抽出温度で変わる「緑茶」の成分
日本人なら飲む機会の多い「緑茶」ですが、実は、同じ茶葉を使っても抽出方法によって味や成分に違いが出ることを知っていますか?
お茶を入れる際のお湯の温度は、高ければよいというものではなく、引き出したいお茶の特徴や成分によって最適な温度があります。
これは、温度によって浸出する成分が異なるためで、渋みを持つ「エピガロカテキンガレート(EGCg)」は80度以上の高温で出やすい一方、旨み成分のアミノ酸は低温でも溶け出しやすいとされています。
さらに、カフェインは低温で抽出することによって減少することもわかっています。そこで今回は、低温抽出することによって得られる健康効果について、「低温抽出茶」と「氷水出し緑茶」に分けてご紹介します!
お湯出しでは得られない「低温抽出茶」の健康効果
■1:「低温抽出茶」(0.5〜10℃の冷水)
✔︎カフェインが激減
0.5~10℃の冷水でお茶を入れると、80℃で入れた場合よりもカフェイン量が格段に少なくなることが判明。農研機構の実験によれば、10℃の冷水の場合は約半分、0.5℃の水では実に80%近くもの減少率となるというデータが出ています。
カフェインは覚醒作用をはじめさまざまな効果があることで知られている一方、飲む人やシチュエーションによってはそれらの効果がデメリットに働くことも。そのため、カフェインを控えたいという人は緑茶を低温で入れることによって、カフェインの摂取を抑えることが可能に。
✔︎渋みカテキンが出にくい
苦味成分のエピガロカテキンガレート(EGCg)は、低温で入れることによって抽出量が減少。そのため、苦味・渋みを感じなくなるため、お茶の苦渋味が苦手な人にもおすすめ。
■2:「氷水出し緑茶」(0.5〜4℃の氷水)
✔︎免疫力アップ
さまざまな健康効果が期待できる「氷水出し緑茶」の中でも特に注目したいのが、エピガロカテキン(EGC)が豊富なことで免疫力が高まる効果。
免疫細胞のひとつであるマクロファージは体内に生じた変性物質や細菌といった異物を捕食・消化する役割を果たしていますが、その食作用はエピガロカテキン(EGC)から発生する低濃度の過酸化水素(H2O2)により増強することがわかっています。
そのため、免疫力低下の原因がマクロファージの食作用活性の低下がもたらす病原体認識不良であった場合、「氷水出し緑茶」を長期的に飲用することで病原体の認識能力が改善し、感染症リスクが低減するのではと期待されています。
✔︎抗ストレス効果
2013年、テアニンには社会心理的ストレス(対人関係に起因するストレス)の蓄積による老化の促進を抑制する効果があることが動物実験により示されました。
さらに、2016年にEGCにもテアニンと同じように対人ストレスによるストレスホルモンの増加に起因する副腎肥大を抑制する働きがあるとする研究結果が動物実験によってわかりました。
テアニンとEGCの抗ストレス効果がカフェインによって阻害される論文も発表されており、EGCが豊富、かつ低カフェインの氷水出し緑茶は抗ストレス効果が高い飲みものであると考えられます。
伊藤園から発売中の「お〜いお茶 新緑」は、前述のテアニンが最も多い一番茶を100%使用。抗ストレス効果が期待されています。飲むシチュエーションや味の好み、抽出したい成分などによって、飲み方を変えてみるのもおすすめです!
情報提供元/お〜いお茶PR事務局
初出:しごとなでしこ
教えていただいたのは…物部真奈美先生
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 上級研究員/理学博。
専門分野は放射線生物学および食品機能学で、現在は茶葉の成分と身体に与える影響について研究を続けている。