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LIFESTYLE

2024.02.18

2024年の大河ドラマ【光る君へ】で話題! 紫式部の知られざる人物像とは?

今年の大河ドラマ『光る君へ』の主人公である「紫式部」は一体どんな〝光る〟人生を歩んだのでしょうか。世界最古の本格長編小説『源氏物語』を完成させ、シングルマザーとして娘を育て、恋愛も楽しんだ才色兼備のキャリアウーマンともいうべき彼女の人生とは。

紫式部はどんな〝光る〟人生を歩んだの?

世界最古の本格長編小説『源氏物語』を完成させ、シングルマザーとして娘を育て、恋愛も楽しんだ才色兼備のキャリア女性!? 意外と知られていない紫式部の人生、そしてキャラクターを紐解きます。

教えていただいたのは…

津田塾大学 多文化・国際協力学科教授・木村朗子先生

▲津田塾大学 多文化・国際協力学科教授・木村朗子先生
きむら・さえこ/1968年生まれ。専門は日本古典文学、日本文化研究、女性学。『源氏物語』など、平安時代に女性が書いた宮廷物語を通して、中世の生活や思想などを研究。現代にも通じる生きざまや心の動きを論考。近著に『紫式部と男たち』(文春新書)、『百首でよむ「源氏物語」』(平凡社新書)。

1000年以上読まれ続ける『源氏物語』の魅力とは

今年の大河ドラマの主人公“紫式部”

紫式部 浮世絵
谷文晁「紫式部図(部分)」(東京国立博物館蔵。ColBase)

Oggi編集部(以下Oggi):今年の大河ドラマの主人公は紫式部です。もちろん名前は知っていますが、あとは『源氏物語』の作者だということくらいしか…。

木村さん(以下敬称略):そういう人は多いかもしれませんね。『源氏物語』は世界で最初の本格長編小説と言われていて、紫式部が作者であることは確か。ただ、実は紫式部自身についてはほとんど記録がなく、生没年も不詳なんですよ。そもそも〝紫式部〟という名も、父親の仕事の役職に由来していて、本名もわからないんです。

Oggi:そんな謎に包まれた人物を、ドラマに…!

木村:史実がわからないぶん、自由に描けるのではないでしょうか。いずれにしても『源氏物語』はすごい小説です。

Oggi:光源氏がモテまくる話、というイメージです(笑)。

紫式部 人生年表

『源氏物語』は平安時代で初めての“大人の小説”

木村:『源氏物語』は、平安時代の一夫多妻制ならではの男女の心情がリアルに描かれた、初めての大人の小説だったと思います。全54帖、つまり54巻にもわたる壮大なストーリーで、400字詰めの原稿用紙にしたら約2400枚分。それまでも長編作品はありましたが、『蜻蛉(かげろう)日記』は私小説、『うつほ物語』はおとぎ話でリアリティに欠けていました。

その点『源氏物語』は、さまざまな考えをもった多くの人物が繰り広げる群像劇。800首近い和歌や着物に登場人物のキャラクターが反映されていたりと、手が込んでいます。心理描写も深く掘り下げられているし、今でいう〝伏線回収〟もあって、エンターテインメントとして純粋にすばらしい!

Oggi:当初から、多くの人に読まれていたんですか?

木村:大人気だったと思います。もちろん印刷技術はありませんから、写本で出回っていたわけですが、『源氏物語』が藤原道長と深く関わるきっかけになったんですよ。

清少納言とライバルだったって本当なの!?

紫式部の生い立ちと宮中に入るまで

Oggi:紫式部の人生についても、わかる範囲で教えてください。

木村:紫式部は藤原一門ながら下級の貴族である漢詩人・歌人を父親に持ち、母親を幼いときに亡くしています。

後に自身の子供時代について、「父親が弟に漢文を教えているときに、横で聞いているだけなのに全部覚えてしまった」と書いているくらい、幼いころから優秀だったようですね。

20代後半で20歳ほど年上の藤原宣孝と結婚、出産しますが、すぐに夫を亡くしてシングルマザーに。30代で宮中で働き始めます。

Oggi:宮中って天皇が住んでいるところですよね。どうしてそんなことになったんですか?

宮中
(c)Adobe Stock

木村:紫式部は夫の死後、宮仕えを始める前から『源氏物語』を書き始めていて、その面白さが権力を握りつつあった藤原道長の耳に入ったため、と言われています。

Oggi:そんなきっかけで! 

