最近、ニュースやワイドショーで次々と取りざたされているセクハラ問題。「あれはセクハラだったの?」「どう対処したらよかったの?」とモヤモヤした経験をもつ人、今まさに直面している人も多いのでは。だれもが被害者になる可能性がある「セクハラ」。私たちがどう向き合えばいいか、読者のリアルな体験談とともに考えます。
Oggi.jpの緊急アンケートには、約300人から体験談が寄せられました。なんと読者の82%が「セクハラを受けた経験あり」と回答! そしてほぼ100%のセクハラは、仕事関係者から。この現実にヒステリックにならず、でも確実に対処する方法を全力で取材しました。
緊急アンケート! セクハラ実態調査
Q.セクハラを受けた相手は?(複数回答)
直属の上司 52%
その他の上司 50%
会社の役職者 46%
クライアント 21%
同僚 14%
上司など目上の人から職場内や飲み会などで受けたケースが圧倒的。立場上、反論や抵抗ができず「業務の一貫だと思ってスルーしてる」(28歳・IT)という意見が多い。
Q.どんなセクハラを受けた?(複数回答)
1位 言葉によるセクハラ
2位 身体的なセクハラ
3位 態度によるセクハラ
言葉によるセクハラは約8割、「お尻を触られる」など身体的な被害も4割超が経験。3位には「脚や胸をジロジロ見られるのもセクハラ?」(32歳・営業)という迷いの声も。
Q.そのとき、どのように対処しましたか?
笑って受け流した 71%
「抵抗した」など相手にハッキリと拒絶の意思を示した人は1割とごく少数。かつての常識だった「受け流すのが賢明」という風潮はOggi世代にもまだ根強いことが明らかに。
セクハラのボーダーラインは?
プロが解説します
フェリタス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士
石川弘子さん
1973年生まれ。さまざまな企業の労務相談を受けるほか、セクハラ・パワハラ防止コンサルタントとして、企業向けの研修なども行う。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)。
アディーレ法律事務所 弁護士
岩沙好幸さん
1981年生まれ。セクハラ・パワハラなど労働問題を主に扱う。コメンテーターとして各種メディアでも活躍。著書に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマ・ドット・コム)。
「仕事の人間関係で、あなたが性的にイヤだと感じたら、それはセクハラという人権侵害です」
厚生労働省の指針によると、セクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」)は、〝職場において行われる、相手の意に反する性的な言動〟と定義されている。
「セクハラには、職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、拒否した相手に減給や降格などの不利益を与える〝対価型〟と、職場にヌード写真を貼るといった性的な言動で就労環境を不快にする〝環境型〟の2種類があります。いずれも人権侵害行為であり、悪質な場合は強要罪や名誉毀損罪などといった刑法に触れる可能性もあります」(岩沙さん)。
「ただ、具体的には、どのような行為がセクハラにあたるのかはあいまい。基本的にされた側が性的に気持ち悪い、イヤだと思えばそれがセクハラだからです。抱きつくなど性的な身体的接触は論外ですが、なにげない会話や軽いボディタッチも、された人の受け止め方によってはセクハラになりうる〝グレーゾーン〟です」(石川さん)。
「たとえば男性に肩をポンと触られるという行為も、女性が『Aさんからなら気にならないけれど、Bさんにされると気持ち悪い』と受け止めることはよくある話。その場合Bさんの行為は『相手の意に反した言動』となり、セクハラになります。〝相手による〟と言ってしまえば身も蓋もありませんが、結局は相手と信頼関係が築けているかが、セクハラになるかどうかのボーダーラインになるんです」(岩沙さん)。
「ちなみに、同じことをされても不快だと思わず、ジョークとして受け入れたり、下ネタで応酬できる女性がいるのも事実。女性同士でも受け止め方は当然違うし、個人差が大きいものと認識して。ただ、自分がイヤだと思っているのであれば、拒む意思表示をしたり、周囲に相談したりするのは、自意識過剰でもなんでもないので安心してください」(石川さん)
たとえばこれはセクハラ? それとも… ボーダーライン早見表
読者が体験した数々のエピソードが一般的にセクハラと認定されるかどうかプロに判定してもらいました。
反復性、継続性があればグレーでもセクハラ認定されることも。
セクハラかどうかは受け手しだいのため、厳密にはすべて〝グレー〟が正解。ただし、胸を触るなど性的な接触以外は、セクハラとは言えても、1回きりでは裁判で勝ったり制裁を下すのは難しい。「しつこく」「何度も」繰り返されればセクハラと判断される可能性が高まる。
Oggi9月号「セクハラって結局何?」より
画像/Shutterstock 取材・文/井上佐保子(田中さん分) 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部