困った! 急遽プレゼン担当者になっちゃった! とならないために〜後編〜
夏真っ盛りで、蒸し蒸しするこの時期。仕事をスムーズにこなして気持ちだけでも爽やかに過ごしたいですよね♪
前回は、新入社員の撫子ちゃんが「社内プレゼンテーション」をすることになったので、準備のコツについて紹介しました。
ステップ[1] 目的を押さえる
ステップ[2] 聴き手を理解する
ステップ[3] 聴き手の導き方を決める
良いプレゼンテーションにするためにはこの3つのステップをきちんと踏むことが大切ですが、前回は「ステップ[1]目的を押さえる」について学びましたよね。
その続きとなる今回のテーマは、
ステップ[2] 聴き手を理解する
ステップ[3] 聴き手の導き方を決める
について。
引き続きグロービス講師の鳥潟幸志先生といっしょに学んでいきましょう!
■プレゼンテーションは「誰」に話すんだっけ?
鳥潟先生:では、次に「ステップ[2]聴き手を理解する」に進みましょう。
撫子:聴き手の理解…今までこの視点を考えたことなかったです。
鳥潟先生:前回「良いプレゼンテーションは人を動かす」とお伝えしましたね? その動かす「人」、つまりターゲットを理解しなければ、伝わるものも伝わらなくなってしまいます。整理した社内プレゼンテーションの最終目的は「営業リソースの投入を判断してもらう」でした。その判断をしてくれる人が聴き手ですね。
撫子:はい、わかりました! でもどんな情報が必要なのでしょうか?
鳥潟先生:では、それを考えていきましょう。次の図を見てください。
▲出典:グロービス学び放題
鳥潟先生:「聴き手自身の状況」「今回のテーマに関する認識・意見・感情」「聴き手と自分との関係」。この3つの要素がわかれば理解できます。
まず、今回のプレゼンテーションにおけるもっとも重要な聴き手はだれでしょうか?
撫子:営業部の部長です。
鳥潟先生:なるほど、その方はどんなキャリアを積まれて、どんな性格の方ですか?
撫子:えっと、我が社に入ってきて5年で、その前の企業ではエリア売上1位を達成したエースだったそうです。
鳥潟先生:では次に、その方は今回のプレゼンテーションにどれくらい関心をおもちかわかりますか? …というように、考えていきます。
撫子:なるほど。営業部の部長の情報を整理してみます!
【最重視する聴き手:営業部の部長】
・組織上の地位・立場:営業部門のトップ。マーケティング部と連動して、直接的に売上をつくる部署の統括
・キャリアと能力:転職してきて5年。前職でエリア売上1位を達成したエース。
・性格・感情:ロジカルで冷静。合理的なやり方が好き。
・興味・関心の強さ:既存商品Aの売上向上につながることならばメリットがある、と思っている。
・何をどこまで知っているか:営業部の部下から課題が上がってきたので、マーケティング部に依頼した。
・困っていること:既存商品の合理的な売り方で行き詰まっている部下がいる。
・聴き手との関係性:マーケティング部(他部署)のいち新入社員という認識。
・自分との力関係:向こうが上だが、直属の上司というわけではない。
鳥潟先生:ターゲットがかなり具体的になりましたね。
■理想の結果に聞き手を導こう!
鳥潟先生:では、具体的になった聴き手「営業部の部長」に、何を伝えるのか、考えましょう!
撫子:はい!
鳥潟先生:伝える内容は、次の順番で考えると良いですよ。
まず、ステップ[1]で考えた「目的」とステップ[2]で整理した「聴き手」を使います。
「聴き手」がプレゼンテーション後に「目的」とするアクションをするにあたって、知りたくなるであろう点・疑問を感じそうな点を洗い出します。
次に、出てきた疑問点に、優先順位をつけ、絞り込んだ疑問点に対するメッセージ・回答を準備します。最後に、その回答を支える根拠や理由付けなどの要素を考えていきます。
▲出典:グロービス学び放題
鳥潟先生:こうやって順を追って考えることで、プレゼンにおいて「聴き手」の納得を得られ、「目的」とする行動を実行してもらえる流れを作ることができます。
撫子:事前にここまで考えることができると、プレゼン中に急に質問されても、きちんと答えることができそうです!