木村:后になる女性が天皇の住まいである内裏(だいり)に入ることを〝入内(じゅだい)〟と言いますが、紫式部は、一条天皇の后として入内していた藤原道長の娘・彰子に仕える女房、つまり使用人として働くことになりました。

当時の宮中では文化的な活動を行っていた〝サロン〟がブーム

木村:当時の宮中では有力貴族の女性とその女房たちで構成される集団=〝サロン〟がブーム。和歌を詠んだり、楽器を弾いたり文化的な活動を行っていたのですが、彰子のいとこにあたり、一条天皇の寵愛を受けていたもうひとりの后・中宮定子(ちゅぐうさだこ ※のちに皇后)のサロンが評判で。

権力を握りたい藤原道長はそれに対抗して、彰子のサロンをてこ入れするメンバーとして、紫式部を呼び寄せたようです。なお『源氏物語』とならんで紫式部の代表作と言える『紫式部日記』には、彰子の出産の記録や、自分の娘が将来の天皇を産んだことを喜ぶ道長の姿なども綴られていて、道長の命で執筆されたと考えられます。

Oggi:そんな仕事もしていたんですね。宮中はどのような職場環境だったのでしょう?

木村:現代で言うと、宮中は大企業で、女房はそこに勤めるキャリア女性といったところでしょうか。育児は乳母が行い、出産後も仕事は継続。生理や出産は〝穢(けがれ)〟とされ、その間は宮中で過ごせなかった、つまり生理休暇や産休・育休があったとも考えられます。

紫式部と清少納言は面識がない

Oggi:意外と進んでいたとも言える!? 平安時代の有名な女性と言えば、清少納言もいますね。

木村:清少納言は、定子のサロンにいたことで知られています。彼女についても詳しい記録が残っておらず、清少納言のほうが5~10歳程度年上だと推定されていますが、ふたりが宮中にいた時期は重なっていないと思われます

巻物
(c)Adobe Stock

Oggi:ふたりは仲が悪かったと聞いたこともありますが…?

木村:『紫式部日記』に、清少納言の悪口が書かれているんですよ。「清少納言は漢文が読めるとか言っているけれど大したことない」とか「つまらないことも大げさに言い立てて軽薄だ」とか。

Oggi:結構言ってる(苦笑)。

木村:そう。ただ、直接の面識もなければリアルタイムで噂を聞くような近い関係でもありません。清少納言に個人的な敵対心を抱いていたというよりは、あくまでも、彰子のサロンを盛り上げようと、「私だって十分にできますけど」と主張するための悪口だったんじゃないでしょうか。

Oggi:自分の主人を思って…。

木村:「清少納言は陽キャで、紫式部は陰キャ」と言われることもあるのですが、それも私は違うと考えていて。『源氏物語』には面白キャラも出てくるし、そんな人をいじって大爆笑するシーンもあります。

紫式部は面白いことに敏感でユーモアのある女性だったのではないでしょうか。宮中になじめず苦労したというエピソードもありますが、彰子の勉強を手伝ったり、宴会で楽器を演奏したりして、宮中の生活をそれなりに楽しんでいたと思いますよ。

今より自由!? 恋愛を楽しむ平安時代の女性たち

紫式部と藤原道長はどんな関係?

Oggi:では、大河ドラマで描かれる、藤原道長との関係は?

木村:諸説ありますが、紫式部と道長は召人(めしうど)関係だったとは思います。召人というのは、主人と男女の関係にある女房のこと。『紫式部日記』には朝、起き抜けに道長が訪ねてきて和歌を詠み合ったというエピソードも描かれています。

Oggi:相思相愛!?

木村:どうでしょう。身分が違うので正妻にはなれませんしね。同じ彰子のサロンにいた恋多き和泉式部も道長の召人だったので、彼女には嫉妬したかもしれません。紫式部はその後独身を貫きますが、道長ひとすじだったかどうかは不明です。

ただ、『源氏物語』で光源氏の〝最後の女性〟として描かれたのは、光源氏の召人でした。そこに私は、「自分たちのような召人が最後に残るんだ」といった紫式部の自負を感じますね。

平安の恋人たち イメージ
(c)Adobe Stock

一夫多妻制の通い婚の時代とは

Oggi:比較的、恋愛が自由な時代だったのでしょうか?

