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その土地でしか味わえないカレーを巡る旅
旅先では土地土地の名物を食べたいという方が多数派かもしれません。各地の名物をさまざま食べた上で僕が行き着いたのは、旅先で自分の好物を食べた方がよりおいしく満足できる可能性が高いということ。
僕は、旅先でもカレーばかり食べています。「旅先なのにもったいない」と言われることもあるのですが、〝旅先だからこそ〟好きなカレーを食べるのです。
僕は若い頃ロックバンドのヴォーカリストをしていて、メジャーデビューもして精力的な活動をしていたので全国ツアーにもよく出ており、各地の名物もそれなりに食べてきました。そこで感じたのは、名物を食べれば必ずしも満足度が高いというわけでもないということ。
あるときから毎日カレーを食べるようになり、旅先でもその土地のカレーを食べてみようとスタンスを変更。するとほとんど外れがなく、その土地ならではの個性も感じるカレーと出合えるようになったのです。
というわけで突如スタートする「カレーおじさん\(^o^)/カレー旅」シリーズ!
第一弾は新潟。前後編に分けてお届けします。
岩室温泉街にある南インドカレー
僕はよく旅行先を決めるとき、気になるカレーがあるか、そしていい温泉があるか、を選ぶ基準とします。今回も徹底的にリサーチした結果、非常に興味深い温泉街を見つけました。それが新潟県の「岩室温泉」です。
新潟駅から1時間に1本程度出ている電車に乗ってJR岩室駅に到着。無人駅であり、駅前も非常にのどかで静か。そこからタクシーに乗って15分程度の場所に岩室温泉街があります。予め到着時刻に合わせてタクシーの予約をしておくとスムーズでしょう。
岩室温泉は「黒湯」と呼ばれる黒みがかったお湯が特徴。効能としては関節リウマチ、慢性的な腰痛や肩凝り、胃腸機能の低下、ストレスによる諸症状だといわれています。
実際に入ってみると体の奥からジワジワと温まってきて、お湯から出てもしばらくそれが持続します。僕は長年の腰痛持ちなのですが、体の芯から温まったおかげか少し緩和されたように感じました。
それだけでも素晴らしいのですが、この温泉街には最高の南インド料理店が存在するのです。その名は「ネファラ」。
昼のみの営業。外観はシンプルで、一見何の建物かわからない雰囲気です。
中に入るとウッド調で落ち着いた空間のレストラン。メニューを見ると完全な南インド料理店です。
ベジミールスはドラムスティック入りの本格的なサンバルに、透明感のある層とねっとりとスパイスが沈澱した層の二つの食感が楽しめるラッサムをはじめ、ワダも乗ってアイテム数も多く、ご飯もポンニライスを使用。野菜だけで満足度の高い一皿であり、混ぜることによってよりおいしくなるミールスです。
これにノンベジアイテムも追加可能。マトンマッパスはココナッツ感もほどよく、チキンチェティナードはスモーキーでしっかりとスパイシー。ミーンコランブは鰆の味を活かす優しいスパイス使い。どれもベクトルの違うおいしさなので、食べ比べるのが楽しいです。
ノンベジアイテムは全体的に強めの塩気。といってもこれは南インド料理を食べ慣れている人にとってはという意味で、食べ慣れていない人にはちょうどよい塩梅といえるでしょう。食べ慣れている人にとってはベジミールスのみでちょうどよい仕上がりとなっています。
料理は2割のマニアに向けるか8割の一般層に向けるかで味の決め方が変わるともいわれます。その両者が同時に成立する味は稀にしか見かけない印象ですが、こちらのお店はそれを見事に両立。何もかもわかった上で、狙ってこの味に仕上げているのだろうなと感じました。
食後に、豆腐のベイクドチーズケーキとサウスインディアンコーヒーも。これは、チーズ不使用のチーズケーキなのです。さっぱりとしていて口当たりも柔らか。南インド産豆を使った甘いミルクコーヒーとよく合います。
シェフは新潟生まれ埼玉育ちの日本人。基本的には独学で、インド現地にも足を運んで料理を習得したのだそう。素晴らしいセンスの持ち主です。接客も非常に優しくて、心が解ける感覚に陥りました。
【ネファラ】
新潟県新潟市西蒲区岩室温泉637
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温泉で身体をほぐし、カレーで心をほどく。よくサウナでととのうといわれていますが、最高の温泉と最高のカレーはそれ以上のととのいを得られます。
このためだけにも岩室に行く価値があるのですが、さらに行くべき場所があるのです。
それはまた、後編でお知らせいたしましょう!
AKINO LEE カレーおじさん\(^o^)/
ヴォーカリスト、パフォーマーとして自身の活動の他、様々なアイドルの作詞作曲振付プロデュースを担当。ヴォイストレーナーとして後進の育成にも力を注いでいる。
音楽ライターとしても各種雑誌、ムック本などで執筆を担当。また、カレーおじさん\(^o^)/としても知られ、年間平均1000食以上のカレーを食べてきた経験と知識を活かしてTVや雑誌など各種メディアにおいてカレーについて語っている。