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2025.12.30

日本政治の歴史に新たな1ページ。2025年10月に発足した高市政権に期待することは!?

女性リーダーという存在自体が、「女性だってリーダーになれるんだ!」という、子供や若い世代への強いメッセージに。日本初の女性総理大臣が誕生した今、高市政権に期待することとは?

日本初の女性総理大臣誕生! 〝女性宰相〟は社会をどう変えてきたのか!?

英・サッチャー氏、独・メルケル氏に続いて、育児しながら首相を務めたNZ・アーダーン氏、現職の伊・メローニ氏… etc. 国を導いてきた女性リーダーたち、女性初の首相に就任した高市氏の政治について、専修大学人間科学部専任講師の村上彩佳さんに伺いました!

政治について教えてくれるのは…

専修大学人間科学部専任講師・村上彩佳さん

専修大学人間科学部専任講師・村上彩佳さん
むらかみ・あやか/1990年生まれ。大阪大学で人間科学の博士号を取得。博士課程と博士号取得後に日本学術振興会特別研究員に採用され、パリ第9大学訪問研究員を経て現職。専門は政治社会学。ジェンダーと政治、フランスのパリテ法などをテーマに研究している。

リーダーの多様性が社会を変えていく⁉

Oggi編集部(以下Oggi):連日、高市政権に関するニュースが飛び交っています。女性がリーダーになることで、日本の政治にも大きな節目が訪れたという気がしますが、村上さんはどう感じましたか?

村上さん(以下敬称略):率直に「ガラスの天井は破られた」と思いましたが、高市氏は同性婚や選択的夫婦別姓の導入に反対していて、ジェンダーの研究者としては手放しでは喜べない点もあります。でも女性政治家だって、革新的な人もいれば保守的な人もいるわけで、一枚岩じゃないのは当たり前。その多様性を示したという点では、風穴が開いたのかな、と。さまざまなバックグラウンドを持つ女性が政治の場に立ち、リーダーシップを発揮することは、民主主義にとって意味があることだと思います。

Oggi:海外に目を向けると、これまで数々の女性首相や女性大統領が登場しています。

村上:そういう意味では、世界の女性宰相たちも、多様なんです。保守系で、長く安定した政権を続けたドイツのメルケル元首相、若くて革新的なニュージーランドのアーダーン元首相、右派で知られるイタリアのメローニ首相などが代表的ですが、経歴も政治スタンスもさまざまですね。

Oggi:国のトップが女性になることで、政治には何か変化がもたらされたりするんでしょうか?

村上:よく「女性が政治でリーダーになるメリットは?」と聞かれるんですが、どうして女性だけに、メリットが求められるんでしょうか。「男性がリーダーになるメリットは?」なんて問いは向けられないですよね?

Oggi:た、確かに…!

村上:ただ、結果的にもたらされる影響は、もちろんゼロではないです。男女では経験してきたことが違うので、意識せずとも男性には見えてこなかったことはある。妊娠・出産をはじめ、たとえば生理用品のコストや、いつ月経が来るかわからない不安、更年期の辛さ…。そういう〝経験から来る当事者の視点〟が政治に生かされることは、やっぱり重要なことでしょう。

Oggi:そう思います。

村上:それに、女性がリーダーとして存在すること自体が、「女性だってリーダーになれるんだ」という強いメッセージになります。これまで日本では女性リーダーのみならず、女性政治家の数自体が少ないことで、「ロールモデルがほとんどいない→女性で政治家になりたい人も生まれにくい」という悪循環に陥っていました。ちなみに高市氏が目標とする政治家は、イギリス初の女性首相を務めたマーガレット・サッチャーさんで、日本の政治家ではありません。

Oggi:そんなところにも、女性政治家のロールモデル不足が象徴されているんですね。

村上:女性首相が誕生したことで、子供や私たち世代も「努力すれば、私もなれるかな?」と励みになるし、自分と同じ性別で、近い年代の人が議会にいると「あの人なら自分たちの声を聞いてくれるかも!」と思える。その意義は大きいですよね。

Oggi:高市氏が首相になって、男性では見えてこなかった視点を取り入れてくれるでしょうか。

村上:高市氏は、育児や介護といったケアの領域、女性の体に関するリプロダクティブ・ヘルス/ライツの問題に力を入れると発言しています。今後の動向を注意深く見守っていきたいですね。

