「ドキュメンタリーを通じてモデル業界のリアルを知ってもらえたら」
9月13日からPrime Videoで、ラウールさんがミラノ、パリコレクションへ挑戦するまでの1年半を記録したドキュメンタリー番組「ラウール On The Runway」の独占配信がスタート。配信を前に都内で取材会が行われ、ラウールさんが登壇しました。
ラウールさんは「こんにちは〜。お願いしまーす」とゆるやかなテンションで壇上に。 グレーのニットポロにデニムパンツといった極シンプルな装いで、肉体美を感じさせる抜群のスタイルが印象的でした。
「お集まりいただきありがとうございます。ちょっと小っ恥ずかしいのですが… 、なぜドキュメンタリー番組を作ろうと思ったのかも含めて、世の中の皆さんに少しでもお伝えしていただけたらうれしいです。よろしくお願いします」という挨拶から始まりました。
いつごろからモデルの方向に興味を持ったのですか?
ラウールさん(以下敬称略):始まりは会社から「モデルやってみたら? 」と言われたことですね。実際に挑戦してみたらすごく楽しかったんです。負けず嫌いが高じたこともあり「もうちょい頑張ってみよう」と奮い立ちました。
モデルのお仕事の中でも、ファッションの本場であるパリやミラノでのランウェイを歩くことを目指したのはなぜですか?
ラウール:それも負けず嫌いからきています。日本で撮影していると、アイドルということもあってちやほやしてくれるというか、 かっこいいねってたくさん言ってくれるんですが、それがなんだか照れくさかったんです。本当に思ってそう言ってくれているのか、お世辞で言ってくれているのかわからなくて。そうして次第に、本場のパリやミラノでも通用するのかを試したいなと思い始めました。ファンの方やメンバーから冗談半分本気半分で「パリとか歩いてそうだよね」と言われることもたびたびあって、そういう言葉から引っ張られたところもあります。

今回のドキュメンタリーでは余すところなく密着している印象ですが、なぜカメラを回そうと思ったのでしょうか
ラウール:そうですね… 、全部本当のことは言えないんですけど(笑)。スタッフさんが、カメラを回していた方がいいんじゃないかって提案してくれたんです。そこで僕も「回しましょう」って。
最初は配信先も決まってなくてひたすら撮っている状態だったので、正直全然モチベーションが上がらなかったんですよね。 カメラがずっと近くにあって休まらないな、どこで配信するかわからないし、なんでやってるんだっけとか、自分のことをアピールするの恥ずかしいなとか、あんまり乗り気じゃなくて。でも全部終わったときに、この1年半の挑戦を配信したいって気持ちが湧いてきました。今回の自分みたいに頑張っている日本人モデルの方もたくさんいるし、さまざまな活動の中でいろんな人に出会ったり、思ったようにいかなかったり過酷な環境に苦しんだり、ドキュメンタリーを通してこういう世界があるんだっていうのを少しでも知ってもらえるかもなって思ったんです。それに気づいてからはモチベーションがすごい上がりました。
あと、1か月ぐらいずっとパリにいた期間、日本での仕事をいくつか休まなくちゃいけなくなって胸が痛かったんです。仕事は休んじゃいけないと思っていたところもあるので…。だから、このドキュメンタリーがお休みしている間に何をしていたかを説明するものになるというのも、自分にとって大きかったかもしれません。
実際に現地でファッションモデルとして挑戦することで、ファッション業界における日本人の立場など気づいたことがたくさんあったんですね
ラウール:想像していたよりもリスペクトされるような職業じゃないのかな、と思った瞬間はありました。YouTubeなどでランウェイの動画を見ていたら、すごいな、モデルさんってかっこいいなと思ったりするんですけど、実際にパリに行ってみたら、ハードな扱いを受けるときもたまにあって。でも振り返るとすごく新鮮で、めっちゃいい経験ができましたね。当時は、これまでにない経験ができているってうれしく思うときも、苦しく感じるときもありました。周りに同じ悩みを抱えてた人もたくさんいたので、ドキュメンタリーをきっかけに広く知ってもらいたいなという気持ちが芽生えたんです。
さまざまな気付きがあるなかで、現地で一番つらかったエピソードは?
