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2022.08.14

サッカー選手・岩渕真奈さん「もし過去に戻れるとしても、戻りたい場所はない」

選択の多い女性の人生に、決断は欠かせないもの。各界の第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。今回は、14歳で女子サッカートップリーグにデビューを果たし、現在はイングランド、アーセナル・ウィメンFCの選手として活躍する岩渕真奈さんにお話をうかがいました。〈第一線の女性たちもアラサーで「選んで」きた The Turning Point~私が「決断」したとき~〉

サッカー選手 岩渕真奈さんインタビュー

選んだ道で転んでも、遠回りになっても、あの苦しさがあるから今があると思える選択しかない

19歳から24歳ぐらいまでドイツのチームにいて、日本に帰ってきてもう一回、サッカー選手としての自分というものをちゃんとつくり直したのが、ちょうど20代半ばです。

検査を受けたら後天性のアレルギーがわかって、まずは食事を見直してみたら6kgくらいやせたんですよ。

自分では太っているなとか体が重い自覚もなかったんですが、実際にめちゃくちゃ体が軽くなって動きが変わりました。ケガの多さは体重管理の不足が影響していたのかと。

世の中の人はたぶん「岩渕は海外に挑戦して失敗して帰ってきた」というイメージだと思うんですが、ケガがない時期は思うようにプレイできていたし、リーグ優勝もできた。

ドイツだから経験できたことがたくさんあって、帰国もケガの手術がきっかけだから自分としては全然失敗じゃないんです。でも、やっぱりメディアではいろいろ言われて悔しくて(笑)。

気になってつい批評を見にいっちゃうんですが、反骨心から、高いモチベーションでリハビリやトレーニングに取り組めたことも成長につながったのかな。

そういう意味では、勝った試合より負けたときのほうが断然記憶に残っています。今までのサッカー人生でいちばん悔しかったのは、2016年のリオオリンピックに行けなかったこと。

予選敗退で3大会連続出場してきた歴史が途絶えてしまっただけでなく、育ててもらった宮間あやさんなど、2011年のワールドカップ優勝メンバーと一緒にできるのは最後に。

上の人たちから受けた恩を返せないまま、自分は何も貢献できずに終わってしまったなと。

だからこそ、なでしこジャパンが世代交代するタイミングで、「次は自分がやらないと」「もっとすごい選手になりたい」という気持ちを持てましたが、この悔しさはずっと抱えていくと思っています。

チームのために、言葉だけでなくプレイでカバーできる人になりたい

帰国後のもうひとつの変化は、新たに所属した神戸のINACでも代表でも、初対面の後輩が増えたことです。ずっと最年少でやってきたので、自分が先輩方にしてもらったようにできたらと思うように。

ただ、サッカーは、監督の評価が選手の出場機会を左右しますよね。どんなに頑張っても出られない選手がいる中で、23人のメンバーでひとつの目標を目指すのはすごく難しいことです。

元々はピッチの外で何か言うタイプではないのですが、キャプテンを任されるようになった20代後半からは、意識して後輩に声をかけるようになりました。

私自身、チームの戦術がある中でも先輩に「ぶちはぶちなんだから。ボールもったら仕掛けていいよ!」と言ってもらってきたんです。もしそれでボールを失ったとしてもちゃんと追いかければいいから、と。

自分が自分らしくいることも大事ですが、ほかの選手から変に気を使われるのもイヤというか、彼女たちにも彼女たちらしくいてほしい。

実現できるよう、言葉だけでなくプレイでもカバーできる人になりたいと思うし、それこそがチームスポーツのよさだなと。

10代までは、チームがどうであれ自分が活躍して点を取ることに必死でした。でも今は、みんなで何かをつくるっていいなと年々感じています。

海外では逆に10歳も年下の選手に強めに注意されることもあるんですよ。内心は「イヤ、私のほうがうまいよね?」と思う(笑)。でも、もうすべて受け入れて、吸収するしかないなと。

外国人選手はとにかくプライドが高いし、自分の意見を言い出したら止まらないし、年上にも遠慮がない人たちが多いですが、ぶつかり合って出た答えに対しては、みんな全力でやるんですよね。そこが日本との違いであり、好きな部分です。