高市氏、女性初の首相に就任

高市氏
代表撮影/ロイター/アフロ

日本で女性が参政権を獲得してから80年、男性中心だった政界で、初の女性トップが誕生。

高市政権
©️REX/アフロ

自民党と日本維新の会との連立政権として発足した新内閣は、燃料価格の是正や赤字企業・医療・福祉分野への支援、家事支援サービスの利用促進などを掲げている。

海外では珍しくない!? 政治スタイルも多様!国を導いてきた女性リーダーたち

マーガレット・サッチャー(1979〜1990年在任・イギリス)

マーガレット・サッチャー(1979〜1990年在任・イギリス)
©️Shutterstock/アフロ

高市氏が憧れる〝鉄の女〟
イギリス初の女性首相。国営企業の民営化や規制緩和を進め、強い経済を目指す〝サッチャリズム〟を推進。決断力ある姿勢で国を変革した。

アンゲラ・メルケル(2005〜2021年在任・ドイツ)

アンゲラ・メルケル(2005〜2021年在任・ドイツ)
©️TT News Agency/アフロ

危機の時代を導いた国民の母
100万人超の難民受け入れや脱原発の決断など、勇気ある政策で16年間国を率いた。科学者らしい冷静さと人道的な判断で安心と信頼の象徴に。

ジャシンダ・アーダーン(2017〜2023年在任・ニュージーランド)

ジャシンダ・アーダーン(2017〜2023年在任・ニュージーランド)
©️AFP/アフロ

首相在任中に産休を取得
コロナ禍には迅速なロックダウンを決断。銃規制、福祉強化の推進にも評価が。育児と政治を両立し、共感力と対話重視の姿勢で支持を集めた。

ジョルジャ・メローニ(2022年〜現在も在任中・イタリア)

ジョルジャ・メローニ(2022年〜現在も在任中・イタリア)
©️AFP/アフロ

イタリア初の女性首相も保守派
移民規制の強化や家族支援策を掲げ、保守色を打ち出す一方、EUとの協調も重視する現実派リーダー。子連れで海外出張に向かう姿も話題に!

なぜ日本では女性政治家が増えないの?

Oggi:日本の女性議員は、世界的に見ても少ないんですか?

村上:日本の衆議院議員に占める女性の割合は、15.7%(’24年)とOECD加盟国で最下位です。諸外国もかつては10%に届かない状況でしたが、30年ほど前から女性議員を増やす取り組みが本格的に始まって、たとえばフランスでは国会議員の約4割を女性が占めるようになりました。背景には、2000年にできた〝パリテ法〟という仕組みがあって、男女の候補者数を同じにしなければいけないと法律で決まっているんです。

Oggi:議員数ではなく、候補者数が男女半々なんですね!

村上:はい。といっても、フランスでも最初から女性議員が劇的に増えたわけではありません。候補者を男女半々にできなかった政党には、ペナルティとして政党助成金の減額が設定されましたが、金額が少なかった当初はだれも従わなかった。そこで、助成金の削減率を高くしたり、地方議会レベルでも候補者の男女同数を義務づけたり… さまざまなテコ入れが行われたんです。

Oggi:一足飛びで、変わるわけではないんですね。

村上:さらに’17年に発足したマクロン大統領率いる政権は、既存の基盤を持たない新政党からスタートしたため、女性を積極的に登用したんです。また、パリテ法が成功した要因は「女性優遇」ではなく「男女同数」や「男女平等」のキーワードを強調したこと。「平等」や「民主主義」という概念を大切にするフランス人に受け入れられやすく、「女性枠」を訴えたわけではなかったので、保守派の反発も少なかったんです。

Oggi:賢い…。日本にもそんな法律があればいいのに。

村上:あまり知られていないんですが、実はここ日本でも’18年に「政治分野における男女共同参画推進法」という法律は制定されています。これは各政党の候補者を男女同数にしようという、いわば〝日本版パリテ法〟ともいえるもの。ただしこれは〝努力義務〟に留まっていて、ペナルティはありません。フランスの先例からも、「自分たちの努力で、がんばってください」というシステムでは限界があるのは明らか。本気で現状を変えようと思うのなら、ペナルティを設けたり、議席の一定数を女性に割り当てるクオータ制を取り入れたり、強制力のある構造改革が必要だと思います。お隣の韓国や台湾をはじめ、世界でも約6割の国と地域が、政治の場になんらかのクオータ制を採用していますよ。

Oggi:今のままでは、日本はなかなか変わらなそうですね。でも、政治に関心がある女性って、やっぱり少ない気がして…。

村上:日本ではPTAや町内会、子供食堂など地域でリーダーシップを取る女性は多いですよね。彼女たちがしていることは、実はすごく政治的な営みなんです。政治家として活動すれば、たとえば給食費無償化やスクールバスの整備など、生活に密着した物事を大きく変えられるチャンスにもつながります。フランスでもそういった女性たちが市議会から州議会へ、さらに一部は国政へとジャンプしていったという歴史があります。

フランス発! 政治を変えた「男女同数・平等」の考え方、パリテ法ってなんですか?

