目標達成に向けた実践的な方法をご紹介
偏差値30台の高校時代から東大に合格し、結婚や出産といったライフスタイルの変化を経て、語学や資格取得などの結果を出した石黒由華さんの『夢を先送りしない勉強法』(技術評論社)より一部抜粋・編集して目標達成に向けた実践的な方法をご紹介します。
なりたい自分に近づく「目標 設定」の仕方
「資格を取得してキャリアアップしたいな」「英語をもう少し頑張りたいな」などの目標や夢を持っている人は多いと思います。でも「こうなりたい」という理想の姿がありながら「忙しくて時間がない」「勉強は苦手」など、ついできない理由を見つけて「先送り」してしまいがちな人も多いのではないでしょうか。
ここでは、なりたい自分に近づくためにやるべき5つのことをご紹介します。
「叶えたいこと」をリストアップする-他人の評価のために自分の心に嘘をつかない
まず、自分が心の底から「やりたいこと」「できるようになりたいこと」を、思いつくままに書き出していきましょう。大きなことでも小さなことでもかまいません。ただ、「幸せになる」「英語ができるようになる」といった漠然としたものではなく「海外部門に異動する」「TOEIC900点以上を取得する」など、具体的に書いてみてください。
特に重要なのは、「周囲が喜ぶから」という理由だけではなく、自分の思いを大切にすることです。
「正直興味がまったく湧かないけれど、まわりがやっているから学んでみる」
「人から勧められたから仕方なく学ぶ」
「安心したいから、嫌々だけど学ぶ」
という動機で目標を立てるのはおすすめしません。
他人の評価のために自分の心に嘘をつくような目標は、目標達成に至るまでのモチベーションの維持が難しく、挫折しやすいですし、長い目で見ると、達成する意義が薄いからです。また、達成した後も、その分野に本気で興味のある人たちとの競争に勝てず、自分の価値を上げづらいというデメリットもあります。
時間・費用・実力は一度忘れて、「理想の自分」を言葉にしよう
仕事でもプライベートでも、ずっと先の将来に関することでも、時間・費用・実力のことも、一度忘れてしまってかまいません。実現可能性や優先順位はあとで考えればいいのです。自分の才能や情熱を発揮できること、自分の存在意義や使命感を感じられることをリストアップしていきましょう。楽しくてたまらないもの、興味をそそられるものを、ためらわずに言葉にしてみましょう。
【例】
・現在の勤務先で経営企画部門に異動したい
・昇進したい、年収アップしたい
・Excel のスキルを伸ばし、資格も取得したい(MOS、VBAエキスパートなど)
・プログラミングスキルを伸ばしたい(まずはR言語かPythonを使えるようになり、データ分析による会社の売上アップに貢献したい)
・プレゼン資料の作成スキルを磨きたい
・海外部門に異動したい
・英語の日常会話が流暢に話せるようになりたい
・英語で電話対応やプレゼンができるようになりたい
・英文メールを、日本語メールで同じくらいのスピードで書けるようになりたい
・海外ドラマを字幕なしで8~9割理解できるようになりたい
・TOEICで900点以上を取得したい
・コンサルやシンクタンクで社会政策の専門家として働きたい
・海外に留学したい(シンガポール国立大、アイビーリーグ、オックスブリッジなど)
・趣味を豊かにしたい(月1回は美術館に行く。美術検定や世界遺産検定を取得する)
・今年中に今の恋人と結婚したい
・今年こそ海外旅行に行きたい(ニューヨーク、ロンドン、パリ)
・引き締まった体づくりをしたい(週1回ジムやヨガスタジオに通う。ダイエット本を読む)
本気で目指したい「ロールモデル」をリストアップする
単純に自分のやりたいことをリストアップするだけでは、具体的な目標に気づけないことがあります。たとえば、「英語ができるようになりたい」とひと口に言っても、
・リーディングなのか、リスニングなのか、スピーキングなのか、ライティングなのか?
・どのような場面で英語が使えるということなのか?
・どのくらいのレベルでできることなのか?