ラウール:方向音痴なので、道に迷いすぎて辛かったです(笑)。海外で電波を獲得するのも下手だからポケットWi-Fiを持って行くんですが、歩いてる途中にバッテリーが切れちゃったことがあって。方向音痴の人がスマホでマップを見られなくなるとやばいんです! あのときは大変でした。
反対にうれしかったことや楽しかったことは?
ラウール:うれしかったこと…。うーん…。(1分弱じっくり考える)
スタイルが重要な仕事だったので「終わったらおいしいご飯を食べよう! 」というのをモチベーションにボディメイクに励んでいました。終わってから、好きなご飯を食べているときが一番幸せでしたね。
どんなものを食べたのですか?
ラウール:わあ、いい質問! うーん、なんですかね。やっぱり日本人だなあと思うけど、お寿司ですかね。パリで仲よくなった日本人のお寿司屋さんがいて、毎年行っています。
現地で1人でオーディションを受けに行くなど、日本での活動と異なることもあったのではないでしょうか
ラウール:日本だったらマネージャーさんが用意してくださった涼しい車に乗って移動できるけど、 パリではまあそうもいかないですよね。僕は16歳でデビューしたので、一般的な10代〜20代の人より甘やかされているというか、あんまり苦労していないのかもなって、ちょっとコンプレックスに思っていたんです。この1年半の挑戦で「俺も辛かったんだぜ」って誇れるわけでもないけど、1人で問題解決する経験ができたのはよかったと思います。
密着期間について、1年じゃなく1年半になった理由はありますか?
ラウール:もともと1年くらいの予定だったんですが、思うように結果が出なくて… 。もう少し続けさせてほしいって言ったんです。やみくもに2年3年と延ばしてても大変になっていくだけなので「あと1回だけ、ラスト1回」って。その挑戦が今年の6月くらいにあって、そこまでがドキュメンタリーに収まっています。
今回の密着では頻繁に取材されていましたが、いかがでしたか?
ラウール:正直きつかったときもあったけど、ずっと一緒に撮影してくれていた人がすごく優しかったので、がんばれた部分もあると思います。オーディションを受ける人数がかなり多いこともあり、基本9割以上の人が落選になるんですよ。落ちるとやっぱり悔しいじゃないですか。だから、カメラきついな、悔しい顔をあんまり見せたくないなって思って。悔しい表情を見せた方がいいんだろうけど、アイドルの習性というか、どうしてもカメラを意識しちゃうんですよね。リアリティがあるかなって心配もややありましたが、なんやかんやさまざまな表情を撮れていると思います(笑)。

今回の挑戦で、価値観や人生観に変化はありましたか?
ラウール:さっきと少し似ちゃうかもしれないのですが、小学生からアイドルの事務所に入って、10代でデビューして、導かれるままにここまで来てしまったんですよね。だから、本格的にモデル事務所に入るとか、自分でオーディションを受けるとか、就職活動と似たところがある経験ができたのはとても大きかったように思います。
正直言うと、地元の友人とかとたまに会ってもお互いに共感し合えない話題が結構あったんです。でもこの前久しぶりに友人に会ったときに就活の話になり、どういうところを受けたとか、こういうことが大変だったとかの話に共感できた瞬間があって、めっちゃうれしかったな。「そうだよね」って心から思えたの。パリやミラノでランウェイに挑戦してなかったら聞き流しちゃったり、知らない世界の話で聞くのが苦しいっていう思っちゃったりしたかもしれないけど、友人の話に全力で頷けたし、自分のやり方とかその子のやり方とか意見し合ったのが純粋に楽しくて、すごくいい時間でした。
辛い経験も乗り越え、ランウェイを歩くことがかなったときはどんな心境でしたか?