木村:女性が「この男性、素敵だな」と思っても、女房が反対したら会わせてもらえませんし、その背後に父親の意向が見え隠れすることも。とはいえ、一夫多妻制の通い婚の時代です。

男性が多くの女性とつきあっているということは、女性のところに毎日同じ男性がいるわけではなく、別の男性が来る隙もたくさんあったでしょうね。『源氏物語』では、自分のために家まで用意してくれる誠実な男性と、チャラチャラした色男の間で揺れ動く女心も描かれています。

Oggi:今も似たようなことに悩んでいる女性はいますね(笑)。平安時代の女性たちと私たちは、意外と共通点も多いのかも。

お手本にしたい、平安時代の女性たちの“教養”

木村:そう思いますよ。平安時代の女性たちで見習いたいと思うことをひとつ挙げるなら、〝教養〟を大切にしていることでしょうか。平安時代の女性は、和歌を覚えたり漢詩を読んだり、楽器や習字、絵画を習得したり…そういった教養を身につけることに励んでいました

そのスキルが直接的に仕事に役立つというわけではなかったかもしれませんが、紫式部も漢詩や和歌を勉強していたからこそ道長にスカウトされ、彰子とよい関係が築けたり、周囲の人に認められたり…結果的に重用されたんです。翻って現代は、大学を卒業して社会人になると、学ぶ機会が圧倒的に少なくなりますよね。

だから、ぜひ30代のみなさんも、本を読んだり美術館に行ったり、講演会に行ったり…学びを止めないでほしい。それが運命を変える種になるはずですから。平安時代も今も、日本は大きな戦争もなく平和が続くと信じられるから、文化が花開き、未来に投資できる、ありがたい環境だと思うんです。

Oggi:そういう意味では、古典も読んだほうがいいですね。高校時代以来、触れていなくて。

木村:ぜひ『源氏物語』も読んでいただきたいです。外国語訳も各国で出版されていて、ドストエフスキーやプルーストにならぶような、世界中で愛されている名作です。それを書いた女性が1000年前にいたと考えるだけで、勇気づけられますよ!

Oggi:大河ドラマとあわせて、トライしてみます!

大河ドラマ「光る君へ」で紫式部はどのように描かれる…?

大河ドラマ『光る君へ』吉高由里子さん

紫式部は恋愛長編小説『源氏物語』をいかに書き上げたのか。執筆に欠かせない藤原道長との関係とともに描かれる。脚本は大石 静さん。紫式部を吉高由里子さん、藤原道長を柄本 佑さんが演じる。NHK総合ほかにて放送中。

『源氏物語』を読むならこの2冊から

角田光代 訳『源氏物語』(河出文庫)

現代の日本語のリズムで読める。

角田光代 訳『源氏物語』(河出文庫)

「与謝野晶子や瀬戸内寂聴など多くの現代語訳がありますが、角田光代さんの『源氏物語』(河出文庫)はいちばん新しい現代語訳で読みやすいはず」(木村さん)

『A・ウェイリー版 源氏物語』(左右社)

光源氏がイギリスの貴族に!?

A・ウェイリー版 源氏物語

▲英訳:アーサー・ウェイリー 日本語訳:毬矢まりえ、森山恵

「『A・ウェイリー版 源氏物語』(左右社)は、英訳されたものを俳人・毬矢まりえさん、詩人・森山 恵さんが日本語に訳し直した逆輸入版。光源氏がローブを着ています!」(木村さん)

覚えておきたいキーワード

「紫式部」に関連するワードや知っておきたい歴史ワードをピックアップ!

平安時代

平安時代の様子 再現模型
写真提供/風俗博物館

794年に桓武天皇が平安京(現在の京都市)に都を移してから鎌倉幕府が成立する1185年までの約390年。京都の「風俗博物館」では『源氏物語』のシーンを人形で表現。当時の様子が垣間見られる。

藤原道長

966~1027年。娘を宮中に送り、娘が産んだ男子が天皇に即位すると天皇に代わって政治を行う摂政として大きな権力をもった。光源氏のモデルという説も。

女房

平安時代から江戸時代ごろまでの、貴族の女性に仕えた女性使用人のこと。上流貴族は天皇や男性貴族からの寵愛や信頼を得るため、優秀な女房を厳選した。

宴会

紫式部日記絵巻(模本/部分)
井芹一二模「紫式部日記絵巻(模本/部分)」(東京国立博物館蔵。ColBase)

結婚式や正月などの儀式後に二次会的に行われ、女房も出席。お酌をしたり楽器を弾いたりした。『紫式部日記』には「酔っぱらいの相手が大変」「即興で和歌を詠まされた」などの記述も。「紫式部日記絵巻」(写真)にも宴会の様子が。

2024年Oggi3月号「Oggi大学」より
構成/酒井亜希子・赤木さと子(スタッフ・オン)
再構成/Oggi.jp編集部

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