など、さまざまな要素があります。そこで効果的なのが、ロールモデルを見つけ、その人の具体的な成果をリストアップすることです。
たとえば、「英語ができるようになりたい」という夢があり、職場の人の英語力に憧れているとしましょう。その場合は、リストに、「職場の〇〇さん」と書き出し、その人のどんな点に憧れるのか、どんな点を真似してみたいかを書き出します。
【例】
・英語で流暢に電話応対ができる
・海外出張に行き、英語でプレゼンや交渉をこなしている
・海外営業部で活躍している(昇進し、年収も高い)
・英会話スクールで一番上のクラスにいる
・TOEIC900点以上
・英文メールが書ける
・英文の電話やFAX、メールが来たときに、同僚から頼りにされることが多い
ロールモデルを見つけることで、あなたの目標は具体的になり、目標達成後のリターン(例:海外営業部で年収が高いなど)や、目標達成のための方法(例:英会話スクールAに通い、一番上のクラスにいるなど)も明確になります。すると、自分の将来像が今よりも具体的に想像しやすくなり、目標達成に向けた計画も立てやすくなります。
そして、キラキラと輝くロールモデルの存在は、あなたに、自分の目標に対する確信を与えてくれます。「こうなりたい!」と思える存在が可視化されることで、目標への意識が高まります。強い憧れや尊敬の念を抱くことで、努力する力が湧いてきます。ファッションデザイナーのココ・シャネルも、こんな名言を残しています。
「『大物になろう』と思うのではなく、『こんな人になりたい』と決めると、心配事はほとんどなくなる」
そのくらい、ロールモデルは、目標達成の支えとなってくれる存在なのです。ロールモデルを見つける方法には、「身近な人から見つける方法」と「著名人から見つける方法」があります。どちらにも、それぞれのメリットがあります。
身近な人からロールモデルを見つける
身近な人とは、たとえば、職場の上司や同僚、友人や家族などです。このような人たちは、直接話を聞くことができたり、そばで観察できたりする存在です。普段から関わりが持てるので学べることが多いですし、ありのままの姿を知ることができます。自分と何が違うのか、自分には何が足りないのか、自分との比較もしやすいです。
著名人からロールモデルを見つける
視野を広げたい場合は、著名人をロールモデルにすることをおすすめします。たとえば、自分が興味のある分野の著名人や専門家、自分が就きたい職種や業界で活躍している有名人などです。
そのような人たちは、直接話を聞くことは難しいですが、いま自分が生きている世界では思いつくことのない思考や価値観をもっていたり、成功の秘訣やノウハウを知っていたりすることが多いです。一般人にはマネできない多くの成功をつかんできた著名人の話は、身近な知人からのアドバイスよりも刺激的で迫力があり、大きな夢や高い目標を目指すあなたの背中を押してくれます。
著名人は、自分には手の届かないような存在に思えることもあるかもしれません。しかし、本人へのインタビュー記事やGoogle検索でよくよく調べてみると、意外と自分にも真似できそうなところや、その存在に近づくためのヒントが見つかることも多いです。
受験勉強や資格試験の勉強に取り組みたい方々には、合格体験記を読むこともおすすめします。たとえば、東大受験を目指していたときに、私がロールモデルにしていたのは、『東大理Ⅲ―天才たちのメッセージ』(データハウス)に掲載されている東大理Ⅲ(東大医学部)の合格者たちです。彼らの勉強法や受験生活の送り方はとても参考になりましたし、将来への情熱や芯の通った思考法には刺激を受け、受験生活のお供となってくれました。
理想の実現に役立つ「資格試験」をリストアップする
ズバリ、目標は「資格」に置き換えてしまうと便利です。今の時代、「目標あるところに資格あり」と言えるほど、たいていの目標には、対応する資格が存在します。たとえば…
・ビジネス英語のスキルを伸ばしたい
→TOEICテスト
・Excelのスキルを伸ばしたい
