なぜ日本人は伊勢神宮に呼び寄せられてしまうのか
古代から今に息づく不変の美しき聖地・伊勢
「お伊勢さん」として親しまれる伊勢神宮は、正式には「神宮」といいます。
神宮には、日本国民すべての守り神、神様の中心である天照大御神(あまてらすおおみかみ)をお祀(まつ)りする「内宮(ないくう)」、衣食住や産業の守り神である豊受大御神(とようけのおおみか)をお祀りする「外宮(げくう)」をはじめ、14所の別宮(べつぐう)、43所の摂社(せっしゃ)など125もの宮社があり、それらすべてを含めて神宮が成り立っています。
内宮は2000年、外宮は1500年の歴史がありますが、驚くことにその姿は、ほぼ創建当時のまま今に至るのです。こうした不変の聖地である神宮最大の特徴は、「式年遷宮(しきねんせんぐう)」という重要なお祭りに理由があります。
前回の遷宮は2013年に行われたので、ニュースなどで見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか。なんと神宮では、内宮、外宮といった中核を担う社殿のみならず、125の宮社すべて20年に一度建て替えや修繕をしています。
20年というサイクルの理由は定かではありませんが、よく神社で見かける朱塗りの社殿は木材の防腐剤として朱を使用しています。そうした技術が生まれる前から存在する神宮では、古来の建築様式に忠実な素木(しらき)の檜(ひのき)のみを使用し、耐久性の面と、神様を常に清浄で美しい空間にお祀りするために、こうした伝統が続いていると考えられています。
また建築の際、釘をほぼ使用していないため、古い社殿は丁寧に解体され日本全国の神社の修繕に使用されています。山手線内とほぼ同じ広さを擁する内宮の森を歩けば、神宮がいかに自然の恵みを尊び、その感謝の証として神様をお祀りしているのかを、存分に体感できるのです。
神宮参拝は、まず外宮(げくう)から
▲外宮の御正宮。社殿は四重の垣根に囲まれた敷地の最奥にあり、参拝者は通常中に入ることはできない。
1500年間絶えず行われる神様に食事を捧げるお祭り
お祭りと聞くと、法被を着て御お神み輿こしを担ぐ様子が思い浮かびますが、本来、神職が神にお願いごとを祈るすべての行為をお祭りといいます。
▲御正宮の隣には、次回の式年遷宮で社殿が建てられる敷地が。
神宮では、「式年遷宮」をはじめ数多くのお祭りが行われていますが、外宮では、特に象徴的なお祭りが1500年間毎日欠かさず行われています。
それは、「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」といい、外宮の神様・豊受大御神が、天照大御神の食事を司る神様であることから、朝と夕の二度、神宮の御料地(ごりょうち)で収穫されたお米や塩、野菜、魚介類、フルーツなどからなる食事を捧げているのです。
▲神職が神様に食事を運ぶ様子。
その際も古来の様式を守り、マッチなどを使わず木材から火をおこしています。現代人にとっては驚くほど手間のかかる手法で自然の力に感謝し、国家の繁栄、国民の幸せを願う……伊勢神宮が「日本人の心のふるさと」と呼ばれる理由は、そうした弛まぬ祈りにあります。
▲外宮のせんぐう館では、式年遷宮に関するさまざまな情報が展示されている。ぜひ立ち寄りたい。
神社で縁結びや試験の合格、健康を願うことは、決して悪いことではありません。ただ、神宮では個人的な願いよりも、ぐっと広い視点で日々の暮らし、自然に感謝することを意識してみてほしいのです。悠久の歴史を感じることが、お伊勢参りの醍醐味です。
宇治橋を渡るとそこは空気の違う神聖な世界
内宮(ないくう)
伊勢神宮のシンボル宇治橋(うじばし)
内宮への参拝は、伊勢神宮のシンボル宇治橋(うじばし)を渡ることから始まる。冬至の前後1か月は、この大鳥居から美しい日の出が見られることでも有名。
コート¥32,000・パンツ¥13,800 (グランカスケードインク〈グーコミューン〉) ニット¥12,000(TONAL) バッグ¥47,000(T-square Press Room〈JOANNA MAXHAM〉) 靴¥12,500(ダイアナ 銀座本店〈ダイアナ〉)
神宮の中で最も尊い場所、内宮の御正宮(ごしょうぐう)
参拝時間は5時から17時(10月~12月/1・2・3・4・9月は18時/5月~8月は19時まで/神宮すべて共通)
【神社参拝の作法】
何ごとも基本が大事! これだけ押さえれば、参拝はより身近に。
1.手水
神社ではまず禊みそぎを簡略化した儀式、手水を行います。柄?(ひしゃく)一杯の水を4回に分け、左手、右手、口、最後に柄?の柄を清めます。このとき柄?に口を付けることと、水を飲み込むのは厳禁。
2.二拝
3.二拍手
4.一拝
神前では深いお辞儀「拝」を2回、「拍手」を2回、再度「拝」を1回します。
五十鈴川(いすずがわ)の御手洗場(みたらし)
俗世と神域を隔てる五十鈴川(いすずがわ)の御手洗場(みたらし)で手を清める。
2017年Oggi12月号「古代から今に息づく不変の美しき聖地・伊勢へ」より。
本誌掲載時スタッフ:撮影/山下陽子 ヘア&メーク/神戸春美 スタイリスト/渡辺智佳 モデル/愛甲千笑美 構成/仲田舞衣、益田史子(本誌)
再構成:Oggi.jp編集部