【働く私にMusik】「ふたりで曲をつくる、ライブをやるのが楽しい」という気持ちがある限り、ずっとスキマを続けていく
Guest Musician:スキマスイッチ
〈Profile〉大橋卓弥(左/Vo&G)と常田真太郎(右/Key&Cho)、ふたりのソングライターからなる音楽ユニット。『奏(かなで)』『全力少年』など、数多くの良質なポップ・ミュージックを生み出し続ける。今年、メジャーデビュー20周年。
〈スキマスイッチの軌跡〉1999年ユニットを結成、2003年1stシングル『view』でメジャーデビュー。2004年に2ndシングル『奏(かなで)』がロングヒット、翌2006年に5thシングル『全力少年』でNHK紅白歌合戦に初出場。2013年デビュー10周年。ベストアルバム『POPMAN’S WORLD~All Time Best 2003-2013~』を発売。2023年にデビュー20周年を迎え。ベストアルバム『POPMAN’S WORLD -Second-』を発売。
デビュー20周年! スキマスイッチが歩んできた道
自分の個性を見つけること、受け入れていくこと
サッシャさん(以下、S):メジャーデビュー20周年、おめでとうございます! 20年て、やっぱり長かったですか?
大橋さん(以下、O):いろいろなことをやってきたけど、あっという間ですね。
常田さん(以下、T):でも、前半の10年… 特に最初の5年は長く感じたよね。
S:初期のほうが試行錯誤していたから?
O:知らないことも多いですしね。でも、制作に関していうと、今のほうがジャンルも使う楽器も自由になっているんですよ。アルバムなんかは、3枚目までエレキギターを使わないって縛りもつくっていたし。
T:アマチュアのころ、個性がないってよく言われてたんだよね。表現を狭めることで、それが個性になったらいいなって。卓弥は「自分の声には個性がない、真似されない」って、当時よく悩んでたよね。
S:今はどうです? 表現を広げるようになったのは、自信がついてきたから?
O:いまだに自分の声はそんなに好きじゃないです(笑)。自信がついたというより、皆さんが掛けてくださる「特徴ありますよ!」という言葉を受け入れるようになった感覚。僕はこののどしかもっていない。認めてやっていくしかないんですよね。
T:スキマの初期は、ロックっぽい曲がつくれないジレンマもありました。今もできているかはわからないけど、やるのは楽しい。僕らって『全力少年』や『奏(かなで)』みたいな曲のイメージが強いと思うんですけど、それを壊していくというか。ライブをみたお客さんに「こういう一面もあるんですね」と驚かれることも多いんですよ。
過去がいつか笑い話になる。人生はそうやってできていく
真夜中の三軒茶屋での喧嘩、“三茶の夜”事件
S:ソロ活動を中心にされている時期もありましたよね。
O:ソロ活動期間は、僕らの音楽人生に絶対に必要な時間でしたね。
T:あれがなければ終わってたよね。友達を介した先輩・後輩、遊び友達として関係がスタートして、デビューしたころから少しよそよそしくなって、忙しさもあって距離が離れていって…。ベスト盤を出した時期とか、会話も本当に減ってたと思います。時間が取れなくて、曲づくりのやりとりもメールベースだったり。
O:ベスト盤を出して、アリーナツアーをして… その翌年は、それぞれソロ活動を中心に動いたんです。でも、その期間にふたりでつくった一曲がすごくよくて!(笑)
T:一緒につくらなきゃいけない、となってたときはあんなにイヤだったのにね(笑)。でも、制作に入ったら… 40分くらい?
O:うん(笑)。すぐできたよね。
T:曲づくりは数日かかることもあるのに、40分くらいで完成して。「これこれ! こうだったよな」って感触があったんですよ。
S:理想のパートナーだと気づけた?
O:僕は、スキマあってのソロ活動と考えていて。自分のスキルを磨いて、スキマに帰ったときパワーアップできたらいいなって。修業みたいな感覚だったんですよ。
T:一方、僕は裏方としてソロ活動をしていて。やっていることをスキマに還元したい気持ちはあるけど、卓弥をプロデュースするぞ、みたいな感覚になっていたのかな。だから、スキマとしての活動に戻るとき、ふたりのテンションに差があって…。
O:真夜中に三軒茶屋で喧嘩したよね(笑)。
T:“三茶の夜”事件ね(笑)。最終的にはふたりじゃ埒が明かなくなって、当時のマネージャーを呼び出して。
O:5時間くらい言い合いをしてたんですけど、「ふたりはスキマをやっていくためにどうするかを話してる。前向きな話なんだから、今日はこれで終わり。明日も仕事だから、◯時に集合ね、解散!」ってマネージャーに言われて終わりました(笑)。
30歳手前で失敗して仕事を変えた友達が、すごくかっこよく見えた
S:それはおふたりが30歳ごろのことですよね。30歳前後ってどんな年代でした?