→MOS、VBAエキスパート
・ITのスペシャリストになりたい
→基本情報技術者、応用情報技術者、ITストラテジスト
・コンサルティング業界に転職したい
→中小企業診断士資格、大学院のMBAコース
・マスコミ業界に転職したい
→東大大学院情報学環・学際情報学府、慶應大大学院法学研究科ジャーナリズム専修、早稲田大大学院政治学研究科ジャーナリズムコースなど
・公共政策に関わる仕事がしたい
→東大公共政策大学院など
・スポーツビジネスに関わりたい
→早稲田大大学院スポーツ科学研究科など
・周囲に一目置かれる教養を身につけたい
→世界遺産検定や美術検定など教養系資格
資格には多くのメリットがあります。
専門知識・スキルをもっていることを証明してくれる
合格したら、社内でアピールすることもできますし、履歴書にも書けます。就職や転職、独立や開業に有利になりやすいです。
漠然と勉強するよりも、効率的に知識を身につけられる
資格なら、知識を身につけるための教材(テキストや問題集)が豊富にあるため、最短距離で知識を身につけられます。そのうえ、難易度が明確で、勉強もしやすいです。英語検定や簿記検定などの検定試験が1級~4級まで難易度別の試験が用意されていることに典型的なように、自分の実力にあったレベルから始め、段階的にレベルアップしていくことも可能です。
私自身、どのように伸ばしたらいいのかがわからなかったスキルを、資格を活用することで、着実に伸ばしていきました。資格は、目標達成のための最高の手段なのです。
やりたいことを写真に記録して「目標の種」をとりこぼさない
「やりたいことをリストアップしよう」と言われても、何も思いつかないことも多いのではないでしょうか。かつての私もそうでした。そこで私が実践しているのが、「スマホの写真アプリ」を活用して、自分のやりたいことやなりたい姿を日常生活の中で少しずつ記録していく方法です。
やり方は、超シンプル。本や雑誌、テレビ番組やネット記事、パンフレットなどから自分の人生のヒントになりそうな情報を収集し、やりたいことやロールモデル、受験してみたい資格などに出会ったら、それをそのまま、スマホの「カメラ機能」や「スクリーンショット」で保存していくだけです。
・インターネットの記事
→スクリーンショット
・それ以外(本・雑誌・テレビなど)
→カメラ機能
保存した写真は、ほかの写真と区別するために、「お気に入り」の星印をつけておくといいでしょう。「探さなくては」と気負わず、SNSで「いいね」をつけるくらいの気軽さでできるので、忙しさの中で忘れてしまう「目標の種」を取りこぼすことがなくなります。
TOP画像/(c)Adobe Stock
夢を先送りしない勉強法
著者:石黒由華
出版社:技術評論社
石黒由華
東京大学卒業。学生時代から20年以上勉強法を研究し、「だれでも、どんなに時間がなくても結果の出る勉強法」を考案。勉強でさまざまな夢を叶える。
高校時代は、学級崩壊しているクラスで「偏差値30台」だったところから、独自の勉強法を確立し、早慶上智、さらに東大に逆転合格。
大学では教育学を学ぶ傍ら、大学受験雑誌のライター、全国模試の採点アルバイトを経験し、「結果の出る勉強法」をさらに深く研究。天才・秀才たちの集まる東大を「トップクラスの成績」で卒業。卒業後は、約500倍の倍率を突破し、マスコミ企業に就職。
その後も、限られた時間の中で仕事と勉強を両立、英語・IT・会計など8つの資格を「独学」で取得し、昇進やキャリアアップを果たす。中でも、英語では「TOEIC950点超」を取得したほか、留学経験ゼロで自己紹介もできなかったところから「Google社員レベル」と評価されるほどペラペラに話せるまでにレベルアップ。
結婚・出産後も、なかなか寝てくれない0歳児の子育てで自分の時間がほとんど作れない中で、「約半年で」東大大学院に合格。
趣味は、旅行、美術鑑賞、美容。世界遺産検定、美術検定、化粧品検定などを取得。大好きな趣味を楽しみ、充実したプライベートを過ごす。