「こちらこそ」は敬語には当てはまりませんが、相手の言葉に応じ、敬意を払って返す丁重な言葉の一つです。
目次Contents
ビジネスシーンでよく耳にする「こちらこそ」というフレーズ。自然と口にしている人も多いでしょう。実は「正しい敬語かどうか」や「目上の方に使って良いのか」といった疑問を持つ人も少なくありません。また、メールなどの文章表現では迷いがちです。しかし、この「こちらこそ」を正しく使い分けられると、円滑な人間関係の構築や信頼につながります。
この記事では、「こちらこそ」が敬語として適切かどうか、その成り立ち、ビジネスでの活用例、間違えやすいポイントまで、背景から実践までをわかりやすく解説します。
「こちらこそ」は敬語? ビジネスシーンで迷わない使い方と基礎知識
まずは、言葉の基本をおさらいしましょう。意味や成り立ちを知ることで、自信を持って使えるようになります。
(c) Adobe Stock
「こちらこそ」の本来の意味と成り立ち
「こちらこそ」は、「こちら」と強調を表す係助詞「こそ」から成り立っています。相手から向けられた言葉や気持ちに対し、「私の方こそ、全く同じ気持ちです」と強調して返すニュアンスを持っています。相手の言葉を打ち消すのではなく、それを肯定した上で、自分の気持ちを丁寧に伝える、日本らしい奥ゆかしい表現です。
「こちらこそ」は敬語?
「こちらこそ」は、一般的な敬語の三分類(尊敬語・謙譲語・丁寧語)には当てはまりません。しかし、相手の丁寧な言葉に応じ、敬意を払って返す丁重な言葉の一つと捉えることができます。単体で使うというよりは、「ありがとうございます」や「よろしくお願いいたします」などの敬語表現と組み合わせることで、その効果を最大限に発揮する言葉です。
「こちらこそ」と類似表現の違い
「こちらこそ」と似た機能を持つ表現としては、以下のようなものがあります。
・「私も」「当方も」(やや軽めのニュアンス)
・「恐縮ですが」(より謙虚さを強調)
・「お礼申し上げます」(感謝の気持ちを前面に)
・「お力添えいただき感謝します」(相手の行為を具体的に称える)
「こちらこそ」の特徴は、相手の言葉や気持ちに共感しながらも、丁寧に自分の立場や思いを返す点にあります。他の表現と比べると、フォーマルさの中にも親しみやすさを残した、バランスのいい応答表現だといえるでしょう。

ビジネスメールでの「こちらこそ」の使い方と例文
ここでは「こちらこそ」を使った具体的な文例を紹介しましょう。
メール文中での「こちらこそ」の自然な使い方
ビジネスメールでは、相手からの感謝や配慮、協力の申し出に対し、自分も同じ立場・気持ちであることを伝える流れで自然に使えます。
例:
相手「ご協力いただきありがとうございます」
自分「こちらこそ、ご一緒できて光栄です」
このように用いると、柔らかく、かつ謙虚な印象を与えます。
(c) Adobe Stock
やり取りで気を付けたいフレーズと注意点
「こちらこそ」を使う際は、相手の立場や自分との関係性をよく見極めましょう。特に目上の方や社外の方に対しては、「こちらこそ、よろしくお願い申し上げます」や「こちらこそ、ご指導いただき感謝申し上げます」と組み合わせた表現を丁寧に使うのがベターです。
また、単独使用やカジュアルな言い回しは控えましょう。
よく使われる具体的な例文集
いずれも、相手への敬意や感謝が十分伝わるよう、状況ごとに使い分けできる文章例です。
・「こちらこそ、お忙しい中ご対応いただきありがとうございます」
・「こちらこそ、ご協力いただきまして誠にありがとうございます」
・「こちらこそ、今後ともよろしくお願い申し上げます」
・「こちらこそ、ご一緒できる機会を頂戴し、光栄に存じます」
・「こちらこそ、いつもご尽力いただき、ありがたく存じます」

「こちらこそ」を使う際は、相手の立場や自分との関係性をよく見極めて。単独使用やカジュアルな言い回しは控えましょう。
目上や上司への「こちらこそ」は失礼? 配慮すべきポイント
相手が上司や取引先など目上の場合、「こちらこそ」をそのまま使ってもいいのでしょうか? 疑問を解消していきましょう。
目上や上司に使う際の適切な敬語表現
目上の人や上司には単に「こちらこそ」ではややカジュアルに響く場合もあるため、「ご配慮いただき誠にありがとうございます」「今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます」など、相手の行動や立場への敬意を明確に伝えることが大切です。
例:「こちらこそ、今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ」の代わりに使えるフレーズ
より丁寧さを増したい場合や、場面によってはより改まった表現を選ぶことも効果的です。
・「恐縮ではございますが、こちらこそよろしくお願い申し上げます」
・「身に余るお言葉を頂戴し、感謝申し上げます」
・「このようなお心遣いをいただき、誠にありがとうございます」
・「過分なるお言葉に心より御礼申し上げます」
・「ご厚情に深く感謝申し上げます」
これらの表現は、相手の立場を尊重しながらも、自分の気持ちをより丁寧に伝える効果があります。特に改まった場面や重要なやり取りでは、上記のような表現を選ぶことで、相手への敬意がより明確に伝わります。

