予想をはるかに上回る数と内容のエピソードが寄せられたOggi読者のセクハラ体験談。今どきのセクハラのリアルとともに社労士と弁護士による実践的なアドバイスも紹介します。
「上司から脚、胸を触られて拒んだら評価を下げられた」
32歳・会社員の体験談
2年ほど前、社員数50人程度のベンチャー企業に転職しました。30代後半独身で営業の現場を取り仕切る直属の男性上司が、お気に入りの女性部下にばかりいい仕事を回していたり、入社直後から違和感はあったんです。でも会社も社員も若いからか、だれも「おかしい」とは認識していないようで…。それでも上司だし、と努めて和やかに接していたら、3~4か月たったころに部署の飲み会で、隣に座った彼がテーブルの下でサッと太ももを触ってきたんです。さらにはお店を出て駅に向かう道で肩を組んできて、彼の手の甲が私の胸に…。まるで痴漢ですよね。頭が真っ白になってしまって、その場ではとっさに抵抗できませんでした。
ただそれ以来、彼とはできる限り関わりをもたないようにして「イヤ」という態度をとっていたら、1か月後、今度はボーナスに直結する業績の評価を下げられました。彼が仕事を割り振っているので、そもそも私のところには営業成績が出しづらい厄介な案件しか回ってきませんし、それをさしおいても不当に低い評価でした。別の飲み会の帰り際に彼がスーッと寄ってきて「俺と仲よくしておいたほうがいいのに」とささやいたのは、そういうわけだったんです。
ちなみに、社内にセクハラ相談窓口はあったのですが、担当者は新卒2年目の男性社員。セクハラ対応のトレーニングを受けているわけでもなくプライバシーが守られないと感じたので、相談はしませんでした。ただ、同僚の中にはもっとひどいことをされていた女性や、男性でも不当な評価をされている人がいたので、同じチームの5~6人で示し合わせ、彼のさらに上の上司に各自訴えることに。その結果、彼は降格にあたる異動を命じられ退職していきました。
私は…といえば、その上司がいなくなって気は楽になったものの、彼の行為を許してきた職場環境に嫌気がさして、転職。今は異業種の大手で働いています。社員のコンプライアンスの意識も高くてホッとしています。ただ上司に対して必要以上に気を使うクセが抜けなくて…。トラウマですね。
プロのセクハラ判定&アドバイス
フェリタス社会保険労務士法人
特定社会保険労務士
石川弘子さん
「企業にはセクハラを防止する義務があるので、本来なら社内窓口をもっと整備すべき。頼りにならないようなら、専門知識をもった外部の相談機関に相談してもよかったかもしれません」
1973年生まれ。さまざまな企業の労務相談を受けるほか、セクハラ・パワハラ防止コンサルタントとして、企業向けの研修なども行う。著書に『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)。
アディーレ法律事務所 弁護士
岩沙好幸さん
「これは、典型的な対価型セクハラですね。法律的には慰謝料請求もできますし、迷惑防止条例違反で刑事責任を問うこともできる、悪質なケースです」
1981年生まれ。セクハラ・パワハラなど労働問題を主に扱う。コメンテーターとして各種メディアでも活躍。著書に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマ・ドット・コム)。
Oggi9月号「セクハラって結局何?」より
画像/Shutterstock 取材・文/井上佐保子(田中さん分) 構成/酒井亜希子・佐々木 恵・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部