歯みがきではなく、“ブラッシング”を!
突然ですが、皆さんは口の中に億どころか兆単位で細菌がいることをご存知でしょうか。歯周病には、この兆単位でいる細菌が大きくかかわっていて、その研究でも原因の細菌を探し出し、その細菌を死滅させる事を目標にしています。
しかし、私は細菌を死滅させるよりも、細菌にエサをあげない事に注力すべきだと考えています。エサさえなければ細菌と共存でき、効果的に歯ブラシで汚れ(エサ)を取る事が重要なのだと考えます。
エサがつきやすい場所は決まっています。具体的には、歯と歯の間、そして歯と歯肉の間。ここにしっかりと歯ブラシが入りさえすれば予防できますが、実はこれ、思ったよりも難しいんです。
今回は具体的なブラッシングの仕方について紹介したいと思います。「ブラシの仕方なんて今さら…」という方も多くいらっしゃると思いますが、結構奥が深いのです。
これからいくつかポイントを挙げますが、その前に、一点知っておいて欲しいことがあります。それは、「歯みがきは、白い歯の表面を磨く・キレイにする」だけではないということ。「歯みがき」という言葉のイメージに縛られないで欲しいのです。
この「歯みがき」のイメージが抜けない限り、老化しない歯肉を獲得する事は難しく、そのために、私はあえて「歯みがき」ではなく、「ブラッシング」という言葉を使っています。
ブラッシングの仕方は奥が深く、限られた記事内ですべてを教えることはできませんが、参考にしてみてくださいね。
◆1. 歯ブラシを入れる順番を決める
歯ブラシは手の筋肉の習慣・クセに大きく影響されます。いつも決まった順序で歯ブラシを入れていく事でブラシの入りにくい場所をなくす事が大事です。
◆2. 必ず手鏡で歯ブラシの位置を確認する
歯肉の感覚は繊細ですから、歯ブラシの当たっている感触だけを頼りにブラッシングをすると、知らず知らずのうちに元々持っていたクセに戻ってしまいますので、自分の目でしっかりチェック!
◆3. 歯ブラシを安定させる
歯ブラシが不安定だと、ブラシ圧を微調整できません。歯ブラシの持ち方としては、一般的に鉛筆持ちが良いとされていますが、これに中指をプラスさせる「中指鉛筆持ち」をすすめています。更に「シャカシャカ音」が聞こえないようにブラッシングの振動を小さく動かすと、ブラシの毛束のコシを活用できますよ。
ブラッシングの基本的な事をご紹介しましたが、歯や歯肉の状態は人それぞれ違いますので、歯科医院に行って、その人に合ったお手入れの仕方を相談してみる事をお勧めします。
次回は、電動歯ブラシについて紹介しますね。
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大岡歯科医院 大岡 洋院長
1991年、慶應義塾高等学校卒業。1997年、東京歯科大学卒業。
2002年、ハーバード大学歯学部・公衆衛生学部大学院(予防歯科学専攻)修了。
日本人歯科医師として初めて予防歯科で理学修士(Masterof Science)を取得。
東京都品川区・大岡歯科医院(目黒診療所・中延診療所)代表。
2003年より東京歯科大学非常勤講師(歯科補綴学)。国際歯科学士会(ICD)理事。
アメリカ歯周病学会(AAP)会員。慶應義塾大学特選塾員。著書に『「歯みがき」するから歯は抜ける』(現代書林)。
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