弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART17
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第17回目は、会社員の鈴木瑠香さん(仮名・34歳・年収230万円)。
前回記事▶︎夫の前妻への嫉妬が止まらず、彼から離婚を言い渡されました…
◆夫のPCに盗撮写真のフォルダがありました… バレたらどうなる?
新型コロナの時に在宅勤務になり、銀行員の夫がサブで使っているパソコンを借りました。ほぼ2ヶ月間使い、返そうと思ったときにたまたま夫がいなかったので、何となくピクチャフォルダを開いてみました。
その中に「仕事用」という名前のフォルダがあったので見てみると、日付のような名前の付いたフォルダがずらっと並んでいました。もしかしたら浮気の写真をカモフラージュして保存しているのかもしれないと思ってドキドキしながらフォルダを開くと、女性の写真が大量に出てきました。
ただ、特定の女性ではないし、ほとんどが顔も写っていません。エスカレーターの下から、電車の向かいの席からなど、いろいろな状況で女性のスカートの中を写した写真ばかりでした。自転車に乗っている女性のスカートがめくれたところをアップで撮った写真もありました。
不倫ではなかったので少しほっとした反面、犯罪かもしれないとも思いました。そう思うと最初は気持ち悪いと思いましたが、普段の夫は至っていい人で、私のことも大切にしてくれるし、仕事も熱心にやっているので、夫として不満なところが一つもなく、考えないようにしていたら気にならなくなってきました。
そのうち子どもも欲しいと思っているのですが、盗撮癖がある夫と夫婦でい続けることにデメリットはあるでしょうか。私の見た写真は顔が写っていないものばかりでしたが、もし盗撮がバレたらどうなるのでしょうか。
◆堀井先生のアンサー
まず、盗撮は犯罪です。各都道府県の迷惑防止条例などに違反しますし、その他、場合によっては児童ポルノ禁止法など、さまざまな法令に違反する行為です。もし盗撮で逮捕された場合は、最大3年以下の懲役と、300万円の罰金が科されます。裁判にならないようにするために、数十万円から数百万円の示談金が発生します。
夫が盗撮や痴漢をしたという案件を何度か担当したことがありますが、常習性があるものが多かったです。中には、逮捕されて、会社をクビになって、再就職してもまた盗撮をしてしまったという男性もいました。瑠香さんの旦那さんも、たくさんの盗撮写真を保管していたそうなので、常習性があると思われます。
今後のことは瑠香さん自身が決めることですが、パソコンにあった写真の量からすると、それだけ盗撮行為を繰り返しているのなら、旦那さんはいつ逮捕されてもおかしくない状況です。逮捕されても、瑠香さんが怒ったとしても、旦那さんは盗撮をやめることはできないでしょう。
被害者の方と示談をして、旦那さんが心から反省をしたとしても、それで盗撮をしなくなるとは限らないのが難しいところです。やり直そうとしてもそのたびに旦那さんが同じことを繰り返してしまうと、瑠香さんもどんどん疲弊していってしまいます。
時には裁判になることもあります。会社を辞めなければいけなくなるかもしれませんし、ニュースになって名前が出ることもあります。そうなると、妻であるあなたにも、生まれてくるお子さんにも影響があります。
一度視点を変えて考えてみてほしいのですが、もし瑠香さんが見つけたのが不倫の写真だったらどうしていましたか? 離婚を考えたのではないですか。
私が相談を受けたケースでも、旦那さんの痴漢や盗撮が発覚しても奥さんは一回目のうちは離婚を決断しないことが多かったです。具体的な相手のいる不倫よりも、盗撮や痴漢は家庭がないがしろにされているという実感が薄く怒りが湧きにくいのかもしれませんが、犯罪なので浮気とはレベルが違います。
盗撮や痴漢は女性にとってなかなか現実味がないことなので、旦那さんの長所を考えて、変わった個性や趣味として受け入れようとしてしまうかもしれませんが、それは犯罪です。盗撮癖や痴漢はなかなか治らないことを頭に入れて、それでも一緒にいたいか、旦那さんと一緒にいることにそこまでのメリットがあるかどうかを考えてみましょう。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら