仕事ができる女の「オトナ言葉」講座 第2回
美しい日本語編「お目にかかれて光栄です」
第1回講座「かしこまりました」はこちら
「褒められて悪い気がする人はいない」といいますよね。どんなに歯が浮くようなセリフでも、本気でそう思っているのなら、どんどん褒めて差し上げましょう。
他人からすれば心にもないおべんちゃらに聞こえてしまうかもしれませんが、よほど猜疑心の強い人でもない限り、自分を持ち上げてくれる人には好感を持ちますし、出会って日の浅い関係、まだ浅い付き合いしかできていないケースでは、案外「褒める」というアプローチは効くものです。
肝心なのは、嘘を吐かないことです。
どうひいき目に見ても仕事ができない人に「すごく有能ですね」といってしまえば、場合によっては嫌味にしかとられないでしょう。また、それを周囲の人が聞いたときには「調子のいいやつだなあ」と思われるのがオチってものです。
誰かに「どうして、心にもないことを平気でいうの?」と問われたときに、舌を出して「あちらも喜んでいるんだからいいじゃん」なんて開き直るのは言語道断。
バレなきゃいいって?
いえいえ、それはアナタが嘘吐きだと認めているだけですよ。そうやって本音を明かしたが最後、明かされた相手はアナタのことが信用できなくなってしまうのです。
ですから、褒めるときには「その賛辞に値するか否か」をしっかり見極めることが重要です。
仕事ができないよう人のように見えても、少なからずいいところはあるものです。
例えば、何かを依頼したときの返事が遅くてイライラするようなことがあるものの、仕事の確実さには問題がない相手がいたとしたら「いつも慎重にご判断してくださりありがとうございます」とひと言添えてみてはどうでしょうか。相手にその自覚がなく「なんだ?」と思われるかもしれませんが、褒められていることに気づかないわけではありません。
こうしたコミュニケーションを続けていれば、相手のパフォーマンスは確実に向上します。褒められたら嬉しい、だったらもっと褒められたいと思うのが人ですからね。
ただし、アナタが考えもなしに調子のいいことをいう人だとか、心にもない嘘を吐く人だと認識されているとしたら逆効果です。だって、そういう人に褒められるということは、ほぼ完璧に嫌味だとバレてしまうからです。
誰かを褒める、時には手放しで賞賛することが自然にできる人はそれほど多くないのですが、そういう姿勢を自然に出せる人はどこにいっても信頼されます。
繰り返しますが、裏表のある人は別ですよ。散々調子のいいことをいっておきながら陰でバカにしていたなんてことが露見しようものなら、それまで築き上げた信頼はゼロどころか一気にマイナスにまで落ち込みます。
ただ、「裏表のない人」と評価されている人の「褒める」「賞賛する」は確実に効きます。
気をつけなくてはならないのは、根拠のない賞賛です。考えもなしに「すごいですね」とか「すっごーい!」などと持ち上げたとき、警戒心の強い人や根が意地悪な人は「どこがですか?」と真顔で尋ねてきます。
そこで「あ、あの……」などと言いよどんでしまうとアウト。
どこが「すごい」のかを即答できるようでなければ意味がないのです。
と、ここまで下地ができたなら、もっと強烈なセリフを口にしてもいいでしょう。例えば……
「お目にかかれて光栄です」
普通、日常ではこんなこと言いませんよね。
やりすぎだろうと思うかもしれません。
でも大丈夫。アナタが人のいいところを見つけて素直に褒めるタイプだと知られていてるのなら、こんな大げさな言葉が最大限の効果を発揮するのです。
「よくあんなこと言えるよね……」と仲間が呆れたって平気です。
「お目にかかれて光栄です」なんて、よほど偉い人でもない限り、そうそういってもらえる言葉ではないですし、冒頭に書いたとおり、褒められて悪い気がする人はいないのですから。
ひとつだけご注意を。
これ、異性にばっかりやってると敵が増えますよ。
どんな人にもいいところはあります。それを見つけたら同性もどんどん褒めてみましょう。それができるなら「光栄です」もアリなんです。
田中 裕
ライター。学生時代からあちこちに書き散らしてきたものの、売れっ子扱いされたことは皆無。活動領域は政治と最新ファッション以外ほぼ全部。経営ネタも学術ネタもオタ関連も網羅。器用? ゆえに貧乏。