弁護士堀井亜生さんの恋と仕事のスッキリ法律相談 PART16
テレビで人気の弁護士・堀井亜生さん。人間関係トラブルに詳しい堀井さんが、ダメ男、ダメ上司など、Oggi世代の女性たちがハマってしまったトラブルをスッキリ解決する連載です。
第16回目は、会社員の佐野幸奈さん(仮名・34歳・年収440万円)。
前回記事▶︎割り切っているつもりが、不倫の「匂わせ」投稿をやめられない…!
◆夫の前妻への嫉妬が止まらず、彼から離婚を言い渡されました…
中学校の同級生と結婚して1年になります。私たちは都心にある名門小中一貫校を出ていて、同窓会で再会しました。昔憧れていた人で、彼がバツイチで独身と知って交際を始めました。交際して1年経って結婚しようという話になった時に、彼に離婚した前妻のことを聞いてみました。
なかなか彼は話したがらなかったのですが、「離婚の原因は相手の浮気。子どもは1人いるけれど相手の方が稼ぎがいいから養育費や学費の心配はいらない」と言われたので、結婚することにしました。結婚後、家を掃除していると、前妻との戸籍が出てきました。
名前がわかったのでインターネットで検索してみたら、前妻がキャリア女性として受けたインタビュー記事が出てきました。さらにInstagramで1人息子との優雅な暮らしを投稿していました。そこから、毎日前妻のことをチェックするようになってしまいました。
おしゃれな家具の並ぶ広いリビングで、高そうな花を飾っていて、子どもは制服からすると有名私立小学校に通っているようです。マンションの窓の景色や行っているレストランを見ると都心のタワマンに住んでいるらしく、バッグや靴もハイブランドのものばかりで、私たちとは比較にならないほど豪華な暮らしをしています。
ある時、夫とささいなことで言い合いになって、つい「前の奥さんの方がいいんでしょ、あんなにかっこいい人だもんね」と言ってしまいました。夫は驚いて、「なんでそんなことを言うんだ」と言いましたが、その日から私は「奥さんがあのブランドのバッグを買っていた」とか「本当はあの生活に戻りたいんでしょ」「本当は子どもに会いたいんでしょ」と言うようになってしまい、止まらなくなりました。
夫は露骨に嫌な顔をするようになり、夫婦の会話が減ってしまいましたが、私は言うのをやめられません。彼がますます前妻のところに戻りたいと思うようになっているのではないかと思うと不安で仕方ありません。また最近、夫が私との離婚をほのめかすような言動も… 私はこれからどうしたらいいでしょうか?
◆堀井先生のアンサー
夫は最終的に幸奈さんを選んで結婚したのですから、その現状に満足して今の幸せを大切にして生きて行けばよいと思うのですが、おそらくそれではあなたの心が満たされないのでしょう。あなたが不満に思う原因は、物事の時系列を考慮しないで考えてしまっていることにあると感じます。前妻(過去)と、今の妻である自分(現在)の優劣を意識しても、何も生み出しません。
あなたのように、人の過去が気になってしまう性格の人の多くは、調べても苦しくなるだけなのにわざわざ調べてしまうという傾向があります。気になって苦しくなって、調べてわかった事実にまた苦しくなるという負の連鎖にはまってしまうのです。
今回は、前妻が仕事に成功していて、息子も有名私立小学校に通っています。経済的に裕福なところを見てしまっていますが、それとは逆に、前妻がみすぼらしい人だったらあなたはどう思うでしょうか。きっと、「私はこの人と同レベルなのか」と、自分の価値が下がるように思ってしまってやはり落ち込んだかもしれません。
彼が、前の結婚の具体的な内容をあまり言わないということは、彼は今の家庭に前のことを持ち込みたくないのでしょう。しっかりした男性は、過去の恋愛のことを今の恋愛に持ち込みません。聞いてもはぐらかしたり、「もういいじゃない」などと話を打ち切ったりします。それは、今を大事に考えているからです。
しかし、その曖昧な態度を女性は、「話したくないということは、よほど幸せだったのでは…」と反対にとらえて、さらに詮索したくなるのです。
今は、会ったことのない人の生活をSNSで覗き見できる時代です。しかし、SNSというのはキラキラした「人に見せたい自分」だけを切り取って投稿しているものです。写真に写っていない部屋は汚かったり、子どもが学校で苦労していたり、仕事が思うようにいかなかったりしていても、それはSNS上には出てきません。
私が離婚の相談を受けた夫婦にも、離婚調停中でも夫婦仲が円満であるようにSNSに投稿し続ける人はたくさんいます。キラキラした生活をアップしているというのは、もしかしたら私生活が充実していないことの表れかもしれません。あなたの場合、前妻のことを気にするのが癖になっているのかもしれません。
依存症と言ってもいい域に達しているとも言えます。まずは3日間、考えることをやめてみてはどうでしょうか。それができたら次は1週間やめてみる。その期間を少しずつ長くしていけば、気になる気持ちが薄れていくかもしれません。彼がすでに手放したものを、あなたがわざわざ拾い上げて大事にすることはありません。
取材/前川亜紀 イラスト/チカツネナオ
弁護士 堀井亜生
北海道出身、中央大学法学部卒。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)ほか、各メディア、講演等で活躍。夫婦・男女問題に関するリアルな事例の紹介と解説が好評。著書に『ブラック彼氏 ~恋愛と結婚で失敗しない50のポイント~』(毎日新聞出版)がある。趣味は料理、ピアノ。一児の母。公式サイトはこちら