「シオン」ってどんな花?
秋になると、薄紫色の繊細な花を咲かせる「シオン」。洋風な見た目のなかに、どこか和の風情が感じられる可憐な植物です。あまりお庭で育てるイメージがないかもしれませんが、実は園芸初心者にも育てやすい品種なのです。そこで今回は、「シオン」の花の特徴や育て方、花言葉の由来となったエピソードなどを紹介します。この機会に、「シオン」について詳しく知ってみてはいかがでしょうか?
「シオン」は、白や薄紫色の一重の花を咲かせます。同じキク科の植物であるデイジーと、見た目がよく似ていますね。開花時期は8月〜10月で、特に9月が見頃。分布しているのは、朝鮮半島や中国、モンゴル、シベリア、日本では山地の湿草原です。
草丈は1m〜2mほどで、土の下にある根茎を乾燥させたものは、漢方で「紫苑」と呼ばれています。日本では平安時代から観賞用として栽培され、「オニノシコグサ(鬼の醜草)」「ジュウゴヤソウ(十五夜草)」「オモイグサ(思い草)」などの別名も。
現在、「シオン」の園芸種は広く流通していますが、自生種の数は減り、絶滅危惧種にも指定されています。
「シオン」の英名
「シオン」は、英語で「Tatarian aster」と呼ばれています。「aster」は、日本でいう属名を指しており、ギリシア語の「星」を語源としているのだとか。「シオン」の放射上に伸びる花びらが、まるで星のように見えたことが、英名の由来となっているようです。
薬草としての「シオン」
「シオン」は、古来から中国で薬草として扱われてきました。根には、アスターサポニン、シオノン、ケルセチンなどが含まれており、せきやたん止め、利尿作用などの効能があるのだとか。日本では、平安時代に編纂された漢和辞典『新撰字鏡(しんせんじきょう)』に、「紫苑」「加乃志太(かのした)」という名で登場しています。
「シオン」の花言葉
「シオン」の花言葉は、「君を忘れない」「遠くにある人を思う」「追憶」です。これらの花言葉は、平安時代の説話集『今昔物語集』に納められた、ある物語に由来すると言われています。そのエピソードをみていきましょう。
その昔、若くして父親をなくした兄弟がいました。兄弟は毎日父親の墓に通い、墓の前に「シオン」の花を植えていたそう。やがて時がたち、兄は忙しいことを理由に父の墓参りに行かなくなっていきました。しかし、弟は一人で欠かさずに墓参りをし続けたのです。
この様子をずっと見ていた鬼は、その姿に感心し、弟に特別な予知能力を与えました。弟は授けられた能力を使い、末長く幸せに暮らしたそうです。この物語から、父を思う弟の気持ちを表した「君を忘れない」「遠くにある人を思う」「追憶」という花言葉がつけられたと言われています。
海外の花言葉
「シオン」は、西洋ではまた違った花言葉を持っています。それは、「愛の象徴」「繊細」「忍耐」です。詳しい由来は定かではありません。ですが、ほっそりとした茎の先に小さな花をたくさん咲かせる姿をみると「繊細」や「忍耐」という言葉がしっくりときますね。
「シオン」の種類
「シオン」の園芸種は、世界中で広く出回っています。あまり日本では馴染みがありませんが、寒さに強く丈夫なので育てやすい植物なんですよ。自宅のお庭で育ててみたいと考えている方は、選ぶときの参考にしてみましょう。
1:クジャクアスター
「クジャクアスター」は、北アメリカ原産の園芸品種。別名“宿根アスター”とも呼ばれます。花色は、白やピンク、紫などで、2cmほどの小ぶりなサイズが特徴。キク科の植物ですが、洋風な庭との相性も良く、秋にはバラと組み合わせて植えることもあるようです。
2:ユウゼンギク
「ユウゼンギク(友禅菊)」は、濃い青紫色の花を咲かせます。開花時期は6月〜11月で、秋に開花する品種が多いようです。花つきがよく丈夫な品種であることから、ガーデニング初心者にも人気。まるで、友禅染めのように鮮やかな花を咲かせることから、「友禅菊」と名付けられました。
3:コンギク
「コンギク(紺菊)」は、キク科の宿根草。日本原産のノコンギクから生まれた園芸種です。高さは60cmほどと他の「シオン」よりやや低め。秋になると、濃い青紫色や白色の花を咲かせます。丈夫な性質で、半日陰の場所でもよく育つのが特徴です。
4:ダルマシオン
「ダルマシオン」も薄紫色の一重の花を咲かせます。草丈は100cm〜120cmくらい、9月〜10月頃に開花します。性質が強く、水上げもいいので切り花としても使えますよ。お庭で育てて、ちょっとしたプレゼントに贈ってみてはいかがでしょうか?
「シオン」の育て方
「シオン」は耐寒性があり丈夫なので、比較的育てやすい品種です。種はあまり流通していないことから、園芸センターで苗を買って育てることが多いですね。植え付けは、3月〜4月の春か、10月ごろの秋が適期とされています。株が広がりやすく、草丈も高いため、花壇などの地植えに向いています。日当たりと水捌けがいい場所に植えてあげましょう。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、たっぷりと水を与えてください。夏場は土が乾燥しやすく、植物がよく水を吸い上げるのでこまめな水やりが必要です。反対に冬場は、土が乾くのが遅くなるのでやや水やりを控え、調節しましょう。
最後に
今回は、「シオン」の花言葉や育て方、代表的な品種についてみていきました。「シオン」は古くから観賞用や薬用として人々に親しまれてきた植物。今ではあまり身近でみられなくなってきていますが、園芸品種を自宅に植えて楽しんでみたいですね。秋に咲くバラなどの他の植物と組み合わせて、素敵なお庭を作ってみてはいかがでしょうか?
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