エディター・岡村佳代が出会った、あんな人やこんな人…
私が身を置く業界は「クセあり人間」の宝庫です。「クセ」とはある意味「強めの個性」なので、クリエイティブな仕事には不可欠なのかもしれません。
第15回は、お馬のおじちゃん。
▲川島さん（仮名） 推定70代／会社の会長さん
一代で築き上げた建設会社の経営を息子に譲り、現在はほぼリタイア。趣味は競馬で、ダブルのスーツをこよなく愛する。パンチパーマというヘアスタイルと相まって一見反社に見えるが、お酒もタバコもやらないヘルシーな堅気。
お馬のおじちゃん
先日、「ラウンド中の会話がすべて下ネタ」という、超ウルトラクセつよなおじさんとゴルフのラウンドをしたのですが、コンプライアンス的に許されず、担当編集のＭちゃんが泣いてしまうのが目に見えたので、ネタにするのはあきらめた私。
えーん、どうしようと思いながらワンコとお散歩をしていた日曜日の朝。「ぽんたああああ」という野太い声が！ 声の主は、毎週末、お散歩で会う通称「お馬のおじちゃん」。いつも競馬新聞を小脇に挟み、手には乳酸菌飲料──。おお、ここにめっちゃクセつよキャラがおるやん！
ちなみに私の愛犬の名前は「けい」ちゃんでフレンチブルドッグの5歳女子。ですが、お馬のおじちゃんは何度「名前は〝けい〟で女の子なんですよー」と言っても「そうかそうか、おーーしゃおしゃおしゃおしゃ、ぽんたあああああ」と、完全スルー。
まあ、全然いいのですが、いつか、せめて女の子ということだけでも認識してほしいという思いから、けいちゃんのお洋服が週末限定でどんどんガーリーになっております。
そんなある日、いつもおじちゃんと一緒にいる別のおじちゃんから、「早くに亡くした奥さんとかわいがっていた犬の名前がぽんただった」というお話を聞きまして。
おじちゃんの認知機能が少し低下しているからかもとか、「そろそろ名前覚えてよ」と少し思っていました、ごめんなさい。これからは週末限定で「ぽんた」になろうね、けいちゃん。
2025年Oggi3月号「クセあり人間観察ファイル」より
文／岡村佳代 イラスト／平松昭子
再構成／Oggi.jp編集部
