さぁ、みんなでダンス・ダンス・ダンス♪
子供にも大人気「 Bling-Bang-Bang-Born」からK-POP、「Dリーグ」そしてオリンピックまで! さぁ、みんなでダンス・ダンス・ダンス♪
さまざまな形で注目度が高まっているからこそ、改めて知りたいダンスの世界について、プロに伺います!
お話ししてくれたのは…
▲ダンサー・振付家 TAKAHIROさん
たかひろ/1981年生まれ。大阪芸術大学客員准教授、東京ダンス・俳優&舞台芸術専門学校学校長。マドンナのワールドツアーなどでダンサーとして活躍するほか、櫻坂46、ゆず、矢沢永吉など多数アーティストの振り付けも担当。
「この夏のオリンピックでは『ブレイキン』が正式種目に! 発足から4シーズン目を迎えた『Dリーグ』にも注目してください」(TAKAHIROさん)
「踊ってみた」動画の流行には、ワケがある…!?
Oggi編集部(以下Oggi):Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的にヒットしていますね。楽曲がかっこいいのはもちろん、「踊ってみた」動画も話題です。踊ってみた動画がこんなに人気になったのって、TikTokが普及した、この5~6年ですか?
TAKAHIROさん(以下敬称略):今のように多くの人が投稿するようになったのは、それくらいです。でも最初は2007年ごろ。アニメの主題歌に合わせて、ファンが作品へのリスペクトを込めて、ニコニコ動画で配信したのが始まりだったようです。
Oggi:そんなに前から! そういえば10年ほど前、AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」の踊ってみた動画も流行りましたね。企業やお役所の老若男女がみんなで踊っていて、微笑ましかった~。
「逃げ恥」の〝恋ダンス〟は’16年でしたか。もちろん最近は、K-POPのキレッキレなダンスも、インフルエンサーのかわいい踊ってみた動画も、つい見ちゃいます。
デバイスの進化とともに変化する“ダンス”
TAKAHIRO:ダンスって、デバイスの進化とともに変化してきたんです。たとえばテレビの登場以前は、ダンスの基本は劇場で楽しむもの。客席からハッキリ見える、大きい動きが重要でした。テレビで歌手が歌いながら踊るようになっても、ワイヤレスマイクが普及する’80 年代半ばまでは、動きに制限があって。
Oggi:コードがなくなって初めて、大胆に踊れるんですね。
TAKAHIRO:2000年代にニコニコ動画やYouTubeが生まれると、一般の人が真似できる振り付けが人気に。とはいえ動画を簡単に共有・配信できなかったので、フォーチュンクッキーのように「みんなが集まって楽しむ」ダンスが中心。
インスタグラムやTikTokによって、徐々に「個人で楽しむ」ダンスへと変化していったんです。
Oggi:撮影も配信も、スマホがあれば、ひとりでできますもんね。
“縦型フレームに収まる&みんなが真似しやすい”振り付けに
TAKAHIRO:顔やスタイルも盛れますし、現代では自分をアピールするツールとして使われるようになりました。スマホに関して言えば、今は見るにも踊るにも、縦型のフレームに収まる振り付けが求められています。
CMのパフォーマンスを考える企画会議でも、「縦型の軸がブレないように」「みんなが真似しやすい部分をつくってほしい」といったリクエストが多いです。大ヒットしたNiziUの「Make you happy」の〝縄跳びダンス〟を思い出していただきたいんですが、サビの部分は立ち位置が動かず縦長の枠に収まる。
最後は顔まわりのパフォーマンスで自分の顔をアピールできるようにつくられているんです。この時代に特化した振り付けだと思います。
Oggi:さらに数年経って、今はスマホやアプリの機能ももっと進化していそう…。ダンスはどのように変化していますか?
TAKAHIRO:視点の変化が起き始めています。常に正面から撮影するのではなく、アプリで急にズームしたり引いたり、斜めから3次元で撮っているような動画が簡単に。そのような見せ方を生かせるダンスが増えています。
ストリートダンスが世界中から注目の的に!
Oggi:それにしても、ここまで一般の人が踊るようになるとは。
TAKAHIRO:読者のみなさんは、物心ついたときにはTRFやSPEED、DA PUMPといった、本格的なストリートダンスを見せるグループがテレビで活躍していた世代。さらに’12年には義務教育でもダンスが必修化されましたしね。
Oggi:創作ダンスやフォークダンスだけじゃなくて(笑)、HIP-HOPなども踊るんですよね? いろいろなジャンルがあると思うんですが、今、特に人気なのは?
TAKAHIRO:すごく多様化していますが、強いて言えば、’80~’00年代初期を思わせるようなステップや、ジェンダーを超えた振り付けが目立ちます。
たとえばアイドルグループで言えば、なにわ男子の〝あざとかわいい〟パフォーマンスが話題になったり。私が振り付けを担当している櫻坂46は意志を強く持ったダンスで、女性のファンもとても多いです。
Oggi:かつての〝男らしさ〟〝女らしさ〟という定義は、もはや存在しませんね。
パリ2024オリンピックで正式種目になった「ブレイキン」
TAKAHIRO:もちろん、パリ2024オリンピックで正式種目になったブレイキンにも注目が。
Oggi:そうそう! ブレイクダンスと同じもの、ですか?
TAKAHIRO:はい。「ブレイクダンス」はわかりやすいようにつけられた便宜上の呼び方です。ブレイキンは’70年代にN.Y.の貧困地区で誕生したストリートダンスの一種。
縄張り争いの殺し合いの代わりに、音楽やダンスでバトルをしたんです。その後、クラブやメディアにも広まっていきました。1対1でバトルする動きは、テレビで見せるのにもぴったりだったんです。
音楽に合わせて体のあらゆるところを使って回ったり跳ねたりする、アクロバティックな動きが特徴です。
Oggi:今回どうして、オリンピックに採用されたんですか?
