〝安くて美味しいお店〟という意味の「ビブグルマン」を獲得したカレー店
ミシュラン東京2020が2019年11月26日(火)に発表されました。ミシュランとはタイヤの会社なのですが、自動車を運転する人の為の地図や名店ガイドという意味で始まったミシュランガイド。その歴史は19世紀末からと非常に古く、今となっては当たり前の、お店の格付け評価をするという元祖的存在であり、ミシュランガイドは本業のタイヤと同じくらいに有名になっています。
一つ星から三つ星までの評価があり、それぞれ高級店が名を連ねています。カレーは金額が安いということもあり、星を取ることはなかなか難しいのですが、安くて美味しいお店という意味の「ビブグルマン」という称号があり、カレー部門でこれを獲得しているお店が毎年登場しています。
今回はミシュラン東京2020でビブグルマンを獲得したカレーのお店をまとめてご紹介いたします。
◆芸術的なルックスと優しい美味しさ「新橋 幸正」
新橋の路地裏にある小さなお店。外観はカレーのお店には見えない和風な佇まいなのですが、個性的なルックスの美味カレーが味わえます。「カレーの海に浮かぶライスと肉の島」とでも言えるような美しいルックスのカレーライスです。
こだわっているのは見た目だけではありません。ターメリックライスとトマトライスの二層仕立ての上には醤油と赤ワインで煮込まれた牛肉。そしてそのまわりをサラっとしたカレーが囲みます。トマトライスのほのかな酸味はカレーと牛肉の味を繋ぐのに一役買っていて、ターメリックライスは食感にも変化を出しているなど、それぞれちゃんと意味ある美味しさ。カレー自体はシンプルですが、全体のバランスを考えればこれが正解だと思えるカレーです。また、マッシュポテトが美味しいのも覚えておきたいところ。他にありそうでないカレー。SNS映えも確実です。
▲ビーフカレー(ポテトピクルスset)
◆苦味がポイントの個性派スマトラカレー「神保町 共栄堂」
神保町の老舗店として古くから人気のあるお店です。正直に言うと僕は大学生の頃に初めてここのカレーを食べた時、美味しいんだか美味しくないんだかわからなかったんです。でも、物凄くインパクトがある味で、思い出すと無性に食べたくなる時があって。それは焙煎感のある苦味が味のポイントとなっているからでしょう。
インドネシアのスマトラの料理を元にしたと言われていますが、インドネシアカレーとも全然違っていてここオリジナルの味です。ビブグルマンを獲得したとは思えない程に気楽に入れるお店ですし、提供時間の凄まじい速さも名物と言えるほど。サクっと入ってペロっと食べてすぐに出る。でもちゃんと満足ができる。そんなお店です。
▲チキンカレー
◆僕が宇宙で一番好きなお店「荻窪 トマト」
こちらもビブグルマン常連店。僕が宇宙で一番好きなお店です。洋食の名店出身のマスターが丁寧に時間をかけて作るカレーは、カレーのジャンルで言えば欧風カレーに属されることが多いのですが、いわゆる欧風カレーとはまるで違う完全オリジナルのカレーです。36種類のスパイスを使用しているのですが、普通それだけ多くのスパイスを使ってしまうと味がぼやけます。しかし、ここのカレーはその全てが活きている奇跡的なカレーなのです。
2,000〜3,000円くらいするメニューが多いので、カレーライスとしては安くはないかもしれません。しかしカレーを超えたカレーであり、一皿で完結する最高のコースと言いますか、素晴らしいコースが一皿で表現されていると言いますか、とにかくそういったカレーなのでむしろ安いと思います。
例えばビーフタンカレーに季節の野菜をトッピングしてみれば、上質のタンがしっかり煮込まれているものがメインとなり、野菜は素材によって煮たり焼いたり揚げたりと仕込みを変えているという手の込みよう。それが奇跡的に美味しいカレーと合わさって一皿になっているという逸品で、個人的には10,000円出してでも食べたいカレーです。大人気の大行列店で開店前に売り切れることもしばしばですが、カレー好きなら一度は食べておきたいカレーですよ。
▲ビーフタンカレー+季節の野菜
◆スパイスカレー界の女神が遂にビブグルマン初受賞!「大久保 魯珈」
昨今の東京スパイスカレーブームの牽引役の一人と言えるのがこちら大久保の魯珈。その人気の高さは日本一と言っても過言ではないでしょう。ここでカレーを食べるためには記帳をしないといけません。通常10時の記帳開始時刻に間に合うために、早朝から列ができ、11時の開店時には記帳受付終了していることがほとんど。ちなみにビブグルマン受賞直後の3周年記念営業日には、始発で行って間に合わないという伝説が生まれました。僕もこの日は早朝から向かっていたのですが、電車に乗っていた早朝6時前にSNSで売切れのお知らせを見るという貴重な経験をしました。
台湾の屋台メシ魯肉飯とスパイスカレーのあいがけである、ろかプレートが看板メニューなのですが、レギュラーメニューのどれを食べても美味しく、さらに週替わりの限定メニューでは激辛や激痺カレー、あるいは独創的カレーを出してきて、それもやっぱり全て美味しいというとんでもないお店。僕もその味を食べたいが為にほぼ毎週、朝から並んでいます。
▲ろかプレート+ぷちカレー各種
◆「銀座一丁目 バンゲラズキッチン」
カレーのジャンルでは上記4店舗なのですが、インド料理というジャンルからビブグルマン初受賞したのがこちらバンゲラズキッチンです。銀座一丁目に本店を構え、今年に入ってから船堀、神保町にも姉妹店をオープンさせた勢いに乗っているお店です。
南インドはマンガロール地方の料理という、かなりニッチなコンセプトなのですが、シーフードを主体とした美味カレーのラインナップは日本では他に無いものであり、南インド料理マニアを喜ばせています。実際魚のカレーや魚の焼き物は絶品ですし、魚料理以外もちゃんと全て美味しいです。スパイスがしっかり効いたものから優しい味わいのものまで、硬軟バランス良く取り揃えてあります。今年の東京では南インド料理店の数が急増したということもあり、タイミング的にもベストな受賞となったと言えるでしょう。
▲フィッシュターリ
以上、カレーでは4店舗、インド料理では上記のバンゲラズキッチンの他に、「東銀座ダルマサーガラ」、「京橋ダバインディア」がビブグルマンを受賞しています。どのお店もカレーマニアなら知らない者はいないと言える名店です。今年のミシュランガイドでは東京、大阪のみならず、福岡でもカレーのお店がビブグルマン初受賞するなど、全国的にもカレーに対する注目度は飛躍的に上がっていると言えるでしょう。
来年はオリンピックの年。世界から多くの人が集まります。そんな方々にも日本のカレーの素晴らしさが伝われば良いなと思っています。
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。
音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均1000食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。
http://www.akinolee.tokyo/