現役のアラサー女性弁護士が解説する今知っておきたい法律問題や相談内容にお答えする連載、第4回目は「恋人間のお金の貸し借り」について。
1回目の記事は「ネット上に悪口を書かれた! 消す方法はある?」、
2回目の記事は「これってネットストーカーなの?」、
3回目の記事は「許せない! 挙式3か月前に彼氏から婚約破棄された…慰謝料はとれる!?」でした。
今回は33歳バリキャリ女性から、怒り心頭なご相談です。
相談「別れた彼に貸したお金が総額100万円。取り戻す方法はありますか?」
「私は大手企業の総合職としてバリバリ働く33歳です。この前まで付き合っていた年下の彼は、いわゆるフリーターでした。
イケメンで優しい彼に夢中になり、ついつい甘やかしてしまい、言われるままにお金を貸していました。
金額は全部で100万円ほど…。貸したときは、“ちゃんと返す”って言ってくれましたが、先日別れることになったら、“あれは恋人同士のお金の貸し借りだし、借用書だって作っていないんだから、無効だ!”って言い出して…。なんとかしてお金を取り返したいです」
さっそく働く女性の仲間のひとり、弁護士なでしこ先生の見解を聞いてみましょう。
恋人間のお金の貸し借りも「貸借契約」といえます
お金の貸し借りのことを、法律上は「金銭消費貸借契約」と言います。
契約は、契約書がなくても、お互いの意思が合致してさえいれば有効に成立します。
つまり、恋人間のお金の貸し借りであったとしても、また、契約書や借用書を作っていなかったとしても、お金の貸し借りがあった以上、彼にはお金を返す義務があります。
証拠は必要?
彼が自主的に返してくれない場合には、法律上の手続によって返還を請求することになります。その場合、お金を貸していたこと、すなわち、
1:彼にお金を交付したこと
2:彼がお金を返すと約束していたこと
以上を客観的に証明できるような証拠が必要になります。
契約書や借用書があればベストですが、それがなければ、彼の口座にお金を振り込んだ記録や、借りていた“〇〇万円を返すのをちょっと待ってほしい”といった、お金の貸し借りを認めるような内容の、彼からのLINEやメールが証拠になります。
証拠になりそうなLINEやメールは、スクリーンショットを撮ったり印刷するなどして、確実に残しておきましょう。証拠になりそうなLINEやメールがない場合、「貸したお金を返して」といったメールをこれから送信し、それに対する彼からの「もう返す必要はない」などの返信を証拠にすることも考えられます。
お金じゃなくてプレゼントだったら?
以前、こんな相談もありました。
「この前まで付き合っていた年上の彼は、とってもお金持ちで気前が良く、付き合っている間、ブランド物のバッグや靴をたくさん買ってくれました。ところが、別れ話を切り出した途端に怒り出してしまい、これまでに買ってくれた“プレゼントを全部返さないと許さない、絶対に別れない”、と言われてしまったんです。これって法律的には返さないといけないんでしょうか?」
女性から別れ話をした場合、男性から、これまでにあげたプレゼントを返せ、と言われるケースはよくあるようです。
しかし、この場合は返す義務はありません。
先ほどの金銭的な貸し借りと異なり、相手に何かを贈与した人は、基本的にそれを取り返すことはできません。もちろん別れた場合でもです。
最後に…。
男女間での金銭トラブル。二人の関係が上手くいっているときはいいですが、特に別れる際などに問題になります。自分がお金を貸し、必ず返してもらいたいと思っている場合には、証拠をきちんと確保すること。プレゼントはもう戻ってこないと心得ること。
それからこれは法律とは関係のない当たり前のことですが、相手の気持ちを考えて、誠実に付き合うこと。トラブルが起こらないよう気をつけつつ、楽しく恋愛をしてください♡
初出:しごとなでしこ
弁護士なでしこ
有名大学ロースクールを修了後、司法試験に合格。
都内法律事務所で働くアラサー弁護士女子。
業務分野は企業法務から一般民事まで幅広い。
趣味は旅行。今は『東京タラレバ娘』にハマり中。