鳥潟先生:ちょっとだけ留意点があります。聴き手の疑問に答えるメッセージについて、わかりやすく誤解のない表現になっているかどうか、そして聴き手の理解を超える説明をしないように心がけてくださいね。「聴き手」視点に立つことが重要ですよ。
■聴き手を飽きさせない効果的な伝え方とは?
撫子:これで準備はばっちりですね! ではさっそく…。
鳥潟先生:おっと、待ってください。ここで更にセンスの良いプレゼンテーションにするためにしたいことがあります。まず、話の流れ「ストーリーライン」づくりです。
撫子:あ、聞いたことがあります! 飽きさせないための工夫、ということですよね。
鳥潟先生:そうですね。まず、プレゼンテーション全体を通じて「聴き手」が一番知りたいことに早く到達するということですね。そして「聴き手」の関心が高いことに時間を割くこと。この2つがポイントです。よく話すとき、想定外に前振りや付け足しの情報に時間が掛かってしまったりしますよね。
撫子:たしかに。遠回りしてしまったりします。
鳥潟先生:良いプレゼンテーションとするために「知りたいことを前に、関心あることを手厚く」と覚えてくださいね。
撫子:そういえば、プレゼンテーションが上手な先輩を見たことがありますが、興味をひきつけるような笑いをとったり豆知識が入っていたのも覚えています。
鳥潟先生:そこまでできたらパーフェクトですね! ぜひ目指してみてください。
■センスの良いプレゼンテーションにトライしよう!
撫子:あとは資料をつくって挑むだけ…!
鳥潟先生:おっと、待ってください。最後に、立ち居振る舞いと話し方についてお伝えしましょう。撫子さんは“ひげ言葉”って知っていますか?
撫子:ひげ言葉、ですか? わかりません。
鳥潟先生:「えー」や「あのー」、「ですけれども」などの内容と関係なく合いの手のように入れられる言葉です。
撫子:あっ、よく聞きます。それに自分でも使ってしまうかも。
鳥潟先生:ひげ言葉が多いと、プレゼンテーションに集中してもらなくなってしまうリスクがありますので、なるべく使わないように心がけたいですね。
鳥潟先生:そして、アイコンタクト。目を見て話すことを意識しましょう。できれば、1人1人には2〜3秒視線をあわせ、まんべんなく会場を見渡せるといいですね。
撫子:うぅ、そこまで余裕がだせるかわかりませんが、挑戦してみます。
鳥潟先生:あとは姿勢や無駄な動きを減らせると良いですね。よくやってしまうのは、片手に持ったペンのキャップをカチカチしてしまったり、横に揺れたり。
撫子:確かに、プレゼンテーション中に無駄な動きがあると、内容に集中できません。意識してみます。
鳥潟先生:はじめてのプレゼンテーションでここまでできたらとても印象に残ると思いますよ。がんばってみてくださいね!
■撫子ちゃん、いざ、プレゼンテーションへ
鳥潟先生:さて、今までにお伝えしたステップを使ってプレゼンテーションに挑めば、きっとプレゼンの目的を達成できると思いますよ。「聴き手」のことを忘れないように。
撫子:はい、ありがとうございます! がんばります!
編集部:前後編でお伝えした「プレゼンテーションスキル」いかがでしたか? 撫子ちゃんのプレゼンテーションもきっと成功するはず。みなさんもこのステップを実践して、お仕事をスムーズに進めるために効果的なプレゼンテーションに取りくんでみてくださいね♪
初出:しごとなでしこ
今回話を伺ったのは…鳥潟幸志(とりがた・こうじ)先生
グロービス講師
【略歴】埼玉大学教育学部卒業 グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了
学位:MBA
その他プログラム:神戸大学大学院ベンチャーファイナンス実践Program修了
サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタントとして、金融・旅行・サービス業のネットマーケティングを支援。その後、デジタル・PR会社のビルコム株式会社を共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーション等、経営全般に10年間携わる。
グロービスに参画後は小売・グローバルチームに所属し、コンサルタントとして国内外での研修設計支援を行う。現在は、社内のEdtech推進部門にて『グロービス学び放題』の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修において思考系、ベンチャー系等のプログラムの講師や、大手企業での新規事業立案を目的にしたコンサルティングセッションを講師としてファシリテーションを行う。
●鳥潟先生の講義をもっと見てみたい方は、こちらへどうぞ
▶︎グロービス学び放題