日本とフランスの下院女性議員比率の推移

1997年には、女性議員比率がギリシャに次いでヨーロッパでワースト2位だったフランス。2000年、フランス語で「同等・同量」を意味するパリテ法を導入し、政党に候補者の男女同数を求めた結果、約30年で女性議員比率は約4倍に!「女性議員が増えたことで、男性育休や介護サービスの拡充など、ケアや女性に関する政策の法案提出が活発になりました」(村上さん)

女性リーダー誕生、その先にあるもの

Oggi:今後、日本の政治はどう変わっていくでしょうか?

村上:〝ガラスの崖〟という言葉があります。危機のときに女性をトップに立ててフレッシュさやクリーンさを打ち出し、状況が改善しなかったら責任を負わせて短命で終わらせてしまう現象で、世界でも同様のケースは珍しくありません。今回も、高市氏の就任で自民党の支持率が一気に上を向きましたし、「保守的な日本でもついに女性首相が誕生した!」というのは国際的にも聞こえがいい。ですが、党内の基盤や政治資金が弱いとされている高市氏がどれだけ実質的な権限を持てるかは未知数。〝ガラスの崖〟に追い込まれないか、注視していきたいですね。もちろん、高市氏が掲げるガソリン減税や高校授業料無償化、介護施設支援といった政策が、本当に実行されるのかも、しっかりウォッチしていく必要があります。

Oggi:女性首相の誕生を機に、政策の中身に興味を持つ人が増えるといいですね。

村上:そうですね。そして個人的には、保守派の女性リーダーに続いて革新派の女性リーダーが登場することを願っています。さまざまな立場の女性がトップに立つことで、政治の場はより豊かになります。すでに女性が党首を務める政党もありますし、党首討論で女性同士が渡り合うシーンが見られる日も近いはず。ものすごくワクワクすることだと思いませんか?

Oggi:本当ですね。最後に、働くOggi世代へのメッセージを!

村上:政治は私たちの生活と密接につながっています。生理用品のコスト、緊急避妊薬の市販化、妊娠・出産・育児制度… どれも政治とは切っても切り離せないもの。今回、女性が首相になったという大きな出来事をきっかけに、政治を自分ごととして考える一歩にしていただければうれしいです。

覚えておきたい「政治」のキーワード

1.ガラスの天井

女性や少数派が、能力や実績があっても昇進や活躍の機会を阻まれる見えない壁のこと。「先が見えているのに、進めない」状況を表す。1978年にアメリカの企業コンサルタント、マリリン・ローデンが提唱した。

2.リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

性や生殖に関する健康と権利。安全な妊娠・出産、避妊、子供を持つ・持たないなどの意思が尊重され、医療にアクセスできる状態。この分野で長年、女性たちから望まれていた緊急避妊薬の市販化が、2025年10月、承認された。

3.政治分野における男女共同参画推進法

政治分野における男女共同参画推進法

衆議院、参議院、地方議会の選挙において、男女の候補者数をできる限り均等にすることを政党に求める法律。努力義務のため、実効性が課題。国会議員の女性比率は目標とされる30%にまだ届いていない。

4.クオータ制

クオータ制

性別や人種、宗教などを基準に、社会的に不利な立場に置かれやすい集団や少数派に対し、一定の比率でポジションを割り当てる制度。多様性の促進と機会の平等を目指す。政治分野では、世界の約6割の国・地域で導入済み。

2026年Oggi1月号「Oggi大学」より
構成/中村茉莉花、酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部
●掲載している情報は2025年11月13日現在のものです。

Oggi編集部

「Oggi」は1992年(平成4年)8月、「グローバルキャリアのライフスタイル・ファッション誌」として小学館より創刊。現在は、ファッション・美容からビジネス&ライフスタイルテーマまで、ワーキングウーマンの役に立つあらゆるトピックを扱う。ファッションのテイストはシンプルなアイテムをベースにした、仕事の場にふさわしい知性と品格のあるスタイルが提案が得意。WEBメディアでも、アラサー世代のキャリアアップや仕事での自己実現、おしゃれ、美容、知識、健康、結婚と幅広いテーマを取材し、「今日(=Oggi)」をよりおしゃれに美しく輝くための、リアルで質の高いコンテンツを発信中。
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