目上の人や上司には、相手の行動や立場への敬意を明確に伝えることが大切です。
「こちらこそ」の言い換え表現や類語と応用パターン
表現の幅を広げるために、「こちらこそ」の言い換えや応用パターンを知っておくと、コミュニケーションの質が高まります。状況に応じた使い分けができるよう、いくつかのバリエーションを紹介します。
「こちらこそ」の代表的な言い換え例
「こちらこそ」の柔らかさを生かしつつ、フォーマルな場や強調したい場面では、次のような表現に言い換えるとより印象的です。
・「恐縮でございます」(より謙虚な印象)
・「とんでもないことでございます」(相手の気遣いを受け止める)
・「光栄に存じます」(機会や申し出に対する感謝)
・「心より感謝申し上げます」(強い感謝の気持ち)
・「お気遣いいただき、誠にありがとうございます」(相手の配慮への感謝)
これらの表現は、状況や相手との関係性、伝えたい気持ちの強さによって選び分けることで、より適切なコミュニケーションが可能になります。
フォーマルな場面で使える敬語バリエーション
特に格式高い場面や重要な関係性においては、より丁寧で洗練された表現が求められます。
・「ご厚情に深謝申し上げます」
・「もったいないお言葉を頂戴し、恐縮の念に堪えません」
・「ご高配に心より御礼申し上げます」
・「このような機会をいただき、身に余る光栄でございます」
・「今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます」
これらの表現は、特に重要な取引先や上層部との対応、公式な書面など、より格式を重んじる場面で効果的です。状況に応じて使い分けることで、プロフェッショナルとしての印象も高まります。
間違えやすいポイント・NG例と正しく伝えるコツ
「こちらこそ」を使う際の落とし穴や注意点を理解し、より効果的なコミュニケーションを目指しましょう。
(c) Adobe Stock
NGとなるケースと理由
「こちらこそ」の使用で注意すべきNG例には以下のようなものがあります。
1:短すぎる返答
×「こちらこそ」(単独で使用)
理由:あまりにも簡素すぎると、誠意が感じられません。
2:場面に合わない使用
×「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」に対して「こちらこそ、ありがとうございます」
理由:相手の謝罪に感謝を返すのは文脈にそぐわず、誤解を招きます。
3:繰り返しの使用
×同じやり取りの中で「こちらこそ」を何度も連続で使用する
理由:形式的な印象を与え、真摯さが伝わりにくくなります。
4:具体性のない表現
×「こちらこそ、よろしくお願いします」(具体的な内容や文脈が欠けている)
理由:何に対しての返答か不明確で、相手の言葉への反応として薄い印象になります。
正しく伝えるコツとワンポイント
効果的な「こちらこそ」の使い方には、次のようなコツがあります。
1:相手の言葉や行動を具体的に受け止める
○「お力添えいただき、こちらこそ大変感謝しております」
(相手の具体的な行為に言及)
2:感情や状況に合わせた言葉を添える
○「こちらこそ、急なお願いにもかかわらず対応いただき、心強く思っております」
(状況と自分の気持ちを付け加える)
3:今後の関係性に言及する
○「こちらこそ、今後ともお力添えいただけますと幸いです」
(継続した関係性への期待を示す)
4:簡潔さと丁寧さのバランスを取る
○「こちらこそ短い準備期間にもかかわらず、ご参加いただき誠にありがとうございました」
(要点を押さえつつ丁寧さを保つ)
これらのコツを意識することで、「こちらこそ」という表現がより効果的に相手に伝わり、良好な関係構築につながります。
最後に
- 「こちらこそ」は敬語表現と組み合わせて使うとビジネスでも好印象です。
- 単体使用は避け、感謝や敬意を伝える表現と合わせましょう。
- 目上の人や取引先には、より丁寧な言い換えや表現を選ぶと安心です。
「こちらこそ」という短い言葉には、相手への敬意、感謝、そして共感の気持ちを込めることができます。完璧な敬語を使おうと身構えるよりも、「相手の心遣いに、心から応えたい」という気持ちが何よりも大切です。
この記事が、あなたのコミュニケーションをより豊かに、そして心地いいものにする一助となれば幸いです。
TOP・アイキャッチ・吹き出し画像/(c) Adobe Stock

執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
▼あわせて読みたい