O:今思い返すと、すごく中途半端な時期。若くないけど、大人というほどでもないし、ここで何か結果を残さないと! と必死に足搔くんだけど、望んだようにならない。
T:30歳までに何かつかまなきゃ、と思うんだよね。30歳手前で失敗して仕事を変えた友達が、すごくかっこよく見えた。決断することのすごさを感じたのかな。27歳ごろに書いた『全力少年』にも、“積み上げたものぶっ壊して”って歌詞があるんですよ。エネルギーがみなぎっていて、何かできるような気がする。でもうまくいかなくて、このままでいいのか不安になったり。
O:気持ちがみなぎっていても、人間は急に成長するわけじゃない。だから空回りが顕著に目立って、そんな自分に嫌気が差す。でも、そういう足搔いている状態のままでもいいんだよね。40歳になったとき「あのとき頑張ってたけど、今考えたら全然できてなかったな」なんて笑い話になればいい。
それは40歳から50歳になったときも同じなんだろうし、人生ってそうやってつくられていくのかなって。ソロ活動明けにつくったアルバムも、まだバチバチの関係だったから「こんな作品、だれも聴きたくないだろうな」って思ってたけど、今聴くといいんだよね(笑)。
T:なんかみなぎってるね(笑)。
ベストアルバム発売! ふたりでやるのが楽しい。その気持ちが何より大切
ベスト盤の収録曲は二人でドラフトをして決定
S:そうして20年、アニバーサリー・ベストアルバムも発売されました。新曲あり、人気曲のリアレンジあり、それぞれが選曲したベスト盤あり… と盛りだくさん!
O:新曲『アニバースデー』はNHK「みんなのうた」への書き下ろし。以前の僕たちなら尖ろうとしたと思うんですけど(笑)、家族みんなで楽しく聴ける曲ができました。歳だからかな…。
T:昔はみなぎってたからね(笑)。
O:リアレンジの『藍 〜僕たちの色彩〜』は、亀田誠治さんにプロデュースをお願いしました。スキマスイッチの楽曲を音楽プロデューサーの方にアレンジしてもらうのは初めてだったんですけど、スキマ=必ずふたり、という図式にこだわりすぎなくてもいいかなと思えるようになった今ならではですね。
S:おふたりが選ぶベスト盤、という試みも新しいですよね。どう選んだんですか?
O:ドラフトです。入れたい曲がかぶったときは、獲得権を抽選で決めて… (笑)。
T:このドラフトの模様は、僕たちのYouTubeでも見られますのでぜひ。
S:YouTube、面白いですよね!
O:でも、なかなか思うように再生数が伸びなくて… (笑)。
“付かず離れず”の距離感は、これからも少しずつ変化を続けていく
S:スキマの20年と今を感じられる新アルバム。改めて、ふたりでスキマを続けてくることができた理由って、なんでしょう?
O:“三茶の夜”みたいに関係が張り詰めていた時期もあったりしたけど、デビューから10年経ったくらいかな… お互いに立ち入りすぎないけど、これは話し合わないとヤバいということがあったら、ちゃんと話す。そういう距離の取り方ができるようになってきましたね。あとは、いい意味で「こういう人だから」とあきらめている部分もある。受け入れているというのかな。
T:期待しすぎないことも大事じゃないかな。相手も人間だから、自分の思いどおりに動いてくれなくて当たり前。関係を長く続けていくならなおさら、入りすぎないことって重要な気がします。あとは、ずっと同じ関係性、同じ距離感じゃないこと。〝付かず離れず〟の距離は少しずつ変化しているし、これからも変わっていくと思います。
O:ふたりで曲をつくるのが楽しい、ライブをやるのが楽しい。その気持ちがいちばん大事。これがなくならないかぎり、ずっとスキマを続けていくと思いますよ。
S:それは変わらない部分ですよね。柔軟に変化しながら、歩き続けていく。スキマの未来がこれからも楽しみです!
【Information】
SUKIMASWITCH 20th Anniversary BEST『POPMAN’S WORLD -Second-』発売中!
過去10年のシングル曲や人気曲『藍』『ボクノート』のリアレンジ、書き下ろしの新曲などを収めたDisc1、大橋さん・常田さんそれぞれが選ぶオールタイム・ベストとなるDisc2・3で構成された3枚組。全45曲を収録! [通常盤]¥3,850(ユニバーサルミュージック)
“選曲ドラフト”も見られる! 公式YouTube
MV映像などの作品だけでなく、ふたりが挑戦したいことをテーマにした番組「スキマスイッチのこのヘンまでやってみよう」も必見。音楽活動で見せる姿とはひと味違う、パーソナルな部分を感じられる公式YouTubeチャンネル。スキマスイッチのイメージが変わるかも!?
サッシャさんが語る! 「インタビュー後」談話
サッシャさんがお届けする“あとがき”ならぬ“あと語り”コーナー。サッシャさんの肉声によるインタビュー後コメントはこちら!
2023年Oggi9月号「働く私にMusik」より
撮影/三宮幹史(TRIVAL) スタイリスト/袴田能生(juice/スキマスイッチ分)、久保コウヘイ(サッシャさん分) ヘア&メイク/高城裕子(スキマスイッチ分)、新地琢磨(Sui/サッシャさん分) 構成/旧井菜月
再構成/Oggi.jp編集部