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2018.06.16

「人間は必ずミスをするもの~批判を怖れずに、本音を語る」|国際政治学者【三浦瑠麗】インタビュー

【三浦瑠麗】さん独占インタビュー

キャリアを望んでもいいのかと自問した日々

正規雇用されて就職したこともなく、まだ何者でもない。それが、読者のみなさんと同じ年ごろの私です。博士号を取るため大学院で勉強していたので、30歳まで学生でした。最初から国際政治学を志していたわけではなく、大学4年までは理系の農学部。入試で暗記科目が少ないからという消去法での専攻でしたから将来を描けず、卒業単位をひとつ残して留年を決め、ひたすら自分に向いていることはなんだろうと考えていました。

22歳で学生結婚をしているのですが、実はそれまで実家の方針でテレビを見たことがほとんどなくて。ニュース番組も見せてもらえなかったんです(笑)。結婚後にやっと自由に見られるようになったテレビでイラク戦争の実情を知り、国際政治に関心をもったことがこの道へ進んだ最初の一歩です。

子供が欲しいと思いながら、なかなか授からず結婚から7年。ちょうど博士論文を書いているときに妊娠していることがわかりました。論文の追い込みと並行しながら、引越をして新生活の準備を整え、なんとか論文を提出。近場への小旅行で少し息抜きできたかなというところで、切迫早産を経験、長女は死産でした。思い返せば、あれもこれもと頑張りすぎてしまったのかもしれません。

寝ても覚めても、論文審査の結果より亡くした子供のことで頭がいっぱいで、自分はキャリアを目ざしてはいけないんじゃないかという気持ちにもなりました。

三浦瑠麗

出産直後、非正規アルバイトの時期も

私自身は、母親が専業主婦で5人の子育てをした保守的な家庭に育っています。30歳でもう一度妊娠して、今の娘が生まれてきてくれたことは大きな喜びでしたが、当初はどこかで「仕事より子供」という固定観念があったように思います。

ただ、夫はむしろ逆で「働かざる者、食うべからず」という人。夫の母親はアメリカ人で小学校の先生をしていて、結婚して日本に渡ってきてからも英語の教師を続けていました。’70年代に青春時代を過ごしているので、フェミニズムの影響も受けている。そんな義母に育てられた夫にとって、女性が働くのはごく当然なことで、学業でも仕事でも、私はずっとお尻を叩かれてきましたね。

バリバリ働いてきた…というイメージをもってくださる方も多いのですが、たぶんほかの人と結婚していたらこうはなっていません(笑)。働きながらの子育てって、乳児のうちは本当に泣きたくなることが多いものです。そういうときに「頑張ろうよ!」と活を入れながら一緒に子育てに関わってくれるか、「無理して働かなくても家にいたらいいよ」と言われるかで人生は変わるんだなと。親友みたいな人を選んでよかったなと思います。

とはいえ、出産直後の私はまだ非正規のアルバイト。時給は850円でした。勤務先の大学では、チケットや宴会の手配から、研究や国際会議発表の準備まで、事務、運営スタッフ、若手研究員の役割をひとりで担っていましたね。

同期の中には早々に准教授に就いている人もいる中、私は1年単位の雇用に移行してからも立場は変わらない。研究者が食べていくには、安定したポジションが必要です。赤ちゃんを保育園に預けて働いているのに、「本当にこれがやりたかったのか」と疑問を抱いてしまって。

研究

本の出版と独立がきっかけでテレビ出演

初めて本を出版できた後も状況はあまり好転しなかったので、35歳で独立して会社を興すことにしました。不思議なもので、私自身は何も変わっていないのに、独立したことで元の職場からその後講師のオファーが来ます。本やブログを読んだ出版社の方が新書の出版をもちかけてくださり、そこからテレビ出演にもつながっていきました。

伝える仕事をするうえで、いわゆるエリートだけが知っていても世の中に伝わっていなければ意味がない、という思いは強くあります。本音で語られてこなかった部分に触れて端的に言ってしまうところがあるので、ネットで炎上してお騒がせしてしまうことも。ただ、「白か黒かの二項対立に当てはめるのではなく、グレーの部分のニュアンスを大事にする」「自分が本当に思っていることを言う」という軸は大事にしています。

アメリカもトランプ大統領が登場する前に、だれかがヘイトのない形でもう少し本音で語っておくべきだった。移民や安全保障の問題は現実としてあったのに、エリートが触れないでいる間にトランプさんがかっさらってしまったんですよね。

叩かれたり批判されると痛みが伴いますが、完璧であろうとすると何も冒険できなくなってしまう。人間って、最大限の努力を払っても必ずミスはあるんです。ミスしたときにどうするかを間違えなければいいんじゃないかと。

三浦瑠麗

完璧主義を捨てることで自由になれた

完璧主義を捨てることの大切さは、プライベートでも実感します。仕事の日程調整は夫にも協力してもらい、彼の予定と合わなければナニーさんに依頼。夫が出張する時期は、私が仕事をセーブする。お互いの仕事も育児も別々のことではなく一緒に考える、家業のような感覚です。

それでもときどき、娘に「ママ、ニコッてして」と言われます。自分が上機嫌でいられるように生活を設計しなくてはと反省しますね。キャリアやお金だけでは幸せにはなれない。人ひとりの労働力には限りがあるので、節約して追い詰められるより、お金がかかってもアウトソーシングに頼って夫や子供に優しくできるほうがいい。そうすると、こんなにラクさせてもらってるんだからもっと頑張ろう…とプラス思考になれますし、言い訳できなくなります。

もしいつかお金をいただけなくなったとしても、書きたい、発信したいという思いはあります。そのためには、自由じゃないとダメだなと。何かに所属していると、どちらに付くか陣営を選ばなくてはいけない場面も出てくる。そういう意味では昔から保険をかけて生きてきた気がします。人間関係も、ひとつにどっぷりにはならない。複数の場に生きることで、極端に寄らずにいられます。

迷ったときはロールモデルをイメージして、彼や彼女だったらどうするだろうと考えるようにしています。「ヒラリーだったら?」、「義母だったら?」というように。

今の時代はだれかひとりが「人生こうあるべき」と滔とう々とうと語るのも、完成されたひとつのモデルを提示するのも無理がありますよね。人に相談すると揺れやすいので、本当に尊敬できる人をカテゴリごとに見つけて、自分で想像したほうが解決することも多いんじゃないかなと。

負荷は、転機。もがいていれば、きっといい変化がやってくると思います。


Oggi6月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/石田祥平 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

みうらるり

国際政治学者。1980年、神奈川県生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学公共政策大学院修了。東京大学大学院法学政治学研究科修了。法学博士。専門は国際政治。2015年に、株式会社山猫総合研究所を立ち上げ代表となる。現在は、東京大学政策ビジョン研究センター講師を務める傍ら、各メディアで活躍。新聞、報道番組などのコメンテーターを務める。著書に『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮出版社)など。執筆連載は『週刊「山猫」ツメ研ぎ通信』(週刊新潮)、『優しさで読み解く国際政治』(Domani)など多数。2017年、正論新風賞を受賞。

現代日本が抱える問題点を対話でひもとく『国民国家のリアリズム』

三浦さんと、ナショナリズムをテーマにした作品を世に送り出してきた作家である猪瀬直樹さんの共著で、ふたりが徹底論議。自衛隊、憲法9条、戦略特区、五輪など、今まさに気になるキーワードと共に、トランプ時代の日本の針路を考える。¥840(KADOKAWA)

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