作り続けた番組たち。

私はその最後の日まで放送時間に追われて、化粧も出来ず、ボサボサの髪で、目の下にクマをつくりながら走り切ろうとしていた。最後の日に担当番組のオンエアが2つもあった。神様は最後までむごい。

朝から爽やかに色んな人に挨拶して回りたかったのに、冷静さを取り戻したのは夜の21時頃だった。

デスクの荷物をまとめ、局の建物を完全に出た瞬間、ホームを失ったような孤独感と、もげそうになっていた羽が、バサッと生き返ったような爽快感が交錯して、自分じゃないみたいな妙な感情だったのを鮮明に覚えている。

そして、ここから始まる、国を変えての闘いを想像すると、もはや生きるか死ぬかの未知の領域に思えて、体中が不安にムシばまれて、正気じゃない精神状態だった気がする。

◆込み上げてきた夫への感謝

それから渡米までの1ヶ月間。休養しながらも、私の大事な任務は夫の1人の生活をととのえることだった。洗剤やシャンプーのストックを増やし、よく食べるサラダの作り方を伝授し、家中にポストイットを張り巡らして、夫がやってなかった家事を引き継いだ。

(c)Shutterstock.com

そして毎晩寝る前に、「やっぱり行くのやめようかな」とお決まりの不安をこぼし、「しんどかったら、すぐ帰って来ればいいよ」と神様レベルの優しさを見せつけてくる夫に、一生かけても返せない感謝の念を抱くのであった。

そんなこんなで、渡米の日はあっという間にやって来た。朝から家中を掃除して、たった2つのスーツケースに荷物を詰め込んで、しばらく会えなくなる夫の出勤をいつも通りに見送る。

「一生の別れじゃないから!」と、涙ひとつ見せずに、私たちは握手して、次会う日までの健康を祈った。

夕方の便だったので、ギリギリまで一人自宅で片付けをしていたら、家のドアが急に開いた。「熱が出て、体調悪くて早退した」と数ヶ月会えないはずの夫が5時間後に帰って来た。

どんなサプライズだよ! と言いたいが、本当に熱があった。もしかしたら、私に見せない心労があったのかもと思うと、初めて涙が出た。薬を飲ませて、夫が寝息を立てた頃、私は静かに家を出た。

◆生きるか死ぬか、挑戦のはじまり

(c)Shutterstock.com

あの羽田までの道のりは今後も塗り替えることのない、一生忘れられない時間だ。

挑戦とは、こんなにも苦しく、切ないものなのか。もう二度と経験したくないと思う、生命を振り絞るような体験。ただ、この鼓動の動きこそ、「私は生きている」と明確に感じ取る、ドラマティックな瞬間だったことは確かだった。

そんな想いに包まれたまま、十数時間後、私はアメリカ合衆国ニューヨーク州に降り立った。

「ホテルにチェックインして、N.Y.っぽいもの食べよ~」なんて、のんきなことは言ってられない。1泊だけ深夜の訪問を許してくれた友人の家に向かう。

観光客じゃないと、こうもワクワク感がゼロになるかと、気が滅入っていたら、「この住所なら、ここだよ」とタクシーから降ろされた。

真っ暗なマンハッタン。浮浪者が前から歩いてくる。道路から変な煙も立ち上っている。日本に安心も、安定も全て置いて来た。

生きるか、死ぬか。この街で私は何者でもない。ただひたすら、生きる。それだけだ

◆これまでの連載はこちら

古瀬麻衣子

1984年生まれ。一橋大学卒。テレビ朝日に12年勤務。「帰れま10」などバラエティ番組プロデューサーとして奮闘。2020年、35歳で米国拠点のweb会社「Info Fresh Inc」代表取締役社長に就任。現在NY在住。日本人女性のキャリアアップをサポートする活動も独自に行なっている。

Instagram:@maiko_ok_
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