カレーマニアが教える! インドカレーの正しい食べ方
ここのところカレーに対して興味を持つ人も増えてきて、友人知人からカレー会に誘われることも多くなってきました。数年前まではカレー会というとマニアが集まる会ばかりだったのですが、去年あたりからマニアじゃない人達も本格的なカレーを欲するようになってきたのか、おすすめのメニューや、正しい食べ方を教えて欲しいと言われることもしばしば。
そこで今回のカレーなでしこは趣向を変えて、インドカレーの正しい食べ方についてまとめていきたいと思います。
■1:カレーは右手で食べる!?
インドはヒンドゥー教とイスラム教の信者が多く、その二つを合わせるとインド国民の9割にもなるといいます。インドでは左手は不浄の手と呼ばれる為、右手を使って食べると言われているのですが、実はイスラム教では特に不浄ということではないという説もあります。ヒンドゥーでは不浄の手とされますが、これは男性のみの場合で女性にとっては神聖な手とされることもあるくらい。
では結局どっちなんだというと、慣例としてインドでは左手をトイレ用に使うんです。インドのトイレではトイレットペーパーが無いことの方が多いです。つまりそういうことです。そして飲食店に行ってもスプーンやフォークなどを出してくれない所もあります。ですから衛生的な意味で右手で食べるということなんですね。
しかし、インド人にも色々。何しろ13億人もの人口を誇る国です。宗教が違えば左手を使う人も当然いますし、だからといって別の宗教の人から怒られるわけでもありません。つまりは、自由なんですよ。左利きなら左手を使っても大丈夫。日本人でしたらインド人から見ても外国人ですから、特に何とも思わないでしょう。
■2:ナンを食べるときは、細い方から!?
ナンは涙型で焼かれることが多いのですが、細い方から食べるというのが基本のスタイルです。これはその方が右手だけで千切りやすいという理由から。インド人はナンを千切る時にも右手しか使わない人が多いんです。しかしこれも結局自由。流石にナンをナイフとフォークで切って食べるのはちょっとおかしいですが、両手を使って千切っても問題はありませんよ。
■3:ミールスは混ぜて合わせて食べるべき!?
ここ数年で一気に知名度も人気も上がった南インド料理の定食ミールス。
ご飯のまわりに沢山のカレーやおかずがカトゥーリ(小皿)に乗り、見るからに美味しそうな料理です。これについては何も知らないで食べるとその魅力を存分に味わうことができない可能性が高いので、正しい食べ方をまとめておきましょう。
まずご飯以外のカトゥーリを全部ターリ(大皿)の外に出します。そしてご飯を広げ、そこにカレーを少しずつかけ、混ぜ合わせて食べるというのが本式。
パパド(豆の粉のせんべい的なもの)は細かく割ってふりかけて食べる人が多いですが、そうしないといけないわけではありません。
ダヒ(ヨーグルト)がカトゥーリに入っていることもありますが、これはデザートではなく、カレーと混ぜ合わせて食べる為のものです。
といっても、日本のインド料理店だとフルーツの入ったヨーグルトがデザート的にターリに乗っていることも少なくありません。心配ならまず少し食べてみて、甘かったらデザート、砂糖が入っていないプレーンなものだったら混ぜる用と考えておけば間違いないでしょう。
とにかく、混ぜて食べると美味しさが確実に上がるんです。これだけは覚えておいて欲しいです。
■4:手で食べると美味しい!?
僕はインドやインド近隣諸国の方と食事することも時折あるのですが、やはり手で食べる人が多く、手で食べた方が美味しいと勧められることも少なくありません。何故手で食べると美味しいかというと、馴染み方が違うというのが理由としてあげられるでしょう。スプーンで食べるよりも手で混ぜ合わせて食べた方がカレーとご飯の馴染みが良く、一体感は確かにあります。
しかしここは日本です。カレーといえば熱々のカレーとご飯が最高なんだという方も少なからずいることでしょう。熱々を手で食べるのは非常に難しいですよね。つまりは熱々のカレーならスプーンを使った方が美味しくいただけるというわけです。インド現地の料理店では日本のように熱々のカレーが出てくることはほとんどありません。手で食べられるくらいの温度な場合がほとんど。
日本の本格的インド料理店でも熱々じゃない場合がありますが、それは手で食べやすくするためという理由なのです。また、日本人は口内調味をする民族です。皿の上で混ぜ合わせるのは行儀が悪いとされ、バラバラでとったものを口の中で合わせて味を調えるのは、日本人なら誰もが無意識にやっていること。インド人は口内調味をしない代わりに皿の上で混ぜているだけ。そういう意味でも、日本人が手で混ぜる必要性は特に無いのです。
ちなみに僕はというと、手食はほとんどしません。現地の方と現地の本格的な料理を味わう場合には、親善の意味も込めて手で食べることもありますが、一人で食べる時や日本人と食べる時にはスプーンを使います。その方が食べやすいですし、馴染み方が良くなることより、熱々で食べることの方が僕にとっては重要だからです。
結局は好きに食べれば良いんです。ただ、食わず嫌いはいけません。一度やってみる価値はあると思いますよ。事実僕のまわりの日本人でも、マニアになればなるほど手で食べた方が美味しいという人の割合が増えますから。もちろん僕のように手で食べないマニアもいるので、どちらが正解というわけではなく、どちらも正解なんです。ですから、自分の食べ方を他人に勧めるのは良いとしても、それが正しいんだからそうしろと押し付けるのは良くないと思っています。
以上、色々とインドカレーの正しい食べ方について書いてきましたが、結局のところ、正しい食べ方というものはありません。日本人であれば右手を使っても左手を使っても良いですし、手で食べてもスプーンを使っても良いんです。正しい食べ方というものがあるとすれば、美味しく、楽しくいただくということくらいでしょうか。
楽しく食べるという意味では、本格的なインド料理店で手で食べていると店員さんに褒められ、仲良くなれることもあるので、そっちの方が楽しいかもしれません。美味しく食べるという意味では、熱々をスプーンで掻き込んだ方が美味しいと感じる人もいるでしょう。
何度も繰り返しますが、食べ方は自由です! 色々な食べ方を試した上で、自分が一番美味しく、楽しいと思う食べ方で食べてください。
初出:しごとなでしこ
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均900食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。
http://www.akinolee.tokyo/