「戻りたい場所はない」苦しい経験があったからいい方向に行けた

監督も選手も本当に個性が強いけれど、たとえ苦手な人がいたとしても、大事にしているのは自分から嫌いにならないこと。これはサッカーに限らないことで、人にはちゃんと関わって判断していきたいんですね。

大きな決断をするときは、信用している人や、近くにいてくれる人の意見は絶対に大切にしたほうがいいと思っています。それを強く感じたのが、27歳でイングランドに移籍したとき。

2チームからオファーがあって、自分が行きたいクラブと、周囲の人がすすめるクラブが違ったんです。「まずは出場機会が多くて条件のいいアストン・ヴィラだと思うよ」と。

悩みに悩んでアストン・ヴィラを選んだけれど、行った途端、私を呼んでくれた監督が解任されてしまい、思い描いていたボールをつないで攻めるサッカーとは違う、守備重視のスタイルに。

持ち味の攻撃を発揮できず、やっぱりこっちの道じゃなかったのかなと揺れていたら、みんなが「大丈夫! 今の場所で頑張っていたら行けるから」って。そうしたら、半年後には本当に前よりいい条件で、行きたかったアーセナルからオファーが来たんです。

目の前の結果はよく見えなくても、後から見たら、あの苦しい経験があったからいい方向に行けたんだという選択ばかり。むしろそれしかないんじゃないかな。だからもし過去に戻れるとしても、「戻りたい場所はない」と言えます。

実は、サッカーをしている姿を見られるのはあまり好きじゃないんです。審判に文句を言ったり、相手にガツンと行っちゃったり、戦っている。かわいくはないですよね(笑)。

でも、東日本大震災直後にワールドカップで優勝したときは、人のために頑張ることがすごい力になるんだなとわかって。女子サッカーが盛り上がった後、ブームが落ち着いたタイミングで帰国したときにはやっぱりさみしさがあった。

女子サッカーを閉ざしたくないし、入口はなんでもいいから見る人に少しでも面白いと思ってもらえたらいいなと、SNSやアプリで日常や思いも発信するようになりました。

来年は30歳。年齢や体のことを考えると、選手としてはもうそんなに長くないと思います。8年前からずっと目標にしてきた東京オリンピックはベスト8。

燃え尽きている間もなく、FAカップや欧州チャンピオンズリーグなど新たな挑戦が続き、今は2023年のワールドカップという本当に近くの目標しか見えていないですね。

次世代育成のプロジェクトに携わらせていただく機会も、少しずつ増えてきました。

私も、小学校6年生のときに国立競技場で見た、なでしこジャパン対北朝鮮の試合で「あんなふうにかっこよくなりたい!」と思う経験がなければ、プロチームの選考を受けることもなかったし、今この場にいることもきっとありませんでした。

30代は何をしているかまったく想像もつかないけれど、女子サッカーの未来のために、何かしら自分にもできることがあったらと思っています。

人と比べずに自分の軸で豊かな人生を目指すヒント

『明るく 自分らしく』著/岩渕真奈(KADOKAWA)

岩渕さん初の著書。“日本の顔”としてなでしこジャパンの背番号10を背負う岩渕さんが歩んできた道と、環境の変化もしなやかに受け入れる生き方に、勇気をもらえる一冊。

2022年Oggi9月号「The Turning Point〜私が『決断』したとき」より
撮影/石田祥平 ヘア&メイク/秋山 瞳 構成/佐藤久美子
再構成/Oggi.jp編集部

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岩渕真奈(いわぶち・まな)

1993年、東京都生まれ。小学2年生からサッカーを始め、中学進学時に日テレ・メニーナ入団、14歳でトップチームの日テレ・ベレーザでなでしこリーグ初出場。19歳からドイツ・女子ブンデスリーガで活躍。バイエルン・ミュンヘン所属時は、リーグ2連覇を果たす。INAC神戸レオネッサ、イングランドのアストン・ヴィラLFCを経て、2021-2022シーズンからアーセナル・ウィメンFCへ。日本代表では2011年ワールドカップ優勝、2012年ロンドンオリンピック準優勝、2015年ワールドカップ準優勝、2019年ワールドカップ・ベスト16、東京オリンピック2020ではベスト8に貢献。Instagram:@iwabuchi.m_jp Twitter:@buchi_mana


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