「ブレイキン」が種目として採用された理由は?
TAKAHIRO:まずブレイキンはダンスの中でもフィジカル面が重要であること。またアクロバティックな技の数が100以上あって、競技としての審査がしやすいという側面があると思います。
フィギュアスケートの採点に近くなるかもしれません。アメリカ発祥のダンスですが、ヨーロッパに愛好家が多くて、フランスも強豪国なので、現地でも盛り上がるんじゃないでしょうか。日本も強いです!
Oggi:ダンスの競技と言えば、日本にはプロダンスリーグがあると聞きました。
プロのダンスリーグ「Dリーグ」
TAKAHIRO:Dリーグのことですね。4年前に発足したプロリーグで、プロ野球と同じように、企業が各チームを保有しています。
23-24シーズンは全13チームが、昨年10月から半年以上、約2週間ごとに、全14ラウンドにわたって新作を発表し、競ってきました。上位6チームが6月の決勝トーナメントに進出し、チャンピオンを決定します。
Oggi:思っていた以上に大規模ですね! どのようなダンスで競っているんですか?
TAKAHIRO:ストリートダンスがベースですが、自由に身体表現をするコンテンポラリーダンスに近いダンスを持ち味にしているチームもありますし、ジャンルはほぼ自由です。
会場で観客の様子を見ていると、ダンスそのものが好きな人も、応援うちわを持って黄色い歓声を上げている人も、鍛え抜かれたダンサーのテクニックと肉体美に驚いている人もいます。
チームでも特定のだれかでも、推しを見つけられると、すごく楽しいですよ! 配信で解説を聴きながら観戦するのも、解像度がグッと上がると思います。
ダンスを楽しみたい人はまずどうしたらいい?
Oggi:最後に、読者たちがよりダンスを楽しめるコツを教えていただけたら!
TAKAHIRO:まずは「踊ってみた」から始めては?
Oggi:え…!
TAKAHIRO:SNSに上げなくても、純粋に好きなグループのダンスを真似しても、トレーニングを兼ねてスタジオに通っても、今すぐ部屋で踊ってもいいんです。見ているだけとは違う楽しみが見えてくるはず。
踊った後は血行がよくなって爽快感がありますし、ちょっとした悩みなら吹き飛ばせるかも!? ぜひ、踊ってみて!
ダンスの世界の「今」をチェック!
K-POPがダンス人気を牽引
KARA、少女時代、TWICEなど、読者が青春をともにしてきたK-POPのダンスにも変化が。
「最近ではLE SSERAFIM(写真下)が、ダイナミックな動きの後に、急にかわいくセクシーな振りを入れたりと、ジェンダーを超えているように感じるダンスで今っぽい! NewJeans(写真上)はあえてみんなでそろえない、ハズした振りや、Y2Kっぽいステップを取り入れているのに注目」(TAKAHIROさん・以下同)
パリ2024オリンピックはブレイキンのShigekix選手に注目!
ブレイキンには大きく4つの要素があり、(1)トップロック(フロアに入る前に立って踊るダンス) (2)フットワーク(しゃがんだ状態で地面に手をついて行う足さばきやステップ) (3)パワームーブ(背中や肩で回るウィンドミル、頭で回るヘッドスピンなど、アクロバティックな動き) (4)フリーズ(一連の流れから、体の動きをピタッと止める動き)をいかに巧みに組み合わせるかが勝負のカギ。
オリンピックでは男女各16人が1対1で対戦する。
「日本代表内定のShigekix(半井重幸)選手は、難易度の高い技をミスなくつなげていく完成度の高さと、キレのあるパワームーブが注目の選手です!」
「Dリーグ」のトーナメントは6月9日に開催!
13チームが1ラウンドにつき各8名でリーグ戦に臨み、スキル・クリエイション(新しさやインパクト)・コレオグラフ(振り付け)・スタイル(小物や衣装の使いこなし)・完成度の5項目で審査が行われる。5人の審査員に加え、観客票もあり。
チャンピオンシップ(決勝トーナメント)にはCyberAgent Legit(真上の写真は決勝進出を決めたROUND.11の様子)など6チームが出場。YouTubeなどの無料配信のほか、ジャッジ投票権や優先入場特典などがある公式アプリも。
「チームごとに得意なジャンルが異なるので、見ているうちに推しチームができるはず!」
覚えておきたいキーワード
「ダンス」に関連するワードや知っておきたいワードをピックアップ!
踊ってみた
テレビアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の主題歌「ハレ晴レユカイ」から生まれた。「主役は〝踊っている自分〟ではなく、作品への募る思い。ファンは大盛り上がりでした」
デバイス
ダンスを見る方法は舞台→テレビ→PC→スマホと変遷。「テレビ画面が大型化した’00年代は、家庭でダンスの存在感がUP。TWICEが指で泣き顔を表現する〝TTポーズ〟は、テレビがない時代には流行りえませんでした」
ストリートダンス
路上発祥のダンスのこと。ブレイキン、HIP-HOP、ハウス、ロックダンス(体の動きをLOCK=止める)、ポップダンス(POP=筋肉をはじく)など多くの種類がある。
義務教育
’08年に中学校の学習指導要領が改訂され、’12年に男女ともダンスが必修化。小学校でも表現運動の授業が。「体を動かすだけでなく、音楽や芸術性、協調性やコミュニケーション能力も育めるダンスは、教育にうってつけです」
●掲載している情報は2024年5月13日現在のものです。
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2024年Oggi7月号「Oggi大学」より
構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部
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