未来が見えにくいときは、不安をひとつずつ書き出すことから始めましょう
SHIORIさんの最新著書は『料理で幸せを届け続けてたどり着いた おいしい仕事術』。30代が働くうえで迷ったとき、悩んだとき、役に立つヒントがつまっています。後編では、未来に向けて新たな一歩を踏み出したい方に向けてのエールを贈ります。
CASE1〜3は<前編>で公開中!
CASE4:いまだ、やりたいことがわかりません。
「人と比べて悩むより、目の前の日常を愛すことから始めましょう」
私からまずお伝えしたいのは、「足るを知る」ということ。もしかして、夢や目標がわからないのは、現状に満足していることの裏返しではないでしょうか。
やりたいことをやっている人、夢を叶えた人とばかり比べて落ち込んだり、無理やりやりたいことを探すより、あなたのやるべきことは、目の前の日常を愛し、そこにある幸せを感じることではないでしょうか。
現実には、やりたいことを叶えていない人のほうが、大多数。たとえば、私の仕事を手伝ってくれている妹は、自分の夢を叶えたわけではないけれど、私の夢をサポートすることでやりがいを見出しています。そして私自身は、妹の分まで頑張ろうと思える。こんないい循環ができることこそ、仕事の醍醐味です。あなたがいてくれることで、うまく回っていることはたくさんあるはずですよ。
CASE5:将来のことが漠然と不安です。
「不安をひとつずつ書き出してから、対策を」
20代後半からの私も、今思えば不安だらけでした。初めての本『作ってあげたい 彼ごはん』のヒットがあって、若い女性から支持を得ていました。けれど、この先自分が歳を重ねたら、結婚したり子供ができたら…。自分の居場所はなくなるんじゃないかと、不安に思っていたのです。
そんな私の経験から言えるのは、不安をひとつずつ書き出して見直してみること。これだけでも、漠然とした不安はずいぶん治まりますが、さらに分解して対策を考えることをおすすめします。
将来のお金が不安ならキャッシュフローを書き出して現実を見直してみる。将来、どれくらい不足するかわかれば、具体的な対策もできるでしょう。自分に自信がないなら、身につけるべきスキルを考える。
漠然とした不安は、不安をさらに増長させるだけ。そして、どうせ不透明な未来なのだから、先が見えないことは当たり前、くらいに気持ちを軽くしていきましょう。
CASE6:もう30代だし…。新しい挑戦に尻込みしてしまいます。
「今日のあなたがいちばん若い!『積み重ねたもの』に目を向けて」
ひとつ前の章で「歳を重ねたりしたら、自分の居場所がなくなるんじゃないか」と思い悩んでいたとお話ししました。が、現実にはそんな心配は不要で、今まで積み重ねてきた経験や人との絆が武器になるのだと、あとになってわかりました。
もちろん、20代のときに比べたら体力は衰えますが(笑)、何かをやるのに、「ないもの」ばかり見ないで、「あるもの」をぜひ見つめて愛してほしいと思います。
たまに主婦の大先輩のような方がアシスタントとして応募してくださるのですが、そういう方に限って、「特に何もできないから」と謙遜されるんです。いやいや、どうやっても追いつけない経験があるじゃないですか。それを活かせる場面はたくさんあるはずです、と私はお話しします。
そして、すべての人に「今日のあなたが一番若い!」という言葉を贈りたいと思います。やってきたことで無駄なことはないし、何か始めるのに遅いということもないのです。
▲オンラインレッスン用の動画を収録中のSHIORIさん。カメラマンは夫が担当。撮影/Daiki Nakagawa
CASE7:なかなか夢に近づけない…。焦る気持ち、どうしたらいい?
「タイムリミットと小刻みな目標を設定しましょう」
20歳のとき私は、「22歳までに1冊目の本を出版する!」とタイムリミットを決めて仕事をスタートしました。どうして22歳なのか、詳しいことは新刊『料理で幸せを届け続けてたどり着いた おいしい仕事術』を読んでいただくとして。とにかく「22歳までの2年間を死ぬほど頑張れば、自分の人生が変わる!」くらいに意気込み、そのとおり22歳で本を出版し人生が変わりました。
だれにでも、一生に一度は夢に向かっての頑張りどきはあるものです。でも、ただひたすら頑張るのでは、続きません。そのため、現実的に「頑張れる」期限を設けるということが、私からのアドバイスのひとつめです。
そしてもうひとつ、設けた期限の中をさらに分割して、細かい目標を設定することをおすすめします。私の場合なら、「女性ファッション誌へ売り込む」→「ファッション誌で単発の実績を積む」→「連載をもつ」→「ファイル1冊分の実績をつくる」→「書籍の企画を売り込む」→「料理本の出版」というように、小さなステップに分けました。
タイムリミットだけでは、その間に心折れることも出てきます。でも、その過程で小さなステップを踏みながら達成感を得ていけたら、ゴールに近づく実感もわくものです。ものごとが長続きしない人こそ、ぜひ試してみてください!
『料理で幸せを届け続けてたどり着いた おいしい仕事術』(小学館)
コロナ禍、子育てなどを経て、生き方・働き方を変えるタイミングで、SHIORIさんが迷いながらも実践してきた、「幸せに働く」ためのルールをわかりやすく書いたお仕事エッセイ。SHIORIさんならではのコミュニケーション術や仕事の作り方はもちろん、オンライン料理教室『L’atelier de SHIORI Online』の活動をとおして得た、コンテンツ作り、SNS術など、実践的なノウハウもたっぷり。
撮影/廣江雅美 取材・文/南 ゆかり
料理家/L'atelier de SHIORI主宰 SHIORI
1984年生まれ、埼玉県出身。22歳でレシピ本『作ってあげたい彼ごはん』を出版。以後同シリーズがベストセラーとなり、現在までの著書累計は417万部を超える。フランス・イタリア・タイ・ベトナム・台湾・香港・ポルトガル・スペインでの料理修行経験があり、世界各国の家庭料理を得意とする。結婚・出産を経て、現在は約1万人の生徒数を誇るオンライン料理教室『L’atelier de SHIORI Online』を主宰。YouTubeでのレシピ発信、InstagramやNoteなどでの料理だけではないライフスタイルの発信を積極的に行い、同世代の女性を中心に高い支持を得る。
Instagram:@shiorikaregohan
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YouTube::SHIORI KAREGOHAN(@shiorikaregohan5667)
Note:shiorikaregohan