ラウール:海外では謙虚な姿勢をあまりよしとしないというか、そんなに意味がないとされる現場ばかりだったので「ガンガンにいけます! 自分行きます」ってスタンスでいるようにしていたんです。実際は虚勢を張っている部分もあるし、本当に自信もあるし… という心境でした。なので終わった瞬間は「ほら言った通り、できたでしょう? 」って得意げでいたんです。でも帰国して冷静に振り返ったら、ああ貴重な経験だったなってしみじみ思いますね。
今回の経験が今後の活動に生きるものもあったのではないでしょうか
ラウール:あったと思います。これまでは、全部自分の頭の中で考えて作っていかなきゃいけないって意識することがあまりなかったんです。でもどんな仕事においても、受け身でいちゃいけないなって考えになりました。こういう流れでこうしてくださいとか、こういうパフォーマンスをしてくださいってスタッフさんが言ってくださってることをただしていたけど、それも本来は自分で意図を汲み取って噛み砕いて、正解を出さなきゃいけないよなって。一つ一つの仕事に向き合うことを当たり前にしようと思うようになりました。
中でも、お芝居に生かされたと感じる部分はありますか?
ラウール:ああ… 初めて考えました。どうなのかな、わかんないですけど、そういう側面もあるのかもしれないですね…。(じっくり振り返っている様子)
あ、僕、その1年半の間に印象的だったことがあって、初めて自分のことで悔しくて涙が出たんですよ。子供のときはしょっちゅうあったかもしれないんですけど、自我が芽生えてからは初めてに近いんじゃないかな。ドキュメンタリーには映ってないんですが…。もしかしたらそういう辛い経験が、お芝居のどこかに生きてるのかもしれないです。
一番最初にランウェイを歩いた「YOHJI YAMAMOTO」に挑戦しようと思ったきっかけは?
ラウール:そのときも自らっていうよりは会社の人に勧められたのがきっかけです。当時はモデル事務所に入っていなかったので、自分たちでひたすら「オーディションを受けさせてください」って直接コンタクトをとりました。「日本でショーをやるからオーディションを受けてください」とお返事が来たのがきっかけです。
エンターテイメント性を兼ね備えたウォーキングが印象的でした
ラウール:僕もすごく思い出深いコレクションです! 耀司さんが「なにか動きをつけてみたら? 」って言ってくれて、前日だったか前々日だったか、一晩中リハーサル室にこもりました。本番を想定して過去のコレクションで流れていた音楽をかけて、当日に着る服を思い浮かべながら、いろんな動きをとにかく試して、試して、試したんです。そして本番当日、耀司さんに「こういうことするかもしれない」って見せに行ったら、動きに合うよう服のディテールを調整してくれました。日本を代表するデザイナーの方と、ちょっと踏み込んだ会話ができてうれしかったです。
最後にみなさんにメッセージをお願いします
ラウール:あまり馴染みのない世界のドキュメンタリーで、みなさんの興味のあるところかどうかなって思う部分も正直あるのですが、僕としては少しでもこの世界のことを知ってもらえたらと思っています。そんなに長くない、1時間半ぐらいの短いコンテンツです。ちょっとでも気になったら、どんなきっかけ、モチベーションでも構わないので観てもらえたらうれしいです。よろしくお願いします。
ラウール On The Runway
Snow Manのメンバーであり、モデルとしても活動するラウールの初単独ドキュメンタリー。2024年1月から今年6月までラウールに⻑期密着し、「何者でもないところから何者かになる過程を経験できたのは、得たものとして一番大きかった」と語る、ミラノコレクション、パリコレクションのランウェイを目指す1年半を追った記録。
配信に先がけ、番組のキービジュアルと60秒PR映像が公開中です!
【番組概要】
番組名:『ラウール On The Runway』
出演:ラウール
配信⽇:9月13日(土)あさ10時〜
配信先:Prime Video
※配信内容・スケジュールは予告なく変更になる場合がございます。
【取材メモ】
・質問一つ一つに対し、目をつむってじっくり考え、当時を振り返っているようにお答えする姿が印象的でした。
・「ランウェイを終えてお寿司を食べたときは幸せを感じた」というエピソードでは、その日一番満面の笑みに。
・フォトセッションでPrime Videoのロゴが配されたボックスを渡されさまざまなポーズを取ってくださったラウールさん。最初は手に持っていましたが思いついたかのように頭にのせ、ノーハンドでさすがのバランス力を披露してくれました。頭にのせたまま控えめにピースサインをするひと幕も。
・取材会前のホワイトバランス調整(白い紙を持ってカメラテストをする人)を自身でやったら面白いのでは? と提案していたそう。
取材/近藤亜衣子