【目次】
・「ひとりごちる」とは一体何のことなのなのか…?
・ひとりごちるの正しい使い方・例文を紹介
・ひとりごちるの類義語はどのようなものがある?
・ひとりごちるの対義語について
・最後に
「ひとりごちる」とは一体何のことなのなのか…?
「ひとりごちる」という言葉、皆さんはどこかで聞いたことはことはありますか? 昔の言葉のような気もするけれど、もしかしたら最近の若者言葉だったりして? はたまた地方の方言? ここでは「ひとりごちる」の意味や使い方などを解説していきます。
◆ひとりごちるの意味
「ひとりごちる」の意味、わかりそうでわからないですよね。現代では日常会話で使われることはほとんどありませんが、これは「独り言をいう」という意味の、ちょっと気取った古めかしい表現になります。な〜んだ、やっぱりそうかと思った方はいるでしょうか。
ただし、この「ひとりごちる」は、何冊か国語辞典をめくってみても、なかなか見当たりません。やっと見つけた実用日本語表現辞典には漢字で「独り言ちる(ひとりごちる)」として載っていました。
その意味は、<独り言をいう。「ひとりごちた」のように助動詞と合わせて連用形で用いられることが多いが、終止形は「独り言つ」(ひとりごつ)であり、「ひとりごちる」とするのは誤りである>とされる。と、あります。
よって「ひとりごちる」という言葉は正しい日本語としては存在しないようです。
余談ですが、旺文社古語辞典には「ひとりごち」という語が載っていて、意味は大隈言道(おおくまことみち)著の【歌論書】の作品名とあります。歌論書とは「歌に関して批評的文学的見解を述べた文献」のことで、まったく別のもの。「ひとり言をいう」という意味ではありませんね。
◆ひとりごちるの語源について
辞書で「ひとりごちる」がなかなか見当たらないと書きましたが、似ている言葉として載っているのが「ひとりごつ(独り言つ)」です。これはほとんどの国語辞典に載っていて、意味は次の通りです。
「ひとりごつ(独り言つ)」
[動タ五(四)]《名詞「ひとりごと」の動詞化》ひとりごとを言う。「『ああ、逃がしちゃった』と… すこし上ずった声で—・ちた」〈堀辰雄・三つの挿話〉
※出典:大辞泉
さらに岩波国語辞典には、「ひとりごつ」は載っていませんが「ひとりごと」の語釈には次のような記述がありました。
「ひとりごと」
聞く相手がいないのに、自分だけで物をいうこと。その言葉。古語にはこれを四段活用動詞化した「ひとりごつ」があり、今も気取って言う人がある。タ行の活用だが「た」「て」への接続に音便系を使わない。上一段化する人もある。
このように「ひとりごちる」の語源は、「独り言(ひとりごと)」が動詞化した言葉「独りごつ(ひとりごつ)」と言えます。そのまま「独り言を口にする」という意味になりますね。
「ひとりごちる」は、その「ひとりごつ」を上一段活用の動詞と見なして使われ出した終止形。ちょっとむずかしいのですが、古語の「独りごつ」に由来する文語(書き言葉)で使われ、口語化された言葉と言ってよいでしょう。
まれに時代小説などでは「ひとりごちた」という表現を見かけることがあります。
ひとりごちるの正しい使い方・例文を紹介
馴染みのない言葉「ひとりごちる」ですが、日常会話の中では聞くことはなく、文章で使われることがほとんど。よって次のような使い方になります。すべて「独り言をいう」に言い換えられますね。
1:「もうやってられないわ。と、後輩がひとりごちる」
2:「僕はそのとき幸せだなぁ。と、思わずひとりごちた」
3:「彼は、またかよ。と、ひとりごちて去っていった」
実はツイッターの世界では「お腹空いたな、ラーメン食べたい。とひとりごちる」など文中で使われる場合もあれば、ハッシュタグ「#ひとりごちる」で投稿されているものもあります。
「お腹空いたな。ラーメン食べたいと独り言をいう」ではなく、ちょっと変わったニュアンスの言葉として、わざわざ使う人もいるようです。
明治時代の文豪が、今の時代にタイムスリップしてきたら使いそうなハッシュタグだと思いませんか?
ひとりごちるの類義語はどのようなものがある?
英語に訳すと「To talk to oneseif」となる「ひとりごちる」ですが、ほぼ同じ意味の言葉には次のようなものがあります。
1:「呟く(つぶやく)」
小さい声でひとりごとを言うこと。これが「ひとりごちる」に1番近い言葉でしょう。
2:「ぼやく」
ぶつぶつ不平や泣き言を言うことです。[1]の「呟いて」いる内容が、不平不満や泣き言だったりのネガティブな場合に使われます。
3:「ぶつぶつ言う」
ぼやくと同様に、不満をたれる、文句をつけるなどの意味ですね。ポジティブな内容には使われず、ネガティブな独り言にのみ使います。
ということで、「ひとりごちる」に1番近いのは「呟く」ではないでしょうか。
ひとりごちるの対義語について
「ひとりごちる」の対義語として挙げられるのは、「会話」や「対話」でしょう。
自分ひとりで声を発している「ひとりごちる」に対して、「会話」や「対話」は、2人または数人が互いに話したり、聞いたりして話を進めることを指します。英語だとconversationやdiscussion、Dialogueなどの単語がそれに当たります。
最後に
独り言をいう、1人で小声でつぶやくなどの意味を持つ「ひとりごちる」を解説してきました。
現代では話し言葉として耳にすることはほぼなく、古い時代の雰囲気がある小説や復古調のエッセイなどの文章の中で使われる表現だということがわかりましたね。
この「ひとりごちる」、皆さんもブログやツイッターなどで使ってみてはいかがでしょうか。
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