デュアルライフは、70%ずつの自分が2人いる感じ
――10代からモデルとして仕事を始め、海外コレクションにも単身で臨み、多くの経験を積んできた杏さん。真っ只中にいる「30代」は、どんな位置付けだととらえているのでしょうか。
「仕事を始めた10代のころ、年上の方々と話すなかで、“30代は楽しい“という話をよく聞いてきました。30代の今、先輩方が言っていたことの意味がよくわかります。体力もあってがむしゃらに頑張れる10代、20代、それはそれでよかったけれど、時間や気持ちにゆとりが出て、大変なことにも少しだけ余裕をもって臨めるのは、30代ならでは。いま、それを楽しんでいるところです。
その間、いくつかの転機がありました。モデルとしてコレクションに出るために海外を行き来していた10代が最初の転機だとしたら、パリに住まいを構えたことも大きな転機になりました。どちらも、大変なことや起こりそうな問題など、事前に想像はしていましたが、実際に起こることは予想外のことばかり。だから、考え込むことや準備に時間をかけるより、早く行動に移すことが大事なのだと今は思います。もしやりたいことがあるなら、思い切って始めちゃったほうがいいのかな」
――そうしてパリと東京との行き来が始まって。仕事のやり方・仕事観に変化はありましたか?
「この数年で、通信環境は飛躍的に発達し、離れた場所での仕事もあたりまえになりました。私も、YouTube配信はもちろん、打ち合わせやインタビューをリモートで行うのは日常ですし、ナレーションの仕事もパリからできるように。どんな職業でも、場所を選ばない働き方、そしてデュアルライフは、今後さらに増えていくでしょう。
ただ、生配信をしているときは電子レンジが使えないと知らなくて、通信不良になったことも(笑)。Wi-fiとレンジの相性が悪いみたいです。
こんな発見をしつつも、デュアルライフを始めてからは、ひとりで100だった自分が70に減りはしたけれど、それが2拠点・2人いるという感覚です。どちらか一方だけをとれば、何かが抜けてしまったり、物理的にできないことはあるけれど、それが2人いることで、うまく補い合って、バランスが取れている。パリにいると頭から抜けてしまっていることでも、東京に戻ると思い出したり、その逆もあったりします。
東京・パリを移動することで気持ちの切り替えは自然とできるようになりました。でも、オン・オフの境界はますますなくなってきて、それでいいんだろうと思います。趣味で漫画を読んでいても、子供たちと映画を見ていても、旅行に行っても、いつかどこかで仕事につながるだろうから。無理に切り替える必要はないし、“いつかどこか”を焦る必要もないんですよね」
このラストシーンのためにやってきてよかった
――そんな環境の変化のなかでも出演作品は途切れることはなく、2024年6月からは最新主演作品『かくしごと』が公開されます。主演を受けることを決めた際、「今の自分ができるタイミングかもしれない」とお話しされていました。
「(撮影当時)36年生きてきたひとりの人として、また母親として数年たった積み重ねがある今だからこそ、この映画の主演をやらせていただきたいと思いました。
また、これまで専門的な仕事をもった女性や、特徴のあるキャラクターを演じることはありましたが、今回はそうではありません。と同時に、監督からは『演じるのではなく、自分の言葉で言ってほしい』とアドバイスされました。だから、何か準備したりつくり込んだりする必要がないぶん、あとはその場の感情で演じていったような気がします。話し言葉もふだんに近い語尾に少し変えてみたり、私なりの工夫を加えながら。
そして、日本の夏ならではの風景――長野の山や川、古い家屋なども、味わっていただけたら。ストーリーは家族を中心に展開しますが、家族や親子という観点だけでなく、ひとつのミステリー物語として楽しめると思います。“かくしごと“を続けた家族が、どんなラストを迎えるか。私自身はこのラストシーンのためにやってきたといってもいいくらいです。ぜひ、楽しんでください」
>映画『かくしごと』のさらなる見どころは、WebDomaniで
モデル・俳優
杏
あん/1986年生まれ、東京都出身。2001年にモデルとしてデビューし、2005年からはNYやパリ、東京などの主要ファッションショーで活躍。2007年に女優でビュー。その後、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(2013年)、ドラマ『花咲舞が黙ってない』シリーズ、『競争の番人』(2022年)で主演をつとめるなど、数々のドラマ・映画に出演。2023年は『キングダム 運命の炎』『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』『窓ぎわのトットちゃん』などの映画作品に出演。
映画『かくしごと』
絵本作家の千紗子(杏)は、長年絶縁状態にあった父・孝蔵(奥田瑛二)の認知症の介護のため、渋々田舎に戻る。ある日、事故で記憶を失ってしまった少年(中須翔真)を助けた千紗子は彼の身体に虐待の痕を見つける。少年を守るため、千紗子は自分が母親だと嘘をつき、少年と暮らし始める。千紗子と少年、そして認知症が進行する父親の三人の生活は、しだいに新しい家族のかたちを育んでいく。しかし、その幸せな生活は長くは続かなかった…。2024年6月7日全国ロードショー公開
出演:
杏
中須翔真 佐津川愛美 酒向芳
木竜麻生 和田聰宏 丸山智己 河井青葉
安藤政信 / 奥田瑛二
脚本・監督:関根光才
主題歌:羊文学「tears」F.C.L.S.(Sony Music Labels Inc.)
©2024「かくしごと」製作委員会
公式サイト:映画『かくしごと』
公式X:@kakushigotofilm
ワンピース¥341,000・靴¥170,550(フェラガモ・ジャパン<Ferragamo>) ピアス¥495,000・リング¥561,000・ネックレス¥528,000(ポメラート クライアントサービス<POMELLATO>)
ポメラート クライアントサービス 0120-926-035
フェラガモ・ジャパン 0120-202-170
撮影/高木亜麗 スタイリスト/中井綾子(crêpe) ヘアメイク/犬木 愛 構成/